【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ

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小話

病の僕と病の君

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 僕はカマル。駆け出しの猫医師……になれなかった男だ。

「にゃーん」

「あ!猫さ……ぶぇっくしょーーい!!」

「にゃーーー?!」

 ああ!猫様を驚かせてしまった……僕の両目から滝の様に涙が溢れる。ついでに両鼻から鼻水も溢れる。

「うわあああ……」

 僕は、僕は!この国で生きていくには致命的な病に冒されていた。猫の毛ムズムズ病だ……死にたい。

「カマル!私は……ううっ!!」

「大丈夫だよ……母さん、父さん。猫に……近づきさえしなければ……ぶえっくしょーーーい!」

「あっ!母さんにトイちゃんの毛がついてたかしら?」

「父さんのライの毛かも……」

 良いんだ、父さん、母さん。僕だって猫と触れ合いたい。と言うか家族で一番大好きな自覚があるし!トイもライも僕の事が大好きなの知ってる!
 でも自分達が近づくと、僕が苦しむのを知っていて、いつも遠くから挨拶してくれるんだ。トイ、ライ、いつもありがとう。

 こうして僕は猫達に気を使われながら頑張って生きて来た。僕の癒しはもちろん祖霊のセンリ様。

「ああーーー!センリ様!今日も美猫!ロングな毛並みがうつくしひーーー!」

「さもあらん、さもあらん。さあ、魔力ブラシで梳るが良いぞ!」

「ははー!光栄でありまぁーす!」

 僕の仕事は大体ご褒美。

「そういえばセンリ様。僕こないだカイ様救出に同行したじゃないですか!カイ様とならくしゃみしないで触れ合えるんですよ!本気で宮廷魔術師目指そうかな!」

「良いかもしれぬ。カイ殿はケットシー故、妖精の気が強いし、毎日お風呂に入っておるようだからの、その辺がお前のムズムズ病に引っ掛からぬのかもしれんな」

 あーでもカイ様にメロメロでデロデロのキルリス王子に勝てない気がするなぁ……。

 猫ちゃんをこの手に抱っこできる日が、僕には来るんだろうか……?


 そんな日がやって来た。

「カマル……大変な病気の猫を保護したんだ。猫医師の資格と魔術師の資格があるお前にしか頼めない」

 深刻な顔で飛び込んで来た猫医師協会会長に僕はびっくりしたが、会長について行った。
 その保護した猫は伝染病で、かなり厳重に隔離されていた。

「……にゃあ……」

「な、なんてこと……」

 弱々しく鳴くまだ若猫。かなり弱っているが、問題は……

「毛が……全部抜けてる……」

「そうなんだ。毛が抜ける病はいくつもあるが、どの薬も効かない。今、新薬や魔法薬を開発中なんだが、どれも効果がない」

 会長は疲れた顔をしている。このままではこの猫は死んでしまう。

「僕が見ます!」

「頼む!私達もサポートはするし、薬は探してみる」

 僕はこの隔離された部屋に残った。

「おいで、抱っこしても良いかな?」

 若猫は遠慮しているようだ。賢い猫だ、自分が病だって知っているんだ。

「僕には移らないから大丈夫。今はいないけど、僕は祖霊様のお世話係のカマル。君のお世話もしたいんだ」

「にゃあ……」

 若猫は小さく鳴いた。お願いします、そう聞こえたから、僕は猫を抱き上げて感動した。

「ご、ごめん!病気で苦しい君には申し訳ないけど!僕が!僕が猫を抱ける日が来るなんてーーー!」

 涙が出たけどこれは嬉し涙!あーーーー!嬉しい!病気で毛が全部抜けてしまった若猫の体温は少し冷えていたけど、僕はその暖かさが嬉しくて、嬉しくてずっと抱きしめていた。

「さて、診察しまーす」

「にゃーん!」

 僕たちはすっかり打ち解けた。名前は分からないので、

「そうだなーロンドでどう?」

「にゃん!」

 とりあえず彼のことはロンドと呼ぶ事にした。

「えーと、完全に雄猫!」

「にゃぁん!」

 お股を確認したら、えっち!って聞こえた気がして、ごめんなさいー!と謝っておく。

「うちの国の子じゃないね?発音が、あーカイ様のいた国の子だなあ?遠い所良く来てくれたねぇ、ありがとう!」

「なぁん」

 猫の鳴き声から何となくわかるんだぞ!この特技を持つ人は多いぞ!

「ノミはないよねー!分かる!」

 毛がないからすぐ分かるね!いたら速攻ノミなんてぶち殺してやるからね!

「って……痛かったね……昔の怪我かな?」

 毛がないから、体表に残る怪我の跡がかなりある事にすぐ気がついた。殴られたり蹴られたり……火傷の跡もあった。

「えーと、皮膚の引き攣りが少々。塗り薬と、あーこっち見てー?ありゃ?君、左目が良く見えてないねー?目薬っと……」

 ロンドを看ながら欲しい薬をメモしていく。

「耳掃除はまだか。怖かったもんね、僕がしても良いかなー?」

「にゃふ」

「仕方がないって?もー!」

 ロンドは可愛くて可愛くて仕方がない奴だった。

「ご飯は、まず柔らかいものと、猫ビタンαとβはまぜずに貰って、虫くだしも一応出してもらおう」

 たくさんのメモを様子を見に来た会長に渡す。

「こ、こんなに?!」

「そりゃそうですよ、カイ様の国から逃げて来たみたいです。足りなきゃ僕がお金払います」

「いや、大丈夫だ。給付金が増えたからね!」

 会長は全て用意してくれて、僕はロンドに説明しながら薬を飲んでもらう事にした。

「ロンド、聞いて?これが虫下し。お腹の中に変なやつがいたらロンドが病気になるからね?」

 全部説明すると、仕方がないな、と納得してくれた。本当に賢い!ご飯も食べ、薬も終わるとする事がない……というかこれから大事な仕事がある!

「うおーーい!ロンドー!あっそぼうー」

「にゃーーん!」

 ロンドは若猫。遊ぶの大好き!僕はこんなに遊んだのは初めてかもしれない。

「あれ?ロンドひげが生えてる」

「にゃーん!」

 ロンドの口の周りからセンサー髭がぴょいぴょいのびていた。

「これで物にぶつからず歩けるねぇ……すぐ良くなるかも」

 僕は思わず少し悲しい顔になってしまったようだ。だってロンドに毛が生え揃ったら、僕のムズムズ病が発病してしまう。
 仕方がない、こんなところに閉じ込められて暮らすなんてロンドには良くないもんな。

「にゃあ……」

「ごめん!大丈夫だよ!」

 しかし、いつまで経ってもロンドに毛は生えて来なかった。


「はぁ、なんの病気かねぇ……」

「ハゲ病か、まぁ見事につるっぱげな猫じゃのう」

「センリ様!お久しぶりです」

「にゃぁん!」

 祖霊のセンリ様は自由だ。好きな時に来て、好きな時にいなくなり、気が向いたら僕から魔力を吸っていく。

「センリ様、ロンドの病気は何なんでしょう?誰も分からなくて。せめて効く薬が有れば……」

 センリ様はでっかい顔を横にして

「ん?もう良く効く薬を与えておるではないか」

「え?」

「そやつは伝染病ではないぞ。こんな狭い部屋に入れておかなくとも良い」

「え?!」

 センリ様にお墨付きをいただいたけど、ロンドはまだおハゲのままだ……。

「ありゃ、心の病気じゃい。あれに効く薬は、大好きな人間からの大好きじゃ。だからロンドの毛は生えぬ。生えたら大好きなカマルがいなくなってしまうからの!」

「えっ?!ロンドのおハゲは僕のせいなんですか?!ううっ!僕は、僕は!あーー!猫医師の免許なんて持つ資格のない馬鹿野郎だーーー!」

「おーい、カマルー話を聞くんじゃー」

「僕の!僕のせいでロンドが寒い思いをしていたかと思うと僕は情けなくてあーー!もう死にたい!」

「いつも抱っこしててくれたからちっとも寒くないってロンドが言うておる。おーい、カマルー?死んだらロンドも死にそうだからやめるんじゃー」

「ロンド?!大丈夫?!お腹痛いの?!死なないで!ロンドーーー!」

「なあーーーご!」

「少し黙れ!カマル!」

「ぶへっ!」

 実体のない祖霊のセンリ様だけど猫気にゃん気を集めてぶつけると中々高ダメージの弾が出せる。

「ご褒美ありがとう……ございます!」

「落ち着いたか?」

 このにゃん気弾。当たると肉級模様に赤くなるので、我が国では幸運スタンプとか言われている。ありがたやー!

「そこでじゃ、わしに良い考えがあるんじゃが、カマル、ロンド聞くが良い」

「はい!」「にゃい!」

 僕たちは思わずセンリ様の前に正座していた。




「うにゃーー!カマルぅー!」

「ロンドー!早すぎー!」

 僕は人型になって尻尾が2本になったロンドと暮らしている。猫の毛ムズムズ病はロンドと暮らしても発病していない。

「えっ!ぼ、僕に弟子入りですか?!」

「にゃんっ!!」

「え?あ、はい。そんなに畏まらなくても、うんうん?へえ、猫の毛ムズムズ病?あーえ?そうなんですね?」

「にゃふ、にゃーん、にゃ!にゃーにゃ、にゃふ……」

「分かりました。僕に手伝えることなら何でも」

 センリ様の口利きもあり、ロンドはカイ様に弟子入りをした。毎日通う事3ヶ月。なんとロンドは

「にゃっ!やっと人型変化が出来た!」

「うわっ?!す、凄い!」

「尻尾も2本になった!」

「ひえ!可愛さ倍増?!」

 なんとケットシーになってしまったのだ。

「素養はありました。元々、人間が何をしゃべっているか分かってたみたいですよ」

 カイ様がニコニコとロンドの頭を撫でる。ロンドも照れながらも喜んでいる。

 眼福だぁ……!僕の隣でキルリス王子も僕と同じような蕩けた顔になっている。これは仕方がない事です。

「僕、最初からカマルが何言ってるか分かってた!」

「やっぱりー?股間を確認した時嫌がってたもんな!」

「ふにゃーー!それ言うー?!」

 めちゃくちゃ怒られた。

 こうして僕はロンドと二人暮らしを始めた。ロンドは神経質なくらいきれいに掃除をして、小まめにお風呂に入る。大丈夫だよって言っても聞きやしない。

「僕、ずーっとカマルの猫でいたいからさ!」

「僕だってずーっとロンドと一緒にいたいですよー!」

 毛が生えて来て分かったんだけど、ロンドはきれいな三毛猫だった。ロンドの天気予報は良く当たるって評判だよ!

 こうして僕は猫の毛ムズムズ病を克服しなくても、素敵な猫と暮らす事が出来ました。
 他の方にも良き縁がある事をねがって!


 病の僕と病の君 終
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