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49 口の悪い男の聖女姫
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「お待ち下さい、帝国の騎士よ。リーヤ様からの手紙を持っております」
リグロイ隊長の前に立った獣人の男は死を覚悟した顔で静かに言った。
「この手紙をリーヤ様のお母上、エルフローラ様に必ず渡すように言われております。エルフローラ様が読んで下さるのを確認した後であれば、この身如何様にも。ただ、エルフローラ様に手紙をお渡し下さる事をお許し下さい」
「……取り継ごう。しかし、軍は進ませて貰う」
リグロイ隊長は歴戦の戦士だ。人を見る目は正しいと、周りも認める武人。それが、この獣人の言葉を信じた。それは大きな事だ。
「リーヤ様をお運びしておるのは、鷹の獣人です。昼は高速で飛び、夜は宿に泊まります。更に獣化したクォンツの王子以下3名で昼夜を問わず走り抜けております」
「良いのか?我々が追いつき、国に着く前にリーヤ様を連れ帰るかもしれんぞ」
獣人の、虎の獣人の男は深々と頭を下げて続ける。
「絶対に追いつけません。森や峰を越える道。馬ではいくら卓越した者でも10日はかかる工程。我らはそこを3日で踏破し、国へ着く予定です。こちらを」
男は地図を差し出す。そこには詳細な辺りの情報が詳しく乗っており、ルートは細々と書き加えられている。鷹の獣人が飛ぶルートは真っ直ぐに計算され尽くしていた。
これは追いつくのは無理だと、そして男の言葉に嘘はないと。それにちょうど目に入る位置にある、ギリギリやっと読めるメッセージと。
「……全軍、戻るぞ。必要なのはリーヤ様が帰りに乗られる乗り心地の良い馬車のようだ。貴殿もくるが良い。フローラ様への面会の申し込みをしよう」
「ありがとうございます。使命が果たせそうです」
ふ、とリグロイは小さく笑って
「リーヤ様に感謝しろ。お前の頭に巻いてある包帯の隙間に挟まっているそれはリーヤ様のドレスの裾だろう?」
「え?」
虎の男は自分の頭に手を伸ばす。確かに怪我をしたまま、この役を志願した。あの中で一番走るのが遅いのが自分だったから。
「頼んだよ、絶対母さんに渡してね」
そうリーヤに強く言われていた。思い出しながら触ると包帯ではない手触りの良い布が挟まっている。
引き抜くと、物凄く汚い字で「話、聞いてあげて!」と書いてある。
「俺ね、あんまり字、上手くないの……ってかやっと書けるだけなんだ!ごめんね」
笑いながら四苦八苦して手紙を書いていた。きっとその時に一緒に書いて挟んでくれたんだろう。
「リーヤ様は……優しすぎる……」
「……そうだな」
リーヤが自らの意思でクォンツへ出かけて行ったと言う話は速やかに捜索隊に広がり、全員戻ってくる。
「お手紙読ませていただきました。リーヤが無事に戻って来るまで、待ちたいと思います」
「ありがとうございます」
虎の獣人はフローラから直々に言葉を貰い、しっかりと役目を果たした。
「悪いがリーヤ様が戻ってくるまで、身柄は拘束させて貰います」
「好きにして欲しい」
大人しく従う。そのまま首を飛ばされる覚悟だったが、もしかしたら手紙には助命の言葉もあったかもしれない。
「リーヤ様には感謝しかない……」
口の悪い男の聖女姫に深く深く頭を垂れるのであった。
リグロイ隊長の前に立った獣人の男は死を覚悟した顔で静かに言った。
「この手紙をリーヤ様のお母上、エルフローラ様に必ず渡すように言われております。エルフローラ様が読んで下さるのを確認した後であれば、この身如何様にも。ただ、エルフローラ様に手紙をお渡し下さる事をお許し下さい」
「……取り継ごう。しかし、軍は進ませて貰う」
リグロイ隊長は歴戦の戦士だ。人を見る目は正しいと、周りも認める武人。それが、この獣人の言葉を信じた。それは大きな事だ。
「リーヤ様をお運びしておるのは、鷹の獣人です。昼は高速で飛び、夜は宿に泊まります。更に獣化したクォンツの王子以下3名で昼夜を問わず走り抜けております」
「良いのか?我々が追いつき、国に着く前にリーヤ様を連れ帰るかもしれんぞ」
獣人の、虎の獣人の男は深々と頭を下げて続ける。
「絶対に追いつけません。森や峰を越える道。馬ではいくら卓越した者でも10日はかかる工程。我らはそこを3日で踏破し、国へ着く予定です。こちらを」
男は地図を差し出す。そこには詳細な辺りの情報が詳しく乗っており、ルートは細々と書き加えられている。鷹の獣人が飛ぶルートは真っ直ぐに計算され尽くしていた。
これは追いつくのは無理だと、そして男の言葉に嘘はないと。それにちょうど目に入る位置にある、ギリギリやっと読めるメッセージと。
「……全軍、戻るぞ。必要なのはリーヤ様が帰りに乗られる乗り心地の良い馬車のようだ。貴殿もくるが良い。フローラ様への面会の申し込みをしよう」
「ありがとうございます。使命が果たせそうです」
ふ、とリグロイは小さく笑って
「リーヤ様に感謝しろ。お前の頭に巻いてある包帯の隙間に挟まっているそれはリーヤ様のドレスの裾だろう?」
「え?」
虎の男は自分の頭に手を伸ばす。確かに怪我をしたまま、この役を志願した。あの中で一番走るのが遅いのが自分だったから。
「頼んだよ、絶対母さんに渡してね」
そうリーヤに強く言われていた。思い出しながら触ると包帯ではない手触りの良い布が挟まっている。
引き抜くと、物凄く汚い字で「話、聞いてあげて!」と書いてある。
「俺ね、あんまり字、上手くないの……ってかやっと書けるだけなんだ!ごめんね」
笑いながら四苦八苦して手紙を書いていた。きっとその時に一緒に書いて挟んでくれたんだろう。
「リーヤ様は……優しすぎる……」
「……そうだな」
リーヤが自らの意思でクォンツへ出かけて行ったと言う話は速やかに捜索隊に広がり、全員戻ってくる。
「お手紙読ませていただきました。リーヤが無事に戻って来るまで、待ちたいと思います」
「ありがとうございます」
虎の獣人はフローラから直々に言葉を貰い、しっかりと役目を果たした。
「悪いがリーヤ様が戻ってくるまで、身柄は拘束させて貰います」
「好きにして欲しい」
大人しく従う。そのまま首を飛ばされる覚悟だったが、もしかしたら手紙には助命の言葉もあったかもしれない。
「リーヤ様には感謝しかない……」
口の悪い男の聖女姫に深く深く頭を垂れるのであった。
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