【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

鏑木 うりこ

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14 何でだ(サディーア視点

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 使える駒だと思っていた。どこまでも愚かしく、セブスト殿下の事を慕っている哀れな子供!

「貴族の釣り合いの為の婚約だよ」

 小さな頃はただ何も知らず仲は良かった。私達の後を小さなカレリオは一生懸命付いてきた。突き放しても、必死で追い縋るから面白くてわざと放置したりもした。
 それでもカレリオは泣きながらも追い縋った。その時は少しうざったいながらも可愛い弟のように思っていた。
 王太子妃教育が厳しくなり、カレリオと遊ぶ時間は減っていく。すると同時にセブストのカレリオを想う気持ちも減っていったように思う。

「何とも思ってはいない。勿論愛してはいないよ」

 そうはっきり私には言うようになり、そこへ神子の登場だ。素直で明るく、屈託ない神子に皆心を奪われた。

 それでもカレリオはセブスト殿下についてきた。だから便利に使おうと思ったのだ。セブスト殿下の為と言えば面倒な仕事も嬉々としてこなした。哀れな子供!

「セブスト殿下の仕事だからやっておいて」

「分かりました」

 全て押し付けても文句一つ言わずに、カレリオは雑用からなにまで真面目に全てにこなした。しょっちゅう寮に仕事を持ち帰り、夜遅くまでかかっているようだ。
 余程セブスト殿下に好かれたかったんだろうな。

「体が強くない?嘘だろう?」

 徹夜で終わらせる時もあるようだった。セブストが期限ギリギリまで提出しない書類も多かったからだ。それでもカレリオに回せば期限に間に合うように終わらせてきたし、カレリオは基本的に真面目だ。任せられた仕事を疎かにする事はない。その辺りはとても信頼できる人間だった。

 だからとても便利な存在であった。


「おい、なんで書類終わってないんだ?これじゃカズハと遊びに行けないだろ」

「あなたがやるべき書類が終わっていないんですから。私だって自分の仕事を抱えています」

 王太子を会長に据えている生徒会は未来の王宮の縮図と考えて良い。それが上手く回らなくなった。

「いつもはすぐ終わるだろう?何でだ?」

 セブストは本気で言っているんだろうか?自分の仕事なのに考えた事はないのだろうか?

「カレリオですよ。昨日来なかったでしょう?」

 セブストはやっと、ああ!と声を上げて気がついた顔をする。

「だから昨日は快適だったのか!アレもやっと諦めたんだな。これでカズハとゆっくり出来るな」

 カレリオの事をアレと言う。その言い回しはあまり好きではないな、お祖父様を思い出す。
 しかし、カレリオは使える奴だ、もう少し上手く使って欲しい。

「ん?セブスト、どうしたの?」

「何でもないよ、カズハ!」

「そう?ねーまだ遊びに行けないのー?この店のスイーツ食べたいなー」

「良し、休憩がてら行ってくるか!」

 何を言っているんだ!セブストは!

「セブスト!その目の前の書類が終わるまで帰る事は出来ませんよ!?」

 かなりの高さまで積まれている書類。全て締め切りは過ぎている。今日には提出しないと流石に無理だ。

やっといてくれよ」

「無理です。私も仕事が溜まっていますから」

 どさくさに紛れて私の仕事もカレリオに任せていた。気づかぬように私の分もやらせていた……いや、気づいていただろう。判を押す部分とサインをする所は空欄のまま、完璧に仕上がった状態で返して寄越したから。

「何だよ、この書類。全然終わってないじゃないか。サインをすれば良いんだろ?」

「内容をよく見て下さい!」

「セブスト、まだあ?」

 カズハは生徒会に入り浸っているが、一切の仕事の手伝いはしない。

「なんで役員でもない僕が手伝うの?面倒だよ」

 そう言い放っている。ただ、セブストを急かして、自分は長椅子に寝転んでお菓子を食べている。
 そんな無邪気な所も可愛いなと思っていたが、こう仕事が溜まってくると、イライラとしてしまう。

「終わるまで全員帰られませんからね」

 えーー!と全員から抗議の声が上がるが仕方がないだろう!

「こんな時カレリオ様がいてくれたら……」

 誰かがぽつりと漏らすと

「なんか言った?!」

 間髪入れずに、カズハの鋭い声が飛ぶ。なんでもないです、と小さく縮こまる生徒。夜遅くまで残って書類と格闘する。

「飽きたー帰るー」

「私も……」

「セブストは帰られませんよ!終わってないでしょう!」

「ちっ」

 生徒会は小さな王宮。完全に機能しなくなっていた。カレリオが来なかっただけで。

 便利な駒だと、思っていたのに!
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