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19 これもレベルアップの為なんでしょうか?
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「あ~ら、ごめんなさぁい」
ぱしゃっとインクを浴びせられる。最初の頃は遠慮をしてなのかインク壺からペンで弾き飛ばすだけだったのに最近ではインク壺をひっくり返して浴びせてくる。
「……」
せっかくお店のお嬢様に買っていただいた新品の白いブラウスに真っ黒な染みが広がった。良くもまあ毎日飽きないのだなと思うほど、数人の女子がかわりばんこにインクをかけてくる。そしてそれをみてニヤニヤしている男子たち。飽きないのかしら?
「成程、マリー嬢良く分かったよ。今年の一年生の上位クラスの出来がね。年々品位が下がっているとは思っていたが、これほどまでとは。やはり今年の一年から引き抜くのは下位からが良いようだね?」
そんな良く通る声が教室に響き、廊下から王太子殿下が数人の側近と共に覗き込んでいた。
「ひっ……!で、殿下!ご、ご機嫌麗しゅう……!」
いち早く挨拶をした生徒もいたが、怒りを滲ませた殿下の前に
「ご機嫌は大変麗しくない、最悪な気分だよ。分かるね?」
と、一蹴されてしまった。
「マリー嬢。何も説明せずに送り込んで申し訳なかったね」
「いえ、殿下のお役に立てたのなら」
椅子から立ち上がり頭を下げる。でも流石に嫌なものは嫌でしたけれど?
「クラス全員見込みなしとは実に嘆かわしいね。マリー嬢、これからは虐めの全てをきっちり私に報告して欲しい。私からの依頼だよ?今までの様に黙ってやられっぱなしはなしだ」
「……ご依頼とあらば、謹んで」
「口止めや脅しも全部報告してもらうよ」
「畏まりました」
私の返事を聞き終えると、殿下は一つ頷いて去ってゆく。「あのインク壺をマリーに引っ掛けたのは」「ルーザ伯爵家の娘です。兄が3年生におり殿下の側近候補でした」「外しておいてくれ。妹の蛮行に気づかぬ者は不合格だろう」「わかりました」
そんな声まで聞こえて来たので、ルーザ伯爵令嬢はインク壺を持ったまま真っ青な顔でブルブル震えている。
「ま、ま、まさか、あ、あなた……で、殿下に報告なんてし、しないわよね」
「しないもなにも。殿下はしっかり見ていかれましたよ。私が何も言わなくてもね」
「う、うそ……うそ……わ、私、お、お兄様と、お父様から叱られてしまう……」
そりゃあこっぴどく叱られるでしょうね。他人にインクをかけて叱られない方が不思議だと思うけれど。
「マ、マリー……さん、あ、あの今までの事は……ほ、報告はし、しないです、よね?」
別の女子が恐る恐る聞いてきますが、この子も私にインクをかけて笑っていた子ですね。
「今までの事は報告しませんが、殿下はご存じなのではないでしょうか?」
「ひいっ!」
きっとクラスが酷いと知って私を送り込んだんだわ、あの王太子殿下は。腹黒いわねえ!私にその役目を何も言わずに押し付けるなんてちょっとおかしい気がするわ。
「マ、マリー……き、君はわ、私達の事を殿下に報告したりしないよなあ?ク、クラスメイトだもんなあ?」
「いえ、報告します。殿下からのご依頼ですから、断る事は出来ませんし。いつも言われていたじゃないですか?私はこのクラスにはそぐわない。お前なんてクラスの仲間じゃないって。今更クラスメイトだからなんて言われてもこちらも困惑を隠せませんわ」
とは言ったものの、きっと私は大した報告は出来ないだろう。だってきっと殿下は調べ終わっているんだ、このクラスの事を。これ以上いい所が見えないから切り捨てたんだと思う。ああ宣言されてもなお虐めてくる人なんてほとんどいないはずだもの。
これからどう繕おうが巻き返しは難しいと思います。クラスメイトの皆さんお可哀想ですが頑張ってくださいね。
ぱしゃっとインクを浴びせられる。最初の頃は遠慮をしてなのかインク壺からペンで弾き飛ばすだけだったのに最近ではインク壺をひっくり返して浴びせてくる。
「……」
せっかくお店のお嬢様に買っていただいた新品の白いブラウスに真っ黒な染みが広がった。良くもまあ毎日飽きないのだなと思うほど、数人の女子がかわりばんこにインクをかけてくる。そしてそれをみてニヤニヤしている男子たち。飽きないのかしら?
「成程、マリー嬢良く分かったよ。今年の一年生の上位クラスの出来がね。年々品位が下がっているとは思っていたが、これほどまでとは。やはり今年の一年から引き抜くのは下位からが良いようだね?」
そんな良く通る声が教室に響き、廊下から王太子殿下が数人の側近と共に覗き込んでいた。
「ひっ……!で、殿下!ご、ご機嫌麗しゅう……!」
いち早く挨拶をした生徒もいたが、怒りを滲ませた殿下の前に
「ご機嫌は大変麗しくない、最悪な気分だよ。分かるね?」
と、一蹴されてしまった。
「マリー嬢。何も説明せずに送り込んで申し訳なかったね」
「いえ、殿下のお役に立てたのなら」
椅子から立ち上がり頭を下げる。でも流石に嫌なものは嫌でしたけれど?
「クラス全員見込みなしとは実に嘆かわしいね。マリー嬢、これからは虐めの全てをきっちり私に報告して欲しい。私からの依頼だよ?今までの様に黙ってやられっぱなしはなしだ」
「……ご依頼とあらば、謹んで」
「口止めや脅しも全部報告してもらうよ」
「畏まりました」
私の返事を聞き終えると、殿下は一つ頷いて去ってゆく。「あのインク壺をマリーに引っ掛けたのは」「ルーザ伯爵家の娘です。兄が3年生におり殿下の側近候補でした」「外しておいてくれ。妹の蛮行に気づかぬ者は不合格だろう」「わかりました」
そんな声まで聞こえて来たので、ルーザ伯爵令嬢はインク壺を持ったまま真っ青な顔でブルブル震えている。
「ま、ま、まさか、あ、あなた……で、殿下に報告なんてし、しないわよね」
「しないもなにも。殿下はしっかり見ていかれましたよ。私が何も言わなくてもね」
「う、うそ……うそ……わ、私、お、お兄様と、お父様から叱られてしまう……」
そりゃあこっぴどく叱られるでしょうね。他人にインクをかけて叱られない方が不思議だと思うけれど。
「マ、マリー……さん、あ、あの今までの事は……ほ、報告はし、しないです、よね?」
別の女子が恐る恐る聞いてきますが、この子も私にインクをかけて笑っていた子ですね。
「今までの事は報告しませんが、殿下はご存じなのではないでしょうか?」
「ひいっ!」
きっとクラスが酷いと知って私を送り込んだんだわ、あの王太子殿下は。腹黒いわねえ!私にその役目を何も言わずに押し付けるなんてちょっとおかしい気がするわ。
「マ、マリー……き、君はわ、私達の事を殿下に報告したりしないよなあ?ク、クラスメイトだもんなあ?」
「いえ、報告します。殿下からのご依頼ですから、断る事は出来ませんし。いつも言われていたじゃないですか?私はこのクラスにはそぐわない。お前なんてクラスの仲間じゃないって。今更クラスメイトだからなんて言われてもこちらも困惑を隠せませんわ」
とは言ったものの、きっと私は大した報告は出来ないだろう。だってきっと殿下は調べ終わっているんだ、このクラスの事を。これ以上いい所が見えないから切り捨てたんだと思う。ああ宣言されてもなお虐めてくる人なんてほとんどいないはずだもの。
これからどう繕おうが巻き返しは難しいと思います。クラスメイトの皆さんお可哀想ですが頑張ってくださいね。
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