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3 芥七海だった俺

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「うん、こんなもんかなー?未練がないなら、このまま俺の上司の流転の神の所に行って。地上に留まるとポイントが削れて行くんだ。勿体ないだろ?」

「分かった。色々ありがとう。今世より良い来世になりそうだよ、色々相談に乗ってくれて助かったよ、名前を聞いて良い?」

「ナナ。体と残ったスキルはありがたく売らせて貰うよ」

「分かった、好きにして。短い間だったけど、世話になったね、ナナ!」

「おう!良い来世をー」

 俺は一本の紐をスティアーに渡す。不思議がりながらそれを握ると紐の先端にぽん!と水色の風船が現れる。

「お!凄い」

 風船はみるみる膨らみ、捕まったスティアーの魂と一緒にふわふわと上昇し始めた。

「じゃーなー!」

 手を振ってスティアーを見送る。魂と流転の神の風船だから、現世の物はすり抜けて上へ上へと上がって行く。

 スティアーは神の元に真っ直ぐ辿り着き、罪とスキルが決まっているから、すぐに次の転生が始まるだろう。

「まーったく、忙しいから手伝ってってどう言う事なんだよぅ」

 残ったスキルを整理してから、スティアーの死体を解体して保存する。

「んふ。傷物だけど、王子の肝を欲しがる魔女は多いからなぁー。あと血は変身薬だっけ?死んだ王子の姿で現れたら王妃とやらは腰を抜かすかなぁ……くすくす……精液抜いとくかなぁ!落とし種事件とかどうだろう!あーー王族最高!」

 俺は壊れているんだって。こうしてまだ血の滴る死体を切り刻んでも平気なんだもの。だから流転の神様にスカウトされたんだけどね。



「……あくた七海ななみさん、済まなかった」

「……?誰ですか貴方」

 俺は死んだ。多分母親に刺されて。たった数万の金欲しさに、頭のおかしくなった母親はやっと見つけた俺を一刺し。
 狂った母親から逃げ出して、ブラックながらも働き、軌道に乗り始めた時だった。

「貴方はこんな運命ではなかった。しかも前回も。2回も誤った運命に投げ入れてしまいました。それにより、貴方の心は疲弊し、かなり壊れてしまった……申し訳ない」

 流転の神だと言う人は申し訳ないを繰り返している。しかしその周りで、彼の眷属達がバタバタと走り回り息を切らし死にそうな声を上げている。

「うわああ!向こうで転生者の大量発注ですぅー!」

「こ、こっちの世界から大量虐殺の死者が上がってきました!ひー!」

「剣聖の勇者なんて!そんなレアスキル余ってる訳ないじゃないですか!剣聖(料理のみ)ならあります!」

「底辺勇者で良い?アルコール依存と異性運最低つきならすぐ用意できます!」

 物すごく忙しそうだ。

「……ここ最近こんな調子で……もう二度と間違った転生はさせないようにしますので……」

「いや、無理だろ。また人為的ミスが起こるって」

「ううう……っ!誰ですかね、転生システムを外部に漏らした神は……」

 泣かれた、目の前で。壊れた心の修復は時間がかかると言う。ならばと俺はお手伝いをする事になった。

「神様の元に来る前に、スキルの振り直しとか、もろもろ済ませておけば楽だよね?」

「な、七海さーん!」

 神様にまた泣かれた。これは感動のむせび泣きだ。

 そう言う感じで俺は地上に降りて来た。仕事はそうさ、死体漁りだな。

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