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23 夢にまで見た理想の家族
「それで我が家に御用とは」
「しらばっくれるのかい?」
「なんでございましょう」
我が家はいい感じに幸せに暮らしている。そっちのゴタゴタに巻き込まないで欲しい。
「聞いての通り私はもう子供が望めない。そんな健康に欠陥がある者は国王になるべきではない」
「そういうものでしょうか……」
能力があれば良いのでは??
「それにそっくりじゃないか。必ず人の口に登るぞ、私とディルフィルの関係は……あんなに似ているとは思わなかった。母上が見たら感激で泣き出すんじゃないだろか」
「そ、それは!!」
ラナン殿下はニヤリと笑う。
「アネモネ嬢がどこぞの馬の骨と別れ際に交わした言葉、間違いがあったかな?」
「うっ……た、正しいかったです」
「ふふ、そうだろう? 私も度肝を抜かれたからね、忘れられなかったよ。この話をウィンフィールド公爵にしたらイヤイヤ訪問を許してくれた訳さ」
「フンッ! 今更孫は渡しませんぞっ」
「お父様……」
だからずっと不機嫌だったのね。
「勿論、ディルフィルを公爵やアネモネ嬢から取り上げたりしませんよ……代わりといってはなんですが、不能な元王太子をこの家に迎え入れてくれませんかね?」
「え?」
「私をアネモネ嬢の婿としてこのウィンフィールド家に置いてもらえませんか?」
「で、殿下ぁ?! そんな話、ワシは聞いておりませんぞ!」
「ウィンフィールド公爵。王家も困っているんだよ、私の処遇にね。一応私に非は無い。しかし王太子に据えておくわけにもいかない。しかも子供はもう望めないのに、国政にも関わっているから、他国にも出し辛い」
「そ、それは……」
「となると国内の有力貴族へ、となる。ならばアネモネ嬢の元が良い。あの時、真剣な顔でとんでもない提案をしてきたご令嬢のことを私はずっと忘れられないでいたんだ」
「え……」
ラナン殿下が私をじっと見ている。私も殿下の顔を見返す。本当にディルフィルに似ている……他人と呼ぶにはあまりにも似過ぎている。
「君とデニス侯爵令息との婚約が破棄されたら、私は君に婚約者候補になって欲しいとお願いするつもりだったんだ。トッドリア侯爵の手腕に負けてしまったけれどね」
「ほ、本気ですか……殿下」
「本気だよ、ウィンフィールド公爵。そうでなきゃ部下にアネモネ嬢の動向を探らせたりしてないさ」
「そんな事をしておったのですか!」
「すまんな、気になって」
全然気づかなかったわ……!
「今回は王命を使ってでも私はこの家に婿入りするつもりだ!」
「殿下、そんな宣言をされても……」
「手をこまねくと後悔してしまう。私は学んだことをちゃんと活かせる人間なんだよ」
「しかし、王命はやり過ぎですぞ! 殿下っそれに、ワシはアネモネやディルフィルの気持ちを大切にしたい! ていうか余所者帰って!」
「ははは! 本音が出たぞ、ウィンフィールド公爵。いやこう呼ばせて貰おうかな、義父上」
「ぎゃーー! 嫌だー!」
どうしよう、ラナン殿下はとても愉快な方だった。髪を掻きむしっているけれど、お父様まで楽しそうだ。前の人生で、殿下とお会いしたことは殆どないからどんなひととなりかは分からない。でもナルクと違うことだけはよく分かった。
「そうだ、先にディルフィルと仲良くなっておこう。そうすればアネモネ嬢も頷いてくれるだろう? 少し失礼するよ、アネモネ嬢」
「あっ! 行かせませんぞ、殿下っあっあっーー!誰か、誰かーー!」
病み上がりとは思えない足取りで、お父様を引きずるようにラナン殿下は行ってしまわれた。少しすると庭からディルフィルの楽しそうな声が聞こえてくる。窓からそっと見下ろすと、殿下がディルフィルを肩車して歩き回っているのが見えた。少しお腹の出たお父様ではできないからディルフィルはとても楽しそうだった。
「おかあさまぁー!」
庭から私の姿が見えたのだろう、ディルフィルが肩車されたまま手を振っている。殿下も不快では無いらしく、柔らかい笑みを浮かべてこちらに手を振っていた。
ああ、なんてこと。私が前の人生で夢見た理想の家族の姿があるなんて。両目にジワリと温かい涙が浮かんでしまった。
「しらばっくれるのかい?」
「なんでございましょう」
我が家はいい感じに幸せに暮らしている。そっちのゴタゴタに巻き込まないで欲しい。
「聞いての通り私はもう子供が望めない。そんな健康に欠陥がある者は国王になるべきではない」
「そういうものでしょうか……」
能力があれば良いのでは??
「それにそっくりじゃないか。必ず人の口に登るぞ、私とディルフィルの関係は……あんなに似ているとは思わなかった。母上が見たら感激で泣き出すんじゃないだろか」
「そ、それは!!」
ラナン殿下はニヤリと笑う。
「アネモネ嬢がどこぞの馬の骨と別れ際に交わした言葉、間違いがあったかな?」
「うっ……た、正しいかったです」
「ふふ、そうだろう? 私も度肝を抜かれたからね、忘れられなかったよ。この話をウィンフィールド公爵にしたらイヤイヤ訪問を許してくれた訳さ」
「フンッ! 今更孫は渡しませんぞっ」
「お父様……」
だからずっと不機嫌だったのね。
「勿論、ディルフィルを公爵やアネモネ嬢から取り上げたりしませんよ……代わりといってはなんですが、不能な元王太子をこの家に迎え入れてくれませんかね?」
「え?」
「私をアネモネ嬢の婿としてこのウィンフィールド家に置いてもらえませんか?」
「で、殿下ぁ?! そんな話、ワシは聞いておりませんぞ!」
「ウィンフィールド公爵。王家も困っているんだよ、私の処遇にね。一応私に非は無い。しかし王太子に据えておくわけにもいかない。しかも子供はもう望めないのに、国政にも関わっているから、他国にも出し辛い」
「そ、それは……」
「となると国内の有力貴族へ、となる。ならばアネモネ嬢の元が良い。あの時、真剣な顔でとんでもない提案をしてきたご令嬢のことを私はずっと忘れられないでいたんだ」
「え……」
ラナン殿下が私をじっと見ている。私も殿下の顔を見返す。本当にディルフィルに似ている……他人と呼ぶにはあまりにも似過ぎている。
「君とデニス侯爵令息との婚約が破棄されたら、私は君に婚約者候補になって欲しいとお願いするつもりだったんだ。トッドリア侯爵の手腕に負けてしまったけれどね」
「ほ、本気ですか……殿下」
「本気だよ、ウィンフィールド公爵。そうでなきゃ部下にアネモネ嬢の動向を探らせたりしてないさ」
「そんな事をしておったのですか!」
「すまんな、気になって」
全然気づかなかったわ……!
「今回は王命を使ってでも私はこの家に婿入りするつもりだ!」
「殿下、そんな宣言をされても……」
「手をこまねくと後悔してしまう。私は学んだことをちゃんと活かせる人間なんだよ」
「しかし、王命はやり過ぎですぞ! 殿下っそれに、ワシはアネモネやディルフィルの気持ちを大切にしたい! ていうか余所者帰って!」
「ははは! 本音が出たぞ、ウィンフィールド公爵。いやこう呼ばせて貰おうかな、義父上」
「ぎゃーー! 嫌だー!」
どうしよう、ラナン殿下はとても愉快な方だった。髪を掻きむしっているけれど、お父様まで楽しそうだ。前の人生で、殿下とお会いしたことは殆どないからどんなひととなりかは分からない。でもナルクと違うことだけはよく分かった。
「そうだ、先にディルフィルと仲良くなっておこう。そうすればアネモネ嬢も頷いてくれるだろう? 少し失礼するよ、アネモネ嬢」
「あっ! 行かせませんぞ、殿下っあっあっーー!誰か、誰かーー!」
病み上がりとは思えない足取りで、お父様を引きずるようにラナン殿下は行ってしまわれた。少しすると庭からディルフィルの楽しそうな声が聞こえてくる。窓からそっと見下ろすと、殿下がディルフィルを肩車して歩き回っているのが見えた。少しお腹の出たお父様ではできないからディルフィルはとても楽しそうだった。
「おかあさまぁー!」
庭から私の姿が見えたのだろう、ディルフィルが肩車されたまま手を振っている。殿下も不快では無いらしく、柔らかい笑みを浮かべてこちらに手を振っていた。
ああ、なんてこと。私が前の人生で夢見た理想の家族の姿があるなんて。両目にジワリと温かい涙が浮かんでしまった。
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