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種の章

26 引っ張る腕

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 リフェリスは僕を大事に大事に扱った。僕はそんなに大切なものでもないよ。

「俺にとっては最高に大切な人だもん、いいだろう?」

 キラキラ、さわさわ、陽を透かして輝く森の木の葉のような優しさ。そしてどっしりと大地に深い根を下ろした落ち着き。

「リフェリスは僕のこと、大好きだもんね」

「ふふ、そうなんだ」

 緑の中にふんわりと甘い花の香りがして、僕は目を閉じた。


「わあ」

「やっちゃった!恥ずかしい!」

 次の日、リフェリスの木は一面真っ白は花で埋め尽くされていた。

「よっぽど嬉しかったんだな」

「あああー!」

「大地もかなり緑が広がったなぁ?」

「わーわーわー!」

 こんなに全身で僕のことを好きでいてくれるリフェリス。僕は何か返せるのだろうか。

「フィエル、また難しい事考えてるだろ?」

 僕の隣にアンバーが座った。

「フィエルは頭がいいから、余計な事を考えちまう。だから、俺が教えてやるよ。俺たちはお前が好きだ。そしてお前も俺たちの事好きだ。それで良いんだよ」

 そう言って笑う。

「アンバーは……アンバーだね」

「だろう?何せ一番付き合いがなげーからな!見ろよ!村の用心棒からこんなに強くなったんだぞ!うははは!これもフィエルのおかげだぜ!」

 裏表のないアンバーの言葉は信用できる。すごいなあ、アンバー。

「なあ、フィエル。俺、もっと強くなりたいから、旅に出ようぜ、みんなで!」

 ハルは僕を大事にしまい込んでくれた。リフェリスは旅に出ようと僕の為に言ってくれた。
 アンバーは自分が強くなりたいから、旅に付き合え!と言った。
 守ってくれる殻より、背中を押してくれる手のひらより、有無を言わさず引っ張る腕が今は心地良かった。

「行こうか、壊れた世界を見に」

「うめーもん、あるかなー?」

「産業くらい残ってるでしょ」

「その前に……あいつをボコる……」

「げっ!」

 ハルが冷静にレオニーに向かって殺気を飛ばしている。うん、そうだねぇ僕はレオニーに酷い目に遭わされたっけねぇ?

「ふふ、やり過ぎないでね?」

「……任せろ」

 僕は優しい大好きに包まれているみたいだ。


「えーとね、こいつとこいつとぉ、こいつ!」

 アシャに精霊士になれそうな人を見てもらう。

「出ておいで、山賊さん」

 ムスッとした顔の山賊さんが3人召喚される。

「ちくしょう……閉じ込めやがって……!」

 恨み事をぶつぶつ呟いていたが、まぁサラッと無視する。

「さあ、そいつらをアシャの泉に突き落として!!」

「 OK!そーれ!」

 ギャアア!と言う叫び声と共にドボンドボンと泉に投げ入れられて行った。

「精霊使いに目覚めるまで、水の中で苦しむわ!目覚めたら出れるから頑張って!」

 とんだスパルタだった。

 一人はすぐによじ登ってきたが、一人は半日泉の中でもがいていた。可哀想。

「フィエルさまー!もう悪い事しないので助けて下さいいい!」

 と、涙でぐしゃぐしゃだったよ、ごめんね?



 
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