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ゼノアギアス戦記2

30 兄弟

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 ジュンヤとティアンは手を繋いで、歩いて帰ってきた。自分の部屋に帰ると言うティアンをジュンヤは自分の部屋に連行した。
 ジュンヤの部屋は豪華で1人部屋だ。ティアンの狭い部屋より、秘密の話にはちょうどいい。

「でね?どうしてティアンがそんなに怪我の跡があるのか教えて欲しいの」

「…うん……」

 ティアンは全てジュンヤに話した。信用出来ると思ったから。

 気がついたら、この街の教会の前にボロボロで倒れていた事。それ以前の記憶がない事。

「うーーん」

 ジュンヤは唸った。どこまでティアンに教えるべきか。しかし、ティアン……間違いなくミーティアだろう……彼の状態は予想通りだった。

「ティアン、僕は君がなくした過去の事は分からないんだけど……でも大事な事が分かったんだ。ティアン、君は今、ぼくと対になる金の勇者だ」

「え?」

 ぽかんとティアンは口を開けた。

「ティアン、さっきも見たけど。ちょっと上を脱いで……心臓の上あたりを見せて」

 少しどきりとしたが、シャツのボタンを外す。右胸に大きく傷痕がある、何かに刺されたようなあとだった。

「ここ、キズの上に小さな剣の痣があるんだ。僕の左手の甲にあるのと一緒の痣がね」

 ジュンヤの左手には確かに濃くはっきりと剣の形がある。

「傷痕に隠れて見づらいし、とても小さくなっているけど、間違いなくそれは金陽の剣ソレルだ。」

 ジュンヤが、すっと目を細めると、手の甲からポツンと白い小さな光玉が出て、それは迷わずティアンの右胸に飛んでいき、すぅっと吸い込まれた。

「あ、あったかい……」

 ふわりと、優しく何か染み込んで気持ちがいい。

「今のは銀月の剣シルヴァンの神気。ティアンの金陽の剣ソレルは今、神気が全然足りなくて爪楊枝くらいしかない!ティアンを回復させるのに精一杯って感じがする!」

「ど、どういうこと?!僕、勇者なんて全然しらないよ!」

 ジュンヤはなるべく都合の良いように話そうと決めた。明るい学園生活をまだまだ堪能したい!まだ発生していないイベントがある。

「多分、君は……歪みの壺に巻き込まれたんだ。あの大惨事で、僕と一緒に来た金の勇者は……勇者の資格であるその剣を失った。自分のミスでね」

 そう、タカシは自分で金陽の剣ソレルを投げた。それを身から離すことがどんなに危険か知らずに。

「それで、元勇者が投げた剣の所有者が多分あの災害に巻き込まれ、近くにいたであろう君になったんだと思。」

 投げた剣に刺された本人だから偶然ではないのだが、それを言ってしまうとティアン=ミーティアだとすぐにわかってしまう。ただ、単に巻き込まれた一般人ということにしておきたい。

「僕が勇者だなんて……困るよ、どうしたらいいの?」

「どうもしなくていいよ?」

 安心して?とジュンヤは笑った。

「戦いももうほとんどないし、僕もいる。勇者の役目はもうほとんど終わってるんだ。勇者は魔王が侵攻していた時に呼ばれたからね」

 本当にその通りなのだ。ゲーム「ゼノアギアス戦記2」での勇者は名前だけ勇者みたいなものであった。ちょっとイベントで歪みと戦ったり……迷宮へ行ったり……その程度で、レベルはほぼ隠しイベントをスタートさせるフラグでしかなかった。運営め、思い切ったことをしてくれちゃったな!

「そ、そうなの?」

 あからさまにほっとしたティアン。

「うん。今金陽の剣ソレルは傷ついた君を一生懸命守ってる。金陽の剣の力がなかったら君は死んでいたかもしれない」

 ティアンはそっと自分の右胸を触ってみる。ひどい傷跡があるのは知っているが、そこにそんな秘密があるなんて今まで思いもしなかった。

「君が金陽の剣ソレルを持っていて、僕が銀月の剣シルヴァンを持っている。2本は兄弟で対なんだ。だから持ち主である僕たちも兄弟で対になる。ねえティアン。君は僕を特別に感じない?僕は君のことを弟かなって思ってるよ」

「ジュンヤが僕のお兄さん?……僕は兄弟がいないからよくわからないけど……うん、何か、わかる」

 ふわっと暖かくなる。そうか、僕の兄弟はジュンヤなんだと思うとするりと受け入れることができた。

「良かった。ティアン、これからよろしくね。きっと学園で君は……微妙な立ち位置になると思う。けど、僕ができる限り力になるよ!だから僕を頼ってね。僕も君にお願いすることがあると思う……その時はよろしくね!」

「わかった……!ありがとうジュンヤ」

 二人は笑いあい、ぎゅっと握手を交わした。




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