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45 すべからく、人の道に外れ
しおりを挟むそいつはまっすぐに私がいた位置に落ちて来たが無傷だった。着地の瞬間、繰り糸で勢いを殺し軽い音を立てて地に足をついた。
「素晴らしい、初見で避けるとは」
まだ若い男だった……しかしこいつはやばい。リオリやフォルディンのヤバさにアンライが持っていたどす黒いヤバさを特盛で混ぜたような空気を持っている。見た目は非常に良いと言える、濃紺の髪に金色に光る目が美形と言える形を取っているのに、内面の異常さが滲み出ていて警戒心しか抱かせない。
「くそ、もうついたのかアレン」
「そりゃあ、全速力で駆けつけさせて貰いますよ。何せとても可愛い人が見つかったんでしょう?」
「見りゃわかんだろ、可愛すぎて食べちゃいたいだろ?」
「ええ、本当に……食べちゃいたい」
にこりと笑ったはずなのに、私にはにちゃり、と気持ち悪く歪んだようにしか見えない顔。アレンと呼ばれた最後に現れた変態はそう言う類の変態だった。
「現在の人形使いのトップ3が雁首揃えるて一人の可愛い人を追い詰めているなんて……悶えそうです」
「そりゃ必死にもなるさ。伝説が目の前にのこのこ現れたんだから」
「俺、口ん中触っちゃったー」
「は? 殺す」
「やなこったーい」
逃げ道はあるだろうか?
「しゃあない……アレン。腕の一本くらいはくれよ」
フォルディンが人形を下げた。
「俺、足一本でいいよ」
リオリもフェラインと一緒に下がった。
「では残りは私が頂きます。なぁに片手片足でも花嫁衣装がよくお似合いでしょう!」
まずい、アレンの強さは別次元だ。皮膚が総毛立つような命を削ぐ気配を感じる。フォルディンの騎士道を感じる正しい強さではなく、邪道を駆使し自分の願望を必ず叶える異常なほどの意思の強さ。
「蜘蛛!」
アレンは両手についた指貫で人形を繰る。そして糸は魔力も通しているが本物の糸だ! アレンの落ちて来た穴から覆い被さるように追って来た蜘蛛の人形。完全に昆虫の形をした戦闘人形だった。
「シャッ!」
「くっ」
痛いとか生体部品が痛むとかいっていられない。腕に力をいれ、意思でトリガーを引く。
「ほう! 美しい!」
「あーっ! かっこいい奴」
「それ好きぃ!」
内部骨格に仕込まれた刃が皮膚を突き破り、服を割いて両腕側面に現れる。赤い色のついた人工血液を滴らせた刃で振り下ろされる蜘蛛の足を受け止める。
「やはりディアマンテ様はいい趣味をしていらっしゃる」
「私もあれつけようかな!」
「でもあの機構を組み込んで骨格の強度維持できんのか? あ、クロックの腕を調べりゃいいか?」
痛い、皮膚を裂けば痛いに決まっている。それなのにディアマンテの野郎こんな所に仕込み武器を入れなくてもいいだろうに! しかし、アレンの蜘蛛が吐いてくる糸を切り裂くには役に立つ。
「ほう、粘体糸を切るか! いい武器だな」
気持ちの悪い笑顔……逃げ道が欲しい。
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