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57 阿呆で間抜けな可愛い奴
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「お手合わせ願います」
脳筋達とやり合い続けてレントが肩で息をし始めた頃だった。
「駄目だ!」
「受けよう」
俺は客席から立ち上がる。
「リーヤ座って」
「母さん!駄目だって、あんなの絶対無理だ!やめさせないと!」
「良いの、やらなきゃいけない時なのよ」
「駄目だ!」
俺は修練場を見る。レントの前に立っているのはフランだ。ライードでもレフィリーでもなく、フランが練習剣を構えて立っていた。
「駄目だ!フラン!フランの敵う相手じゃない!」
父さんを倒し、脳筋達と渡り合うレントの実力は俺が見ても凄いと思う。そんなレントに、王子のフランが相手になる訳がない!俺が治すまで、手も足も無かったフランが剣をまともに扱えるわけがないんだ!
「お前がフラン、ね。良いぜ、かかって来な」
上から下まで見てから、レントは挑発的に言い
「行きます……っ!」
刃の潰れた剣でフランは思いっきりレントにかかって行った。
ガツン、ガツンと何度か打ち合わされ、フランの持っていた剣が弾き飛ばされる。
「くっ!まだまだ!」
急いで剣を拾いまた構える。
「無理だ……絶対無理だ」
素人の俺が見てもフランではレントに一発も当てられないだろう。逆に容赦ない一撃がフランを襲い、何度もよろめいていた。
「だ、誰かやめさせてよ!母さんも見てないで!」
脳筋達もこの一方的な戦いを見ているだけだ。フランは殴られ、あちこち痛むのに、レントにかかって行く事をやめない。何で、なんでだよ!
「いいえ、よく見ていなさい。リーヤ」
「母さん……?」
母さんの目は一方的にフランがやられて行く様子をじっと見て離さなかった。
「ふん、駄目だ!駄目だ!」
「くっ!!」
何度目かのフランの剣が弾き飛ばされた後、レントはフランを怒鳴りつけた。
「お前は何がしてぇんだ!反省ならどっかでやってろ!俺だって忙しいんだ!お前の未練に付き合うのはこれで終わりだ!」
「くっ……!だが、私、は……っ!」
「黙れ!不甲斐ない、情けない自分と折り合い付けるのも、リーヤの事を忘れようとすんのも、俺の知ったこっちゃねぇけど、お前の最初から諦めた態度!それが気にくわねぇ!!なんなんだお前は!リーヤが欲しいなら俺を殺す気で来い!そこいらの野郎の方がよっぽど殺気があった!」
「う……うう……っ」
呻き声をあげるフランに、レントの声は高くなる。
「そんなに俺に渡すのが嫌なら、なんで迎えに来なかった!リーヤがお人よしで、アホで間抜けな可愛い奴だって知ってただろう!?それなのになんで手放した!?一日でも一時間でも何故傍に居てやらない!?あんなのすぐに持っていかれるって知っていただろう!」
レント、なんだかちょっと酷い言いようじゃないか……誰がアホで間抜けだ……!ちくしょう。でもちょっと自覚ある……。
「リーヤはな、かなり待っていたぞ!……多分、お前が迎えに来るのを。でもお前は来なかった。待っても待っても来なかった。なのになんで今更そんな顔をする!ふざけんのもいい加減にしろ!」
レントの言葉は俺にぐさりと刺さった。
脳筋達とやり合い続けてレントが肩で息をし始めた頃だった。
「駄目だ!」
「受けよう」
俺は客席から立ち上がる。
「リーヤ座って」
「母さん!駄目だって、あんなの絶対無理だ!やめさせないと!」
「良いの、やらなきゃいけない時なのよ」
「駄目だ!」
俺は修練場を見る。レントの前に立っているのはフランだ。ライードでもレフィリーでもなく、フランが練習剣を構えて立っていた。
「駄目だ!フラン!フランの敵う相手じゃない!」
父さんを倒し、脳筋達と渡り合うレントの実力は俺が見ても凄いと思う。そんなレントに、王子のフランが相手になる訳がない!俺が治すまで、手も足も無かったフランが剣をまともに扱えるわけがないんだ!
「お前がフラン、ね。良いぜ、かかって来な」
上から下まで見てから、レントは挑発的に言い
「行きます……っ!」
刃の潰れた剣でフランは思いっきりレントにかかって行った。
ガツン、ガツンと何度か打ち合わされ、フランの持っていた剣が弾き飛ばされる。
「くっ!まだまだ!」
急いで剣を拾いまた構える。
「無理だ……絶対無理だ」
素人の俺が見てもフランではレントに一発も当てられないだろう。逆に容赦ない一撃がフランを襲い、何度もよろめいていた。
「だ、誰かやめさせてよ!母さんも見てないで!」
脳筋達もこの一方的な戦いを見ているだけだ。フランは殴られ、あちこち痛むのに、レントにかかって行く事をやめない。何で、なんでだよ!
「いいえ、よく見ていなさい。リーヤ」
「母さん……?」
母さんの目は一方的にフランがやられて行く様子をじっと見て離さなかった。
「ふん、駄目だ!駄目だ!」
「くっ!!」
何度目かのフランの剣が弾き飛ばされた後、レントはフランを怒鳴りつけた。
「お前は何がしてぇんだ!反省ならどっかでやってろ!俺だって忙しいんだ!お前の未練に付き合うのはこれで終わりだ!」
「くっ……!だが、私、は……っ!」
「黙れ!不甲斐ない、情けない自分と折り合い付けるのも、リーヤの事を忘れようとすんのも、俺の知ったこっちゃねぇけど、お前の最初から諦めた態度!それが気にくわねぇ!!なんなんだお前は!リーヤが欲しいなら俺を殺す気で来い!そこいらの野郎の方がよっぽど殺気があった!」
「う……うう……っ」
呻き声をあげるフランに、レントの声は高くなる。
「そんなに俺に渡すのが嫌なら、なんで迎えに来なかった!リーヤがお人よしで、アホで間抜けな可愛い奴だって知ってただろう!?それなのになんで手放した!?一日でも一時間でも何故傍に居てやらない!?あんなのすぐに持っていかれるって知っていただろう!」
レント、なんだかちょっと酷い言いようじゃないか……誰がアホで間抜けだ……!ちくしょう。でもちょっと自覚ある……。
「リーヤはな、かなり待っていたぞ!……多分、お前が迎えに来るのを。でもお前は来なかった。待っても待っても来なかった。なのになんで今更そんな顔をする!ふざけんのもいい加減にしろ!」
レントの言葉は俺にぐさりと刺さった。
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