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29 ここんちの子になる!

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「いやでも……」
「うん」
「怪しいですよね」
「怪しいですわよねえ?」

 コーディ達は牛の獣人だと言い張るタトとフェリムと名乗った牛獣人(?)の男(?)の子(?)と一緒に村へたどり着いた。

「タトのあの様子じゃ完全にあの子(?)のこと信じてる」

「王都から人を派遣してもらうのはどうでしょう?」

「それしかないな……」

 タトにまとわりつくフェリムの行動の一つ一つに嘘くささがのぞいているような気がする。フェリムから監視の目を離してはいけない気がするのだ。勇者の勘がそう訴えている。

「フェリム、腹減ったんだろう?ちょっと待ってな、庭から何か草を取ってくるからな」

「うわぁい、タトありがとー」

 草なんて食うかよ、私は肉食、肉しか食わん、ふざけるな!と言う気配がビンビンするのだ。

「大丈夫かなぁ……?」

 コーディはじっとフェリムから目を離さない。何かあればすぐにトモロコスが火を噴く。

「タトしゃん……怖いぃ……!」

「コーディ……可愛ければ何でも良いのか?見果てた奴だ!ドントタッチ!ショタコン禁止!」

「ちげーーーーよ!」

 性癖を誤解るがそれはコーディの人望がないからなのかもしれない。

「勇者がそれでは困るのだが??」
「やだ、コーディ変態」
「最低、近寄らないで」

 パーティメンバーの女性陣にもこの扱いである。

「ちがーーーう!」

 人望とはとても大切なものだよ。



「……これは放置しても大丈夫だな」

「ああ、王都に行ってこよう」

《美味い!何だこりゃーーー?!》

「ははは、フェリムは腹が減ってたんだなぁ。まだいっぱいあるからゆっくり食べなよ?」

「もっもっもっ!」

 シャキシャキして、えぐみ一つない採れたてのレタッシュを口いっぱいに詰め込む。絶妙な歯応えが次々と襲ってきて、いつまでも食べていたい!!

「う、美味いー!」

「キャベッチもあるからね?」

「食べるーーー!」

《ああ!この野菜をずっと食べてていいなら、私はもう牛獣人で良い!!》

 魔王フェリムはすっかり職務放棄してしまい、タトんちの子になりつつあった。

「んまい!んまいー!」

 
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