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73 ワシ、相談を受ける
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「あの!ご相談したいことがあるのです!」
「はぁ」
この世界には曜日が日曜日から土曜日までの変わらない7日間だ。月曜日に泣く泣く殿下が学園に戻り、金曜日の夕方に戻って来て飛びついてくる。平日はバンドール家に帰って隠居生活を楽しもうと思っているのに、あの書類がどうとかだとかこっちがああだとか言われて帰る暇がない。
「国の仕組みについてお教えすることは何もありませんが、王家特有の口伝やら特記事項などは覚えていただかないと……」
「いや待て、ワシは仮の婚約者みたいなもんじゃし!そのうち殿下ももっとちゃんとした婚約者を……」
と、お断りしているのだが
「ではでは、そのちゃんとした婚約者が決まるまでの仮の期間だけでいいので、こちらの方を覚えていただければ……」
「いやいや、待て待て……ワシにこの手の教育本はちと……」
「いやいやいやいや……」
「待て待て待て待て……」
ワシ、知っとる。これは所謂「王子妃教育」の一環の本じゃ……!絶対にお断りじゃ!と意気込んでも
「ちょっとだけ目を通されてくださいませ、ね?」
と、少しだけ年嵩のご婦人に言われては強く断る事も出来ずに、大変困っておる。ワシはあくまで仮じゃから、このような事は不必要じゃと言うのに……。
しかし、学園より戻られた殿下と一緒に来た者はいけ好かない眼鏡のサディーア・ゼフであった。こざかしい奴よ、こやつの祖父、ダスティン・ゼフも小賢しいが、ワシの同期でまあ悪友みたいなもんじゃったが……。
「あの……もう包み隠さず申します、ダグラス様。我が祖父ダスティンがボケまして!」
「ぶほっ!!あのジジィ頭が逝ったか!!」
若い頃から頭を使いすぎてぶっ壊れたんじゃな!まああ奴は鬼宰相として剛腕を轟かした男であって、レイモンドと2大鬼と皆に悲鳴と共に慕われておったわな!
顔色の悪いサディーアの話によると、かなり以前からその兆候はあったらしい。
「メルク、飯はまだかのう」
「お爺様、私はメルクリーアお爺様ではなく孫のサディーアです。メルクリーアお爺様は3年前に亡くなったでしょう?」
ダスティンとメルクリーアは学生時代からの付き合いで、夫夫だ。うん、そういう奴だ。ワシは知っておるが、ダスティンの事を別に好きではなかったメルクリーアを嵌めて婚約者にしたそういう奴だ、ダスティン・ゼフは。あいつは敵に回さん方が良い。
「私とメルクリーアお爺様を良くお間違えになっておりまして」
「ああ、髪の色が似ておるからか……」
ダスティンは養子を取り、それがこのサディーアの父親であるアーノルドだ。多分、メルクリーアと似た髪の色で、更に優秀だったアーノルドに白羽の矢が当たったんだろうな……。そして生まれたのがサディーアであったわけだ。アーノルドの妻は女性であったからな。
「ゼフ家の重要書類の場所を教えていただく前に……っあのジジィ!ボケた!!!」
「あーーーー」
なるほど、あのダスティンであれば簡単な場所に重要書類などおいてはおかんじゃろう。そしてあのダスティンであれば、「ワシの目の黒いうちはお前ら若造には好きにさせん!」などといって家督は譲っておらんのだな?
「……その通りでございます」
サディーアの父、アーノルドが家督を継ぐための書類が見つからない……そう言うわけか。
「全くその通りでございます!!」
「……ふむ。しかし良いのか……?若い頃のダスティンは苛烈な性格であったぞ」
「え……アレより酷いのですか!?」
「うむ。ジジィになってだいぶ丸くなったと思っておったんじゃが?」
「嘘だろ」
サディーアの青い顔が更に青くなる。嘘じゃないし。多分最近までダスティンは息子や孫に厳しく教育しておったのじゃろうけど、ワシらが学生時代から前陛下、現陛下へ仕えておった頃はもっともっとドぎつい政策をバンバン打ち出しておったんじゃよ?
「はぁ?離反者?レイモンド、斬れ」
「そう言うと思って10人くらい始末しておいたぞ。闇で」
「もみ消せと!?」
まあそんな事もあったなあ……ワシ、思い出してきちゃった……やだな~あんなの面倒じゃよ。ケンウッドは学園の教師になるとかいってさっさと逃げ出すし、あいつらは面倒ごとを全部ワシに押し付けるしで大変じゃったんだから……。
「はぁ」
この世界には曜日が日曜日から土曜日までの変わらない7日間だ。月曜日に泣く泣く殿下が学園に戻り、金曜日の夕方に戻って来て飛びついてくる。平日はバンドール家に帰って隠居生活を楽しもうと思っているのに、あの書類がどうとかだとかこっちがああだとか言われて帰る暇がない。
「国の仕組みについてお教えすることは何もありませんが、王家特有の口伝やら特記事項などは覚えていただかないと……」
「いや待て、ワシは仮の婚約者みたいなもんじゃし!そのうち殿下ももっとちゃんとした婚約者を……」
と、お断りしているのだが
「ではでは、そのちゃんとした婚約者が決まるまでの仮の期間だけでいいので、こちらの方を覚えていただければ……」
「いやいや、待て待て……ワシにこの手の教育本はちと……」
「いやいやいやいや……」
「待て待て待て待て……」
ワシ、知っとる。これは所謂「王子妃教育」の一環の本じゃ……!絶対にお断りじゃ!と意気込んでも
「ちょっとだけ目を通されてくださいませ、ね?」
と、少しだけ年嵩のご婦人に言われては強く断る事も出来ずに、大変困っておる。ワシはあくまで仮じゃから、このような事は不必要じゃと言うのに……。
しかし、学園より戻られた殿下と一緒に来た者はいけ好かない眼鏡のサディーア・ゼフであった。こざかしい奴よ、こやつの祖父、ダスティン・ゼフも小賢しいが、ワシの同期でまあ悪友みたいなもんじゃったが……。
「あの……もう包み隠さず申します、ダグラス様。我が祖父ダスティンがボケまして!」
「ぶほっ!!あのジジィ頭が逝ったか!!」
若い頃から頭を使いすぎてぶっ壊れたんじゃな!まああ奴は鬼宰相として剛腕を轟かした男であって、レイモンドと2大鬼と皆に悲鳴と共に慕われておったわな!
顔色の悪いサディーアの話によると、かなり以前からその兆候はあったらしい。
「メルク、飯はまだかのう」
「お爺様、私はメルクリーアお爺様ではなく孫のサディーアです。メルクリーアお爺様は3年前に亡くなったでしょう?」
ダスティンとメルクリーアは学生時代からの付き合いで、夫夫だ。うん、そういう奴だ。ワシは知っておるが、ダスティンの事を別に好きではなかったメルクリーアを嵌めて婚約者にしたそういう奴だ、ダスティン・ゼフは。あいつは敵に回さん方が良い。
「私とメルクリーアお爺様を良くお間違えになっておりまして」
「ああ、髪の色が似ておるからか……」
ダスティンは養子を取り、それがこのサディーアの父親であるアーノルドだ。多分、メルクリーアと似た髪の色で、更に優秀だったアーノルドに白羽の矢が当たったんだろうな……。そして生まれたのがサディーアであったわけだ。アーノルドの妻は女性であったからな。
「ゼフ家の重要書類の場所を教えていただく前に……っあのジジィ!ボケた!!!」
「あーーーー」
なるほど、あのダスティンであれば簡単な場所に重要書類などおいてはおかんじゃろう。そしてあのダスティンであれば、「ワシの目の黒いうちはお前ら若造には好きにさせん!」などといって家督は譲っておらんのだな?
「……その通りでございます」
サディーアの父、アーノルドが家督を継ぐための書類が見つからない……そう言うわけか。
「全くその通りでございます!!」
「……ふむ。しかし良いのか……?若い頃のダスティンは苛烈な性格であったぞ」
「え……アレより酷いのですか!?」
「うむ。ジジィになってだいぶ丸くなったと思っておったんじゃが?」
「嘘だろ」
サディーアの青い顔が更に青くなる。嘘じゃないし。多分最近までダスティンは息子や孫に厳しく教育しておったのじゃろうけど、ワシらが学生時代から前陛下、現陛下へ仕えておった頃はもっともっとドぎつい政策をバンバン打ち出しておったんじゃよ?
「はぁ?離反者?レイモンド、斬れ」
「そう言うと思って10人くらい始末しておいたぞ。闇で」
「もみ消せと!?」
まあそんな事もあったなあ……ワシ、思い出してきちゃった……やだな~あんなの面倒じゃよ。ケンウッドは学園の教師になるとかいってさっさと逃げ出すし、あいつらは面倒ごとを全部ワシに押し付けるしで大変じゃったんだから……。
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