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IF編 闇へ
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「ロウ、さあ行こう」
「へ?」
僕が6歳位になった時だった。真っ黒な髪で真っ黒な目をした大きな獣人がそう言って手を伸ばしてきた。
「行こう、私と一緒に」
「え、か、母さんに」
「あんなクソ女どうでも良いだろう?」
物凄く嫌そうな顔をして、その人は牙を向いた。
「……でも……」
僕が困っていると、家から母さんの声が聞こえた。
「ロウ!早く掃除して飯を作んな!このグズ!使えないヤツ!」
「か、母さん!なんか人が……!」
「ああん?」
一応扉をガタガタ言わせながら母さんは外に出てきた。昔はとても美人だったと言う母さんは、今は見る影もない、とみんな言う。
僕も心配だ。顔色は悪いしお酒ばっか飲んでるし……。
「どこの貴族様だい?お恵みでもくれるのかね?」
「母さん!」
少し身なりが良い人を見ると母さんは必ずそう言う。母さんだけじゃない、この地区に身を寄せ合って暮らしている人は全員そう言う。
でもみんな貧しくて、病気の人もいっぱいいるから、仕方がないのかもしれないけど。
「まだ生きていたか。いや、死ねないのだったな、永遠に」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
「私の顔も忘れたか、重畳」
物凄く小さな声で何か呟いたけど、僕と母さんには聞こえなかった。
黒い獣人は僕の右手を掴んだ。
「この子供、私が買おう」
懐からじゃらり、と大量の金貨をつかみ出し、バラバラと地面に撒いた。
「足りるか?」
「ひ、ひ!ひひ!十分!十分よ!そんな私の言うことを聞かない子要らないわ!」
「ひ、酷い!母さん!僕は母さんのお願いを聞いたじゃないか!」
這いつくばって、金貨を拾い集める母さんに縋りつこうとしたけど、僕は獣人の人に掴まれていて動けなかった。
「私はもっと働けって言ったじゃない!それなのにあんたは本当につかえない子!」
「母さん!ぼくにだって事情はあるよ!なんでもできるわけがないじゃないか!」
酷い!酷いよ、母さん!全部母さんの所為じゃないか!
「うるさい!せっかくこの世に送り出してやったのに!なんて言い草だい!」
「僕は、僕はこんな所に来たいなんて一度も言ってない!それなのに、あなたが勝手に!」
なんて子だい!母親に向かってその口の聞き様は!母さんは必死で金貨を集める。騒ぎを聞きつけて、集落の女達が出てきて、地面に散らばる金貨に目を光らせた。
「でも来たからにはちゃんと仕事をするんだよ!それが出来ないからあんたは駄目なんだ!このグズ!ノロマ!」
「何も教えないで放り出して!やる事さえ伝えずに出来ないから勝手に怒って、僕の大切なものを壊して行く!もう良い!あなたなんかもう、一生そのままでいろ!!」
バキン!とどこかで最後の何かが壊れた音がした。でも僕には何の事が分からなかったし、隣に立っていた男の人は
「よく言った」
そう、笑った。
「ではこの子は貰って行く。今後一切これに関わることは許さん」
「ああ!構わないよ!だからもっと金をくれ!」
母さんの顔は僕が見ても、気持ち悪いほど、醜く歪んでいた。
「ああ、やろうとも……ほら、拾うが良い。命の輝きを」
バラバラと男の人は金貨を母さんの頭の上に降らせた。
「ひ、ひひ!ありがとうございます!ありがとうございます!」
必死で金貨を拾い集める母さん。周りもおばさん達で溢れている。
「行くぞ、シロウ」
僕は男の人に手を引かれた。
「え?僕の名前はロウだけど……」
一瞬、男の人は止まったけど、笑った。満足そうな笑顔だった。
「そうだな、お前はロウ、だ」
「……はい」
生まれてこの方、この辺りから出た事がなかった僕だったけれど、もう母さんの側にはいたくない。素直に男の人に手を引かれた、住み慣れたゴミ溜めを後にした。
「へ?」
僕が6歳位になった時だった。真っ黒な髪で真っ黒な目をした大きな獣人がそう言って手を伸ばしてきた。
「行こう、私と一緒に」
「え、か、母さんに」
「あんなクソ女どうでも良いだろう?」
物凄く嫌そうな顔をして、その人は牙を向いた。
「……でも……」
僕が困っていると、家から母さんの声が聞こえた。
「ロウ!早く掃除して飯を作んな!このグズ!使えないヤツ!」
「か、母さん!なんか人が……!」
「ああん?」
一応扉をガタガタ言わせながら母さんは外に出てきた。昔はとても美人だったと言う母さんは、今は見る影もない、とみんな言う。
僕も心配だ。顔色は悪いしお酒ばっか飲んでるし……。
「どこの貴族様だい?お恵みでもくれるのかね?」
「母さん!」
少し身なりが良い人を見ると母さんは必ずそう言う。母さんだけじゃない、この地区に身を寄せ合って暮らしている人は全員そう言う。
でもみんな貧しくて、病気の人もいっぱいいるから、仕方がないのかもしれないけど。
「まだ生きていたか。いや、死ねないのだったな、永遠に」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
「私の顔も忘れたか、重畳」
物凄く小さな声で何か呟いたけど、僕と母さんには聞こえなかった。
黒い獣人は僕の右手を掴んだ。
「この子供、私が買おう」
懐からじゃらり、と大量の金貨をつかみ出し、バラバラと地面に撒いた。
「足りるか?」
「ひ、ひ!ひひ!十分!十分よ!そんな私の言うことを聞かない子要らないわ!」
「ひ、酷い!母さん!僕は母さんのお願いを聞いたじゃないか!」
這いつくばって、金貨を拾い集める母さんに縋りつこうとしたけど、僕は獣人の人に掴まれていて動けなかった。
「私はもっと働けって言ったじゃない!それなのにあんたは本当につかえない子!」
「母さん!ぼくにだって事情はあるよ!なんでもできるわけがないじゃないか!」
酷い!酷いよ、母さん!全部母さんの所為じゃないか!
「うるさい!せっかくこの世に送り出してやったのに!なんて言い草だい!」
「僕は、僕はこんな所に来たいなんて一度も言ってない!それなのに、あなたが勝手に!」
なんて子だい!母親に向かってその口の聞き様は!母さんは必死で金貨を集める。騒ぎを聞きつけて、集落の女達が出てきて、地面に散らばる金貨に目を光らせた。
「でも来たからにはちゃんと仕事をするんだよ!それが出来ないからあんたは駄目なんだ!このグズ!ノロマ!」
「何も教えないで放り出して!やる事さえ伝えずに出来ないから勝手に怒って、僕の大切なものを壊して行く!もう良い!あなたなんかもう、一生そのままでいろ!!」
バキン!とどこかで最後の何かが壊れた音がした。でも僕には何の事が分からなかったし、隣に立っていた男の人は
「よく言った」
そう、笑った。
「ではこの子は貰って行く。今後一切これに関わることは許さん」
「ああ!構わないよ!だからもっと金をくれ!」
母さんの顔は僕が見ても、気持ち悪いほど、醜く歪んでいた。
「ああ、やろうとも……ほら、拾うが良い。命の輝きを」
バラバラと男の人は金貨を母さんの頭の上に降らせた。
「ひ、ひひ!ありがとうございます!ありがとうございます!」
必死で金貨を拾い集める母さん。周りもおばさん達で溢れている。
「行くぞ、シロウ」
僕は男の人に手を引かれた。
「え?僕の名前はロウだけど……」
一瞬、男の人は止まったけど、笑った。満足そうな笑顔だった。
「そうだな、お前はロウ、だ」
「……はい」
生まれてこの方、この辺りから出た事がなかった僕だったけれど、もう母さんの側にはいたくない。素直に男の人に手を引かれた、住み慣れたゴミ溜めを後にした。
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