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27 レベルアップは自分で

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「マリー」

 女子寮の前が何かキラキラ輝きで満ちているわ。私は同室のイザベラを正面から見ます。

「イザベラ、私は幼少の頃からの訓練のお陰で、窓から学園へ登校できるようになったんです」

「そ、そうだったのね。じゃあ今日はバラバラで登校しましょう」

「ええ、お昼休みに中庭で一緒にご飯を食べましょう、では」

 私は少々はしたないですが、窓枠に足をかけ、隣の木にぽーんと飛び移りました。急いで学園へ行きましょう。女子寮の前で待っていた殿下とその側近2名が影からの報告を受けて

「なんだとー!?」

「窓ー!?」

 なんて言っていても私の知った事ではありません。とにかく私はさっさと学園へ着いて教室へ引っ込む事です。そうすれば学年の違う殿下とお話せずに済みます。

「マリーさん、貴女。最近殿下と懇意にされておるようですわね」

「いいえ、しておりません」

「嘘おっしゃい!今日も朝から殿下が寮の前で貴女を待っていたじゃありませんか!」

「そうだったんですか?存じ上げませんね」

「うううっ……」

 お持ちになった扇を真っ二つに折ってしまいそうなほど握り締めているご令嬢はミザリー・サウラ侯爵令嬢です。コリアンナ様の取り巻き(左)と言った所の方です。中々の大物が出てきましたね、という気分ですが、それって殿下の作戦が上手く行っているということです。いやだわ……薬草をもっと受け取らないと割に合わないじゃないですか。

「と、とにかく!殿下の婚約者はコリアンナ様なのよ!?貴女の出る幕なんて一つもないのですわ!」

「出るつもりは全くありませんけれど、殿下の方がやってくるんです。ミザリー様から殿下にお伝え願えますか?私の事はお気になさらず、と」

 もっと強く言ってくださって結構ですのよ?邪魔ですとか、ウザイですとかもありです。

「え?ええ、ええ!私からしっかりお伝えしておきますわ!」

 これで少しは静かになってくれるかしら。そしてコリアンナ様の目がこちらに向かなくなってくれればいいのですけれど。まあそれは無理でしょうか。王太子殿下は私をダシにしてコリアンナ様との婚約解消を狙っていらっしゃいますものね。

 ミザリー様は小走りにコリアンナ様の元に駆けてゆき、何やら耳打ちで会話をされていますが、それでは完全にコリアンナ様の指示で動いていると言っているようなもの。コリアンナ様自体も隠す気もないのかもしれませんがいいのでしょうか。

 コリアンナ様は朝からとても時間がかかったであろうくるくるした巻き髪を複雑に編み上げて、満足そうに微笑んでいらっしゃいますが、大丈夫なのでしょうか。
 彼女は授業中も教授のお話は特に聞いておられないようで、ミザリー様達とずっと小声でおしゃべりをしていらっしゃいますし、ノートも白紙です。それでいてテストは高得点で……本当に良いのでしょうかという生活を送ってらっしゃるように見えます。

「人の事は人の事。自分の事は自分の事かしら。人のレベルアップは私ではどうしようもない物ですものね」

 お母様も言っていらっしゃいました。レベルは自分で上げるしかないと。どんなに手伝ってくれる方がいても結局は自分でやるしかないものなのだから、と。

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