11 / 11
小話
カイの温もり
しおりを挟む
最初はとっても寒かったんだ。誰かが僕を抱っこしているだけど、その手はとても冷たくて気持ちが悪かった。
「へっ!これで俺様も高位貴族の仲間入りだぜ!」
汚い声、汚いくて冷たい心。こんな所に居たくなくて爪を伸ばし引っ掻いた。
「いてぇ!クソが!」
「ニィー!」
僕は暗くて狭いところに閉じ込められた。袋の中だったと思う。怖くて怖くてお母さんを呼んだけど、迎えに来てくれなかった。
次に僕はとても良い匂いのするあったかくて大きな掌の上にいた。この人は怖くないって思った。
「ベルワイト卿、本当に彼の国はこの子を我が国に譲ってくれたのだな?」
「ええ!勿論ですとも、国王様!私の必死の努力とお願いで!」
嘘だ。僕には分かる。あの冷たい人は嘘をついている!
『んな訳ねーんだよ!拉致って来たに決まってんじゃねーか!誰がこんな貴重な生き物を渡すかってんだ!このお人好しの国王が!!』
何か良くない事を考えているみたいだったけど、嫌な気配しか僕には分からなかった。
でもあったかくて大きな手の人は、小さくて震えている僕をあっためてくれた。僕はこの人が好きになった。
「そうか、そうか!良く我が国にいらした!末長く仲良くして欲しい。……名前はそうじゃカイなんてどうじゃろう」
僕はカイって名前になった。それから僕はまた冷たい所に閉じ込められた。
「カイ様に病気が見つかりました。魔術治療を施します」
『な訳ねーだろ、洗脳と封じだよ!この国から出られないように慎重に呪いをかけるんだよ!』
冷たくて大っ嫌いな人はあったかくて大好きな人から僕を掴み上げる。嫌がると、なんだか眠くなってくる……。
「カイよ、早く良くなっておくれ。もし、わしがいなくなっても、わしの孫やわしの血筋の者とも仲良くしてくれると嬉しい。わしに連なる者とお前が仲良く暮らす日を想っておるぞ」
僕は眠くなる、色々な事を忘れていく。でも、あったかい手と仲良く暮らせる未来は僕の中にしっかり残った。
ずーっとずーっと夢を見ていた。僕はあったかい手の男の子と一緒にご飯を食べて、お昼寝をして、ちょっぴり苦手な勉強をする。
木登りをして、怒られて。庭で走り回って夜一緒に眠るんだ。
「……カイ、一緒にご飯を食べよう」
「あれ?」
夢の中の男の子はいつの間にか大きくなっていて、大人になったその子は小さな頃とは全く別人になっていた。
「カイ?」
青い目が僕を呼ぶ。
「にゃん!」
僕は、大好きな目が昼間の空みたいに青くて、キラキラする銀の髪の人の腕に飛び込んだ。
「あれ?」
ぽかぽかと午後の日差しに暖められた布団の上で僕は目を覚ました。
「起きたかい?」
机で書類を書いていた手を止め、僕の大好きな人がやって来る。
「キルリス様。僕、昼寝してました?」
「うん。お昼ご飯食べ過ぎたって言ってたからね。ふふ、面白かったよ?人で寝始めたのに途中で猫になってね、何か夢でもみてたの?カイ」
夢?夢を見てた。あんまり覚えてないけど、何かとても昔の懐かしい夢だった気がする。
「はい!でも最後にキルリス様が出てきて僕を抱っこしてくれたんです」
僕の今の姿は猫だ。布団の上で尻尾を高くして、飛びかかるポーズをする。
「ははっ!夢の中だけでかい?」
キルリス様は両手を広げてくれた。
「にゃん!」
ぴょん!と躊躇わず、僕はキルリス様に飛びついた。
「ふふ!可愛いなあ!」
何なく僕を受け止めて、なでなでしてくれる暖かい手。僕がうっすら覚えている大きな手より、もっともっとあったかくて大好きな手。
「えへへ、ずーっと一緒にいて下さいね」
すりすりと擦り寄ると僕のお腹にもふっ!と顔を埋める。
「にゃっ?!」
「あー、暖かいお日様の匂いがする。カイはあったかくて良い匂いだ」
「僕、あったかいですか?」
黒い毛が良く熱を吸収したかな?
「うん、私の疲れも吹っ飛ぶくらい暖かいよ」
「じゃあ僕がキルリス様を暖めてあげますね!」
「ありがとう、カイ」
僕はもう暖めてもらうだけの子供じゃない。大好きなこの人と暖め合いながら生きて行くんだ。ずーっと仲良くね。
カイの温もり 終
この小話で、役立たず~は終了となります。たくさんのしおり、お気に入り、感想などありがとうございました!
また何か面白そうな題材に逢えましたら、お読みいただけると嬉しいです!
最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました!
「へっ!これで俺様も高位貴族の仲間入りだぜ!」
汚い声、汚いくて冷たい心。こんな所に居たくなくて爪を伸ばし引っ掻いた。
「いてぇ!クソが!」
「ニィー!」
僕は暗くて狭いところに閉じ込められた。袋の中だったと思う。怖くて怖くてお母さんを呼んだけど、迎えに来てくれなかった。
次に僕はとても良い匂いのするあったかくて大きな掌の上にいた。この人は怖くないって思った。
「ベルワイト卿、本当に彼の国はこの子を我が国に譲ってくれたのだな?」
「ええ!勿論ですとも、国王様!私の必死の努力とお願いで!」
嘘だ。僕には分かる。あの冷たい人は嘘をついている!
『んな訳ねーんだよ!拉致って来たに決まってんじゃねーか!誰がこんな貴重な生き物を渡すかってんだ!このお人好しの国王が!!』
何か良くない事を考えているみたいだったけど、嫌な気配しか僕には分からなかった。
でもあったかくて大きな手の人は、小さくて震えている僕をあっためてくれた。僕はこの人が好きになった。
「そうか、そうか!良く我が国にいらした!末長く仲良くして欲しい。……名前はそうじゃカイなんてどうじゃろう」
僕はカイって名前になった。それから僕はまた冷たい所に閉じ込められた。
「カイ様に病気が見つかりました。魔術治療を施します」
『な訳ねーだろ、洗脳と封じだよ!この国から出られないように慎重に呪いをかけるんだよ!』
冷たくて大っ嫌いな人はあったかくて大好きな人から僕を掴み上げる。嫌がると、なんだか眠くなってくる……。
「カイよ、早く良くなっておくれ。もし、わしがいなくなっても、わしの孫やわしの血筋の者とも仲良くしてくれると嬉しい。わしに連なる者とお前が仲良く暮らす日を想っておるぞ」
僕は眠くなる、色々な事を忘れていく。でも、あったかい手と仲良く暮らせる未来は僕の中にしっかり残った。
ずーっとずーっと夢を見ていた。僕はあったかい手の男の子と一緒にご飯を食べて、お昼寝をして、ちょっぴり苦手な勉強をする。
木登りをして、怒られて。庭で走り回って夜一緒に眠るんだ。
「……カイ、一緒にご飯を食べよう」
「あれ?」
夢の中の男の子はいつの間にか大きくなっていて、大人になったその子は小さな頃とは全く別人になっていた。
「カイ?」
青い目が僕を呼ぶ。
「にゃん!」
僕は、大好きな目が昼間の空みたいに青くて、キラキラする銀の髪の人の腕に飛び込んだ。
「あれ?」
ぽかぽかと午後の日差しに暖められた布団の上で僕は目を覚ました。
「起きたかい?」
机で書類を書いていた手を止め、僕の大好きな人がやって来る。
「キルリス様。僕、昼寝してました?」
「うん。お昼ご飯食べ過ぎたって言ってたからね。ふふ、面白かったよ?人で寝始めたのに途中で猫になってね、何か夢でもみてたの?カイ」
夢?夢を見てた。あんまり覚えてないけど、何かとても昔の懐かしい夢だった気がする。
「はい!でも最後にキルリス様が出てきて僕を抱っこしてくれたんです」
僕の今の姿は猫だ。布団の上で尻尾を高くして、飛びかかるポーズをする。
「ははっ!夢の中だけでかい?」
キルリス様は両手を広げてくれた。
「にゃん!」
ぴょん!と躊躇わず、僕はキルリス様に飛びついた。
「ふふ!可愛いなあ!」
何なく僕を受け止めて、なでなでしてくれる暖かい手。僕がうっすら覚えている大きな手より、もっともっとあったかくて大好きな手。
「えへへ、ずーっと一緒にいて下さいね」
すりすりと擦り寄ると僕のお腹にもふっ!と顔を埋める。
「にゃっ?!」
「あー、暖かいお日様の匂いがする。カイはあったかくて良い匂いだ」
「僕、あったかいですか?」
黒い毛が良く熱を吸収したかな?
「うん、私の疲れも吹っ飛ぶくらい暖かいよ」
「じゃあ僕がキルリス様を暖めてあげますね!」
「ありがとう、カイ」
僕はもう暖めてもらうだけの子供じゃない。大好きなこの人と暖め合いながら生きて行くんだ。ずーっと仲良くね。
カイの温もり 終
この小話で、役立たず~は終了となります。たくさんのしおり、お気に入り、感想などありがとうございました!
また何か面白そうな題材に逢えましたら、お読みいただけると嬉しいです!
最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました!
294
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(18件)
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こう、どこを見ても国の中に猫がいる……みたいな風景が見えたらいいな~って思いながら(*´ω`*)国民が猫好きと言うより猫が好きな人しか残らなかった、そんな場所(笑)
だぁっ!!!!!
カイくん…??尊すぎやしませんか…??
猫じゃらしで沢山遊ぼうね………😭😭😭
もう嫌ってほどちやほやされまくっているはずです(*´ω`*)ちやほやちやほや!
本日も、こちらの世界にお邪魔をさせていただいております。
あちらの世界も、こちらの世界も。ほかの世界も。
それぞれが、それぞれの色を(魅力を)放たれていて。何度でも、のぞきたくなります。
こんばんは!感想ありがとうございます!
私も少し手を加えたりしながら完結した物を見直す事が良くあります。色々書いたなぁ〜なんて自分でも思ってます😊