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13 妹は天使(兄、ノルド視点
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「し、死ぬ……」
まさか、私は自宅のしかも自分の部屋で死を迎えるというのか……?
人間、水さえ有ればしばらく生きていける、と言った割に水すらあいつらは持ってこない!
「貴様はそこで乾いてゆけ」
決め台詞みたいな声が扉の向こうから聞こえたような気がした。
「だ、大丈夫ッスか?レミさん……坊っちゃんは」
「大丈夫よ!心臓が動いてる音がするわ!まだまだいけるわよ!」
「そっかー!まだ大丈夫ッスね!」
お前たち!大丈夫な訳ないだろう!動かなくなったら死んでるんだぞ!動いてるうちに何とかしろ!!
私が口を開く元気もなく床にぐったりと横たわっていると、天使の声が聞こえたんだ。
「レミ?ジミー?お兄様をお見かけしなかった?昨日から後ろ姿さえ見ていないの」
あ、アルカンジェル?!アルカンジェルなのか!?父上は私に謹慎しろと言ったきり様子も見にこない。まあ、父上はそういう方だ。執事もあのメイドの言いなりだ!アルカンジェル、アルカンジェルなら!
「ノルド様ならお部屋で謹慎中ですよ、お嬢様」
まあ、小さく驚くアルカンジェルの声が聞こえる。
「ですから、お姿をお見かけしなくて当然ですわ。旦那様のお怒りが解けるまでこのままです」
「そう、なのですね……。わたくし、何かお兄様に励ましのお言葉を」
「お嬢様、やめておきましょう……?」
「あ……」
アルカンジェルは口ごもった。そうだ、私に声をかける度に、私はアルカンジェルにきつい言葉ばかりをこれでもかと浴びせかけた。
そんな私にアルカンジェルは懲りずに何度も何度も話しかけて来た。
「お前と話す事などない!失せろ!!今後一切私に話しかけるな!!」
そう怒鳴りつけた。そこまで言われて話しかける奴がいるだろうか……いないはずだ。
ああ……私はなんと烏滸がましく、酷い人間だったのだろう……。こうして死んでいくのも致し方ないか。アルカンジェルは近頃は領地経営も学んでいるらしい。きっと妹なら領地をより豊かにできるだろう。
皆の話をよく聞き、領民に慕われる女公爵になれるはずだ……。
「お兄様……?」
アルカンジェル、幸せになれよ……。私は生きるのを諦めた……。
「レミ!ジミー!何かおかしいわ!早く扉を開けて!」
あ、アルカンジェル……?チッ!とメイドの舌打ちが聞こえるが、扉が開き泣きそうな顔のアルカンジェルが飛び込んで来た。
「お、お兄様!?お兄様!しっかりしてくださいませ!レミ!ジミー!お医者様を!」
「はーい、お嬢様」
「お兄様!しっかりしてくださいませ!死なないでお兄様!お兄様ー!」
「惜しかったわ」
私の事でいっぱいいっぱいになっているアルカンジェルには聞こえても見えてもいなかっただろうが、あのメイドの殺意は本物だった。
アルカンジェルが扉を開けてくれなければ公爵令息の干物が出来上がっていただろう。
「妹は天使だ」
「あら?今頃気がついたんですの?ノルド様」
図書館で、我が婚約者のラファエラ嬢と勉強をしていた際に呟いてしまった。
「……もしかして御令嬢の間で妹は有名なのかい?」
知らなかった、何故だ?
「アルカンジェル様はは可愛いですからね。幼い頃から、王妃になるべく学んでいますし、弱音もはかない。私も彼女が妹になるから、この婚約をお受けしたようなものですわ」
「は、はは。そうだったのか」
「ええ、そうですわよ、ノルド様。仲良くしましょうね」
我が婚約者様の笑顔が黒い物に感じる。それはそうだろう、私は今までアルカンジェルに酷い態度を取ってきた。こうして並んで勉強をしていても腹の中は怒りで煮え繰り返っているだろうな。
「私は君の良い夫になる事を誓うよ、ラファ」
「アルカンジェル様と双子のメイドの名に誓って?」
うっ!私は恐怖が競り上がってくる。アルカンジェルの目がない所で、あのメイド達はすぐに私をいびって来る。家も、更に学園でまで見張られていて息がつける場所などない!
「ふふ……!」
「ひぃ!」
トイレでため息をついたら、どこからともなく笑い声がきこてえ来て、天井につくほど飛び上がったっけな……。
「ああ、二度と双子のメイドには逆らわない」
「左様でございますね。ノルド様がまともな頭の持ち主で、わたくし余計な手間をかけなくてすんで嬉しく思いますわ」
これは間違いなく、私有責で婚約破棄の話が進んでいたんだろうな。はは、と乾いた笑いしか出なかった。
婚約破棄などされたら、我が家の恥さらしどころか私は社交界で死んだ者として扱われる所だった。
「本当に我が妹は天使だよ」
「本当ですわね」
私は何度アルカンジェルに命を救われるんだろうな。
まさか、私は自宅のしかも自分の部屋で死を迎えるというのか……?
人間、水さえ有ればしばらく生きていける、と言った割に水すらあいつらは持ってこない!
「貴様はそこで乾いてゆけ」
決め台詞みたいな声が扉の向こうから聞こえたような気がした。
「だ、大丈夫ッスか?レミさん……坊っちゃんは」
「大丈夫よ!心臓が動いてる音がするわ!まだまだいけるわよ!」
「そっかー!まだ大丈夫ッスね!」
お前たち!大丈夫な訳ないだろう!動かなくなったら死んでるんだぞ!動いてるうちに何とかしろ!!
私が口を開く元気もなく床にぐったりと横たわっていると、天使の声が聞こえたんだ。
「レミ?ジミー?お兄様をお見かけしなかった?昨日から後ろ姿さえ見ていないの」
あ、アルカンジェル?!アルカンジェルなのか!?父上は私に謹慎しろと言ったきり様子も見にこない。まあ、父上はそういう方だ。執事もあのメイドの言いなりだ!アルカンジェル、アルカンジェルなら!
「ノルド様ならお部屋で謹慎中ですよ、お嬢様」
まあ、小さく驚くアルカンジェルの声が聞こえる。
「ですから、お姿をお見かけしなくて当然ですわ。旦那様のお怒りが解けるまでこのままです」
「そう、なのですね……。わたくし、何かお兄様に励ましのお言葉を」
「お嬢様、やめておきましょう……?」
「あ……」
アルカンジェルは口ごもった。そうだ、私に声をかける度に、私はアルカンジェルにきつい言葉ばかりをこれでもかと浴びせかけた。
そんな私にアルカンジェルは懲りずに何度も何度も話しかけて来た。
「お前と話す事などない!失せろ!!今後一切私に話しかけるな!!」
そう怒鳴りつけた。そこまで言われて話しかける奴がいるだろうか……いないはずだ。
ああ……私はなんと烏滸がましく、酷い人間だったのだろう……。こうして死んでいくのも致し方ないか。アルカンジェルは近頃は領地経営も学んでいるらしい。きっと妹なら領地をより豊かにできるだろう。
皆の話をよく聞き、領民に慕われる女公爵になれるはずだ……。
「お兄様……?」
アルカンジェル、幸せになれよ……。私は生きるのを諦めた……。
「レミ!ジミー!何かおかしいわ!早く扉を開けて!」
あ、アルカンジェル……?チッ!とメイドの舌打ちが聞こえるが、扉が開き泣きそうな顔のアルカンジェルが飛び込んで来た。
「お、お兄様!?お兄様!しっかりしてくださいませ!レミ!ジミー!お医者様を!」
「はーい、お嬢様」
「お兄様!しっかりしてくださいませ!死なないでお兄様!お兄様ー!」
「惜しかったわ」
私の事でいっぱいいっぱいになっているアルカンジェルには聞こえても見えてもいなかっただろうが、あのメイドの殺意は本物だった。
アルカンジェルが扉を開けてくれなければ公爵令息の干物が出来上がっていただろう。
「妹は天使だ」
「あら?今頃気がついたんですの?ノルド様」
図書館で、我が婚約者のラファエラ嬢と勉強をしていた際に呟いてしまった。
「……もしかして御令嬢の間で妹は有名なのかい?」
知らなかった、何故だ?
「アルカンジェル様はは可愛いですからね。幼い頃から、王妃になるべく学んでいますし、弱音もはかない。私も彼女が妹になるから、この婚約をお受けしたようなものですわ」
「は、はは。そうだったのか」
「ええ、そうですわよ、ノルド様。仲良くしましょうね」
我が婚約者様の笑顔が黒い物に感じる。それはそうだろう、私は今までアルカンジェルに酷い態度を取ってきた。こうして並んで勉強をしていても腹の中は怒りで煮え繰り返っているだろうな。
「私は君の良い夫になる事を誓うよ、ラファ」
「アルカンジェル様と双子のメイドの名に誓って?」
うっ!私は恐怖が競り上がってくる。アルカンジェルの目がない所で、あのメイド達はすぐに私をいびって来る。家も、更に学園でまで見張られていて息がつける場所などない!
「ふふ……!」
「ひぃ!」
トイレでため息をついたら、どこからともなく笑い声がきこてえ来て、天井につくほど飛び上がったっけな……。
「ああ、二度と双子のメイドには逆らわない」
「左様でございますね。ノルド様がまともな頭の持ち主で、わたくし余計な手間をかけなくてすんで嬉しく思いますわ」
これは間違いなく、私有責で婚約破棄の話が進んでいたんだろうな。はは、と乾いた笑いしか出なかった。
婚約破棄などされたら、我が家の恥さらしどころか私は社交界で死んだ者として扱われる所だった。
「本当に我が妹は天使だよ」
「本当ですわね」
私は何度アルカンジェルに命を救われるんだろうな。
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