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小話

令嬢は物申す

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 わたくしは高貴な血筋ですわ。貴族ね?そのわたくしを差し置いて、この国の王子と婚約した者がおりますの。
 
「ネーネ様!お聞きになりまして?王子の話でございます!どこの馬の骨とも分からぬ者を連れ帰り、あまつさえ婚約者に据えるなどと言う暴挙!わたくし、納得出来ませんわ」

 わたくしより位が低いサリーが、ワナワナと震えながらわたくしに訴えます。仕方がありませんわ、わたくしががつん、と言ってやらねばならないようですわね。

「サリー、ついていらっしゃい。わたくしにお任せなさい」

「ネーネ様……!」

 わたくし達は足取りも優雅に戻ってきた王子の所へ向かいます。淑女たるもの、常に美しくあらねばなりません。

「王子、わたくしから一言言わせていただきたい事が……」

え?

 そこには、天使がおりましたわ。わたくしとサリーがはしたなくもぽっかりお口を開けて立ち尽くしてしまったのです。

 どれだけのご苦労をされたのでしょうか。毛艶も悪く、肌もかさついておられました。けれど、瞳に宿る美しい金色はもうどうしたら良いのでしょう!
 全身から立ち登る高貴な、いいえ!高貴などどいう言葉では生温いほどの輝きと神秘さ……!ああ、普通のお方ではありません!ま、正しく天使!いえ、神!!


「キルリス様……あの方達は……」

「ああ、父上の愛猫のネーネお嬢さんと母上のサリーお嬢さんだよ。今までは猫と会話すると言う事を思いつかなかったかもしれないけれど、どうだろう?今は二人と話せるかな?」

「試して見ても良いですか?」

「勿論だとも」

 か、神が!神が王子の腕からスルリと降りてこちらに来られます!わ、わ、わ、たくしどうしたら?!

「こんにちは、お嬢様方、初めてお会いします。僕はカイと言います」

「はひぃいーー!勿体ないお言葉ですぅーーー!」

 わたくしと、サリーはカイ様の前に跪きました!

「あ、あの。仲良くして下さいね?」

「天地神明にかえましてもーーー!」

「大袈裟です!!」

 それからわたくし達はカイ様と仲良くさせていただいておりまして、わたくし達の地位は更に高まったのです。

「はあ……お美しいお姿……闇夜のような毛並みに月のような瞳……尻尾も5本も……ああ、カイ様!」

 城の若猫は一度は皆カイ様に恋をするものです。それを牽制するのがわたくし達の役目ですわ。

「おだまらっしゃい!カイ様にちょっかいかけようなんて、このネーネの目の黒いうちはさせませんわよ!」

 わたくしが認めた礼儀正しい猫だけが、カイ様親衛隊に入る事が出来るのですからね!


「ははっ!ネーネと若猫がお喋りしてるよ、ネーネは本当にしっかりものだねぇ、カイ」

「え?あ、はい。キルリス様!ネーネにはいつもお世話になっているんですよ」

 ああ、王子とカイ様がお話になられているわ……。なんてお似合いの二人なんでしょう!感動ですわ!美しいですわ!

「サリー、カイ様の平和はわたくし達のが守りますわよ!」

「はい!ネーネ様!」

 にゃごにゃご、にゃーにゃーと鳴き合う猫達を城の人間は可愛いなと見つめ、目を細めるのでした。


 令嬢は物申す 終
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