【本編完結】神に捨てられた糸くずの俺は愛される~不幸な物語なんて変えてやるから安心して

鏑木 うりこ

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54 実験とか言うな!

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「未来ある若人のための先陣としてよろしくお願いしますね」
「しくしく……分かりましたぁ」

 泣いているのか泣き真似なのか分からないけれど、一番年上の宰相さんが「魔力だまりの袋の中に赤ちゃん出来ちゃったよ。びっくりだねー」現象の第一人者として頑張ってもらうことになった。
 時期的にも宰相さんが一番だろうしね。

「という訳で特別産科が発足です」
「わかりました! 」

 これ、ホルランド殿下が絶対必要だ、っていって作られた特別チームなんだよね。

「だって、絶対必要でしょう? 」
「うっ……! 」

 こっちのほうを見ていい笑顔をするな!ついでにちょっと怖い呟きもしてた。

「もう少し被検者が欲しい所だな……うん」

 俺が自国で魔力だまりを治した年頃の男性は結構な数いる。逃げてー!超逃げてー!!頼むからせめて合意の上でやってくれよな……まじでまじで。
 今の所、宰相さんもセイルも何事もなく順調だし、マチェット君も普通に暮らしているけれど、頻繁に様子を見せて貰っている。やっぱり一番成長しているのが宰相さんちの子で、物凄い元気な男の子だ。

(凄くない? 俺、男のお尻から産まれちゃうんだって!すごくなーい!?)
(あ、うん……)
(その場合この人はパパなの? ママなの?)
(どっちでもいいんじゃないかな……ママ寄りのママじゃない?)
(ママじゃん!)

 お腹の中にお邪魔すると喋ることもできる。セイルの子は寝てばっかりの大物感が凄くて、マチェット君の子は引っ込み思案の怖がりで俺が行くと寝たふりしてる。元気ならそれで良いんだけどね……? でもどの子も順調できっと元気に産まれてくるだろうなあ……しかし、本当にどうなってるんだろう? やっぱりあのクソ神のせいなんだろうか、だとしたらあいつは人間をなんだと思ってるんだろう……ちょっと教会とかに文句いったほうが良くないか??
 今度慈善活動教会とか神殿に行ったらお祈りしますーとか言いながら怒りでもぶちまけてみようかな?

「シャト、孤児院訪問に行こうか」
「わ、以心伝心?? 」

 ホルランド殿下の慰問にくっ付いて行って、教会の神像に祈るふりをしながら怒りをぶつけてみた。でもその時、神様の像をまじまじと見たんだけど、俺をつまんで捨てたヤツとなんか似ても似つかない優しい雰囲気の顔だったんだよなあ?
 いやまあ神様の像が怖い顔だったらやばいけど、どうも別人……別神に見えて仕方がなかった。あんな優しそうな神様が俺をポイ捨てしたり、セイルを過酷な運命に投げ込んだりするのかなあ??
 ていうか、この神様を俺はどっかで見たことがあるような、ないような??

「まあ神様の考えてることなんて分かる訳ないか」
「そうだね、私達は私達なりに生きて行くしかないんだ」

 いつの間にか真横に殿下がいて、俺を抱き寄せた。腰に回す手がまた近すぎるけれど、この至近距離が病後のこの人の距離になりつつある。最近は慣れて来てもう突っ込むのも飽きてしまった。

「早くシャトと結婚したいー。教会に圧力でもかけようかな?」
「やめてくださいよ、宰相さん達が赤ちゃんを産み終わるまで伸ばしたでしょ! 」
「……仕方がない……将来のシャトのために検証実験は必要だもんね」

 やっぱり検証実験だと思ってたんだーー!この人ーー!

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