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51 やあ!うわっ!

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 結局前とあまり変わらない生活をしている。勉強をして、奉仕活動をして。人脈作りの時間を後遺症に悩む奴らの相談や治療に充てている。特に何もしてないんだけれど、話を聞いてやるだけで治った気持ちになる奴らも一定数いて、プラシーボ効果だっけ?まあなんだか知らんが本人がいいならいいだろう。

「あの……シャトルリア様、ご相談したい事が」
「宰相さん?どうしたの?」

 俺は医療チームが滞在する棟に一室貰っていて、そこでいろいろ相談を受けている。まあ大きめの病院にある先生と個別に相談する部屋って感じ。そこに宰相さんが久しぶりに顔を出した。俺と殿下の再婚約が決まってしまい国元へ報告しに行かなきゃ……と、思ったけれど俺本人がこの帝国から出て行くのを全力で殿下が嫌がった。

「シャトと1日離れると死ぬ。それでも行くというなら私を殺してから行って欲しい」
「大袈裟な……」
「その代わりシャトを置いていけないからお前も殺して私も死ぬ」
「病んでる!」

 なんかめんどくさくなったので俺は残って宰相さんに戻って貰った。はっきりいえば俺の国に俺はいなくても何とかなるが宰相さんがいないと回らない。もちろん宰相さんは両側をヘンドリクセン兄弟に挟まれて細長くなりながら帰って行った……その宰相さんがまた現れたんだ。どうしたんだろう?

「あのですね、まさかとかもしかして、とずっと……ええとかなり前から思っていたんですが、どうしてもそうなのではないかと……でも信じたくはないのですが、どうもそうとしか思えず」
「歯切れが悪いなーなんなの?」
「ちょっと体の中を見ていただけませんか?」

 調子が悪いのかな?まあ言われたから宰相さんに寝て貰って久しぶりににょろんと入ってみた。なんか感じが変わってるなあ?

「なんかぷにぷにしてる……太った?」
「……ええ、それなりに」
「ふうん?」

 ヘンドリクセン兄弟に挟まれてハードな(夜の)生活を送っていると思ったんだけど、そっかそうでもないのかな?頭のほうに移動しようかと思うと、声がかかる。

「すいません、腹の……あの、魔力だまりがあった方を見ていただきたいのです」
「ほへ?」

 まあそういうならと下の方に下がっていく。何だろう……ものすごい違和感を感じる……。ここ、宰相さんのお腹の中だよね?なにか、何か違う……。

「あれ?萎びてた魔力だまりの袋が膨らんでる。また魔力が溜まってるの?」

 そっと近寄って行くとやっぱり何か違う……。

(やあ!)
(うわあああああああ!?)

 俺、俺ぇ……!知らない人に声かけられたぁああああああ!誰これぇええええええ!って……え?待って、待てよ。え?

「宰相さんや……なんか俺、知らない人に声をかけられたんだけど……」
「……」

(えへっ)
(あはっ)

 ダッシュで現実から逃避したんだけど、そろりそろりと帰ってくる。駄目だ、ここには逃げ出せない現実がある。そう、宰相さんのお腹の中に誰かいる、いるんだ、誰かが。つまり、この現象は多分こういうんだよね?

「ご懐妊おめでとうございます……」
「うわあああああ!やっぱりいいいい!ずっと気分が悪くて吐き気が酷かったんですーー!」

 とりあえず中の人にはまた来るね、と挨拶をして戻ってきた。まずは宰相さんに詳しい話を聞こうと思う。



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