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39 え、嫌です。
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「そういう事だ!何も心配することはないぞ、セルウィッチ公爵!心配するならコリアンナ嬢のこれからを憂うがいい。そして彼女同様にマリーを貶める事に加担した者達もだ。言い逃れは出来ぬと思え!」
「ひっ!」
あちこちから短い悲鳴が聞こえて来ましたが、なら最初からつまらない虐めなんてしない方が良いのですよね。私が庇って差し上げねばならない方もいらっしゃいませんし。
「ではマリー!こちらへ。私の新しい婚約者として皆に紹介したい!」
壇上から王太子のジュリアン様がキラキラした笑顔で手を差し伸べてきます。
「え、嫌です」
「は」
「ですから、嫌です。私は王太子殿下の婚約者になんてなりたくありません」
何勝手に言っているのでしょうか?あの方は。
「だよねーーー!」
あっはっは!と大笑いしているのはお母様。ちょっと、品がないですわよ!その隣で笑いを堪えているのがお父様。もうそこまでお腹を抱えているなら笑ってしまわれてはいかがでしょうか!?
「マ、マルグリット様!?この話は通していただけたのでは!!??」
殿下は青くなったり赤くなったりしながらお母様に問いかけます。
「え?いやいや、殿下ぁ。殿下のお願いは「この夜会にマリーを連れてくる事」でしてよ?婚約者になるとは誰も言ってませんし!」
「そ、そんな馬鹿な!」
馬鹿なって。まあきっとお母様も思わせぶりな態度を取ったのでしょうが、書類も何もなく口約束だけを信じる方もどうかと思います。しかもそれが将来のこの国の国王となられる方とは。私達はこの国で暮らしていて良いのでしょうか……。
「マ、マリー……わ、私の婚約者だよ。将来は王妃になれるんだよ……?」
「王妃様になりたいと思った事はございませんし、王太子殿下の事をお慕い申し上げた事はございませんので、お断りさせていただきます」
私の事を信じられないものを見るような目で見ていらっしゃる方が見受けられますが、突然未来の王妃になれと言われて、はいなります。なんて言える人は無責任か未来の事を想像できない頭の中身が残念な方なのではないかと思うのですけれど。
「いや……しかしそれでは困る……マリーならきっと王妃になっても立派にやっていけるはず。き、君のレベルアップはこの国の為にしていたんじゃないのか……?そんなに必死になって自分を鍛えて」
「自分の為ですけれど……自分の為にやって結果として良いものが国に役立つ事もあるかもしれませんが、国の為にレベルアップしていたわけではありませんし」
地方の一子爵の娘のやる事ではありませんわよね?国の為のレベルアップなんて。そういうのは王族の方に頑張っていただきたいものですわ。私がため息交じりにお断りの言葉を重ねていると、今まで気配すら消していたようなアイザックさんがすっと横にやって来た。
「それに、このような夜会に招待しておきながら、エスコートもしないとは何事ですか?多分そちらのお断りを入れる令嬢に気づかれたくなくて彼女をエスコートしたのでしょうが、それはあまりにマリーさんに失礼と言うもの。それにマリーさんには一応婚約者がいますよ」
え、そうなんですか?知りませんでした。お父様……いえ、お父様では役に立たなそうな気がしますから、お母様の方を向くとにやりと笑っています。これは隠し婚約者がいるという事ですか!?
「嘘だ、マリー嬢は婚約者はいないと……」
「子供の頃の口約束だけですしね?正式なものは毎年申し込んでいるのですが、お返事をいただけていないのですよね。ですからマリーさんは忘れているのも仕方がないです。まあそれでも、約束は約束と言わせていただきましょう。それに私の方がマルグリッド様からもご承知おき頂いておりますし」
え、アイザックさん?アイザックさんが隠し婚約者だったんですか!?
「これでも5歳くらいの時は良く剣術ごっこを一緒にしたんですが、やっぱり全然覚えていらっしゃらないんですねえ、マリーさん。まあ私を含め全員マリーさんに勝てませんでしたが」
「わ、私を含めって……私、そんな小さな頃にたくさんの方々と交流がありましたっけ」
「……内緒です」
「えっ」
アイザックさんはウィンクをして教えてくれませんでしたが、この感じはきっとそうなんですね!?えええ、一体どういう事でしょうか!相変わらずお母様はニヤニヤしていらっしゃるし、これは本当の話なんでしょう。ちょっとめまいがしてきましたわ。
「という訳で、ジュリアン王太子殿下。マリー嬢への求婚は諦めて貰えますか?彼女の婚約者の一番近しいのはこのフレーゲル王国のアイザック・イーグ・フレーゲルなのですから」
フレーゲルは帝国を挟んだ北側に位置する鉱山をたくさん持った大きくて豊かな国ですわね。ええ、確かそこの第二王子様の名前がアイザックでしたね、ええ。何かで習って覚えましたね、ええ。
「ジュリアン殿はご存じなかったかもしれませんが、マリーさんはとても人気のあるご令嬢なのですよ?」
私も知りませんでしたわ。これっぽっちも!
「ひっ!」
あちこちから短い悲鳴が聞こえて来ましたが、なら最初からつまらない虐めなんてしない方が良いのですよね。私が庇って差し上げねばならない方もいらっしゃいませんし。
「ではマリー!こちらへ。私の新しい婚約者として皆に紹介したい!」
壇上から王太子のジュリアン様がキラキラした笑顔で手を差し伸べてきます。
「え、嫌です」
「は」
「ですから、嫌です。私は王太子殿下の婚約者になんてなりたくありません」
何勝手に言っているのでしょうか?あの方は。
「だよねーーー!」
あっはっは!と大笑いしているのはお母様。ちょっと、品がないですわよ!その隣で笑いを堪えているのがお父様。もうそこまでお腹を抱えているなら笑ってしまわれてはいかがでしょうか!?
「マ、マルグリット様!?この話は通していただけたのでは!!??」
殿下は青くなったり赤くなったりしながらお母様に問いかけます。
「え?いやいや、殿下ぁ。殿下のお願いは「この夜会にマリーを連れてくる事」でしてよ?婚約者になるとは誰も言ってませんし!」
「そ、そんな馬鹿な!」
馬鹿なって。まあきっとお母様も思わせぶりな態度を取ったのでしょうが、書類も何もなく口約束だけを信じる方もどうかと思います。しかもそれが将来のこの国の国王となられる方とは。私達はこの国で暮らしていて良いのでしょうか……。
「マ、マリー……わ、私の婚約者だよ。将来は王妃になれるんだよ……?」
「王妃様になりたいと思った事はございませんし、王太子殿下の事をお慕い申し上げた事はございませんので、お断りさせていただきます」
私の事を信じられないものを見るような目で見ていらっしゃる方が見受けられますが、突然未来の王妃になれと言われて、はいなります。なんて言える人は無責任か未来の事を想像できない頭の中身が残念な方なのではないかと思うのですけれど。
「いや……しかしそれでは困る……マリーならきっと王妃になっても立派にやっていけるはず。き、君のレベルアップはこの国の為にしていたんじゃないのか……?そんなに必死になって自分を鍛えて」
「自分の為ですけれど……自分の為にやって結果として良いものが国に役立つ事もあるかもしれませんが、国の為にレベルアップしていたわけではありませんし」
地方の一子爵の娘のやる事ではありませんわよね?国の為のレベルアップなんて。そういうのは王族の方に頑張っていただきたいものですわ。私がため息交じりにお断りの言葉を重ねていると、今まで気配すら消していたようなアイザックさんがすっと横にやって来た。
「それに、このような夜会に招待しておきながら、エスコートもしないとは何事ですか?多分そちらのお断りを入れる令嬢に気づかれたくなくて彼女をエスコートしたのでしょうが、それはあまりにマリーさんに失礼と言うもの。それにマリーさんには一応婚約者がいますよ」
え、そうなんですか?知りませんでした。お父様……いえ、お父様では役に立たなそうな気がしますから、お母様の方を向くとにやりと笑っています。これは隠し婚約者がいるという事ですか!?
「嘘だ、マリー嬢は婚約者はいないと……」
「子供の頃の口約束だけですしね?正式なものは毎年申し込んでいるのですが、お返事をいただけていないのですよね。ですからマリーさんは忘れているのも仕方がないです。まあそれでも、約束は約束と言わせていただきましょう。それに私の方がマルグリッド様からもご承知おき頂いておりますし」
え、アイザックさん?アイザックさんが隠し婚約者だったんですか!?
「これでも5歳くらいの時は良く剣術ごっこを一緒にしたんですが、やっぱり全然覚えていらっしゃらないんですねえ、マリーさん。まあ私を含め全員マリーさんに勝てませんでしたが」
「わ、私を含めって……私、そんな小さな頃にたくさんの方々と交流がありましたっけ」
「……内緒です」
「えっ」
アイザックさんはウィンクをして教えてくれませんでしたが、この感じはきっとそうなんですね!?えええ、一体どういう事でしょうか!相変わらずお母様はニヤニヤしていらっしゃるし、これは本当の話なんでしょう。ちょっとめまいがしてきましたわ。
「という訳で、ジュリアン王太子殿下。マリー嬢への求婚は諦めて貰えますか?彼女の婚約者の一番近しいのはこのフレーゲル王国のアイザック・イーグ・フレーゲルなのですから」
フレーゲルは帝国を挟んだ北側に位置する鉱山をたくさん持った大きくて豊かな国ですわね。ええ、確かそこの第二王子様の名前がアイザックでしたね、ええ。何かで習って覚えましたね、ええ。
「ジュリアン殿はご存じなかったかもしれませんが、マリーさんはとても人気のあるご令嬢なのですよ?」
私も知りませんでしたわ。これっぽっちも!
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