【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ

文字の大きさ
8 / 11
小話

魔術師の呟き

しおりを挟む
「きゃわゆ」

「黙れ、馬鹿者!バレるでしょう!」 

 私の名前はノル。キルリス王子の側近としてこの国に潜入した「ケットシー様捜索室」のエースである。因みに同居猫はイッチ、ニーチ、サンチの3匹でみんな超美猫だ。
 あと祖霊様の一方、レンレン様のお世話もしている位、凄腕の魔術師なのだ。

 私と猫達の事を考えている場合ではなかった。今私達は絶対に失敗できない任務の真っ最中なのだ。
 やっと昔に誘拐されたケットシー様の行方を掴み、我が国へお帰り願う任務中なんだから。

 そして我々の目を釘付けにしている方。あああ!何という事だ!人の姿に押し込められているとは言え、全身から立ち登る猫気にゃんき!我が国ののものなら、駆け寄って喉の下をゴロゴロ撫でずにはいられないくらい血が騒ぎまくる!

「酷い」「なんてこと」「萎縮してしまっている」「痩せ過ぎでは?」「オドオドして……よっぽど」

 私と共に来た魔術師は5人。魔術師は元より、騎士から全てが怒りで震える拳を隠した。大量の間者から送られてきた情報より酷いカイ様の様子に我を忘れそうになる。

「キルリス王子」

「分かっている、やるぞ」

「はっ!」

 我が国の王子はおモテになる。そんな王子に寄ってくる有象無象からガードしつつ、王子がカイ様と接触しやすいように誘導する。
 良し、もう少し。と言うところで、何と言う事だろうか!カイ様の細くてか弱い体に体当たりしてきた趣味の悪い真っ赤なドレスと、鼻の曲がりそうな腐った薔薇の香水を振りかけた下品な女!

 あいつ、殺そう!

 我々の心は一つになったが、我らが王子は流石王子の振る舞いをする。

「危ない」

「え、あっ!あ……!!」

 倒れそうになるカイ様をさっと腕に仕舞い込んだ。くっ!流石王子!憎い敵を攻撃するより、カイ様の安全を優先するとは!我々はまだまだ甘いのですね、レンレン様!

 キルリス王子はレンレン占いの

「今日は白い服が良い」

 の、予言に従って着てきた真っ白な礼服。それにカイ様は持っていた赤いワインを思いっきり溢してしまいました。
 ええ!ええ!カイ様は悪くないんです。あのカイ様をみてニヤニヤしている女が悪いんです。それなのにこの国の王子は頭からカイ様を怒鳴りつけます。

 猫に大声?!非常識にも程がある!そんな大声で言わなくても、猫は耳が良いですからね!聞こえてますけど?!
 イライラとしますが、ここは上手く演技で通します。



 おお!キルリス王子の魔力を纏った言葉です。相手の心を少しだけ縛る言葉。この国では魔術もかなり衰退しているようで、誰もキルリス王子の魔法には気づかないんです。
 カイ様のお力に縋りすぎです、馬鹿じゃないんだろうか!

 そしてなんの疑問も思わないなんて阿呆かな?いや、仕事がし易くて良いかも……ここでしくじったら元の木阿弥だ、慎重に……。

「カイさんと一緒に指輪も……」

 お、王子!そんなはっきり言っては、感づかれ……ない?!嘘だろう?!あんなに封じの魔力の溢れる要の品を?!
 何故、封じの鍵の子であるジーク王子にしか開けられないのか、考えた事はないのか?!こいつら頭の中身空っぽなのか?!

 金目のケットシーを封じるのに相応しい、金の猫目石がとても美しい力のある指輪だ……凄い欲しい。

「にゃっ!」

「あっ!」

 本能で自分を縛りつける要だと気がついたのかカイ様が指輪に飛びかかった!いけません!いけません!バレてしまいます!

「みな!」

「はい!王子!」

 私達全員でカイ様を囲みました!ここの国、他の者にも気付かれてはならないのです。人間の壁です!

「カイ様!小魚です!」

 我が国の者なら必ずポケットに忍ばせている猫のおやつをさっと取り出します。

「にゃ?!」

 カイ様はおやつを初めて見たのか、珍しそうに目を丸くしました。くっ!可愛いし美しい!なんたる美猫!我が家の猫の次に素晴らしい猫様だ!

「カイ様!ふわふわのチリンチリンですよ!」

「にゃっ?!」

 我が国の人間ならば誰でも一つは携帯している猫じゃらしを別のものが取り出します。初めて猫じゃらしを見たのでしょうか?びっくりしています。なんとお可愛らしい!我が家の猫の次に……おっとっと。

 出来る我が国の王子は我ら魔術師の手を借りずにさっさとカイ様の契約をジーク王子から自分に書き換えてしまいました。わ、私達の仕事は……?!
 ……今はカイ様を安全に我が国へお連れするのが最優先です。私の安いプライドなど、カイ様の前ではゴミです!ゴミ!ポイです!

 しかし、ほぼ苦労もせずにカイ様と指輪を手に入れました。いえ、まだ敵国内です。油断はいけません。見送りの衛兵も怪しく感じますが、我らは務めて冷静に振る舞い、王宮を後にしました。

「急げ!我が国の高速馬車を使う!」

「勿論でございます!」

 我が国の御者と魔術師がペアで操る高速馬車は馬に身体強化、車体を軽くしながら駆けるもので、物凄いスピードが出ます。
 馬達も高速移動、身体強化訓練を受けた馬で、街道沿い各所に配置済みです。真夜中の走行も恐ろしいですが、良く訓練された馬は御者に従い走り出します。
 魔物が出てきたら騎士団が立ちはだかり、相手をしてくれるでしょう。我らはとにかく早く安全な我が国へカイ様をお連れする事を最優先します。

「国境です!」

「国越えの準備を!!」

 国には結界が張られている事も多く、中の物は引き止め、外から来る物は弾く、そんな性質がある物が多いのです。

「王子、カイ様を」

「ああ」

「にゃっ?な、何ですか」

 何も説明をされていないのに、大人しく王子に抱っこされるカイ様。指輪のせいもあるようですが、完全に気を許していらっしゃる!くっ!羨ましいーー!
 はっ!仕事仕事。

 王子とカイ様の気を同化させ、王子一人であるかのように偽装。……ううん……カイ様の巨大で愛らしい猫気にゃん気は隠しきれません!
 キルリス王子も気がついたようでこのまま国境越えに挑みました。

「にゃあ……う、うるさい……」

「警報です!やはりありました!解除します!」

「急げ!」

 やっと私達の出番です。くっ!古代魔法を使った複雑な作り!これを作った人は素晴らしい魔術師だったに違いありませんが、いかんせん手入れもなく、放って置かれてはあちこちが穴だらけ、壊れかけです。

「良し!停止できました!」

「と、止まった。良かったぁ」

 カイ様のほっとした顔が何よりのご褒美です。良かった!
 警報を聞きつけて、追っ手がかかる事を懸念しましたが、誰も追いかけては来ません。

「警報がなっても、それを聞き管理して、追走者を出す者がない、と言う事なんでしょうか……」

「恐ろしい事だな」

 私達はそうはなりたくないと心から思った物です。


 そこからは順調に馬車を乗り換え、我が国へ到着致しました。着くなり待ち構えていた祖霊様達がカイ様に抱きついたり話しかけたり大忙しでした。
 私がお世話させていただいているレンレン様もお迎えに来られていて、元々細い猫の目を更に細くして喜んでいらっしゃいました。

「お帰りやーノル坊。頑張ったなぁ」

「ははっ!大体王子がやってくれましたから」

 魔力の高い者には見える巨大な祖霊の猫様達。この国の者は猫様のお姿が見たくて魔力を磨く者も少なくないんですよ。

「そうやな、王子とカイちゃんは良き縁で結ばれとる。ええこっちゃ」

「そうですかー。私には良縁はありませんかね?」

 一応聞くと、ないわ!がはは!と笑われた。こんのデブ猫め!

「ノル坊?なんか言うたかあ?」

「何にもいってません!あーあ!早く我が家の猫達に会いたいなー」

 ふふ、これで何年も続いた「ケットシー様捜査室」は廃止となるでしょうね。でも私達はちゃんと別の仕事を割り当てられますし、クビになったら猫医師の免許もありますから、開業しても良いかもしれません。

「せやな!あいつらもきっとノル坊の事、待っとるで!」

 ふふ、今日は猫まみれで良く眠れそうです。カイ様には後日ゆっくりご案内をするとして、今夜は我が家の猫達に私の活躍を褒めて貰わねばなりません。

 お店で高級おやつを買って家に帰るのでした。

 魔術師の呟き 終
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

僕はただの平民なのに、やたら敵視されています

カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。 平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。 真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...