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7 見つからないよ

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「マークさん!」
「マーク! お前何するんだ」
「み、皆さん、私は大丈夫ですから……」

 運営は来なかったけれど、街の人達はいっぱい寄って来てくれて人の壁を作ってくれた。

「なんて奴だ」
「冒険者はこれだから」
「とんでもない野郎だ! 出てけ!」

 俺を殴ったプレイヤーキャラは旗色が悪いと逃げ去って行った……多分この事は人の口々に広がり、彼の悪行は運営にバレるだろう。それよりもっとヤバいのに目をつけられるんだよなあ……。

「凛莉師匠を殴りやがった。あの国宝級にかっこいい顔に触った……許せない。あいつの拳の皮を剥いてやろうぜ」
「ああ、いいねえ。剥こう、剥こう……」

 誰もいないはずの闇だまりの中から普通は聞こえない声がする。闇暗殺者の超聴覚系スキルをマックスで取って更に上乗せの極にしたときだけ聞こえる奴……声の主はサファイア君だな。もう一人手練れと楽しそうにお話をして……プレイヤーを追って消えて行った。プレイヤーは何か知らないけど暗闇で襲われて大怪我をしたりするんだろうな。大変だけれど、意味なくNPCに手を上げることは良くないことだと気が付いて欲しいものだ。

「大丈夫? マークさん」
「ええ、大丈夫ですよ。このくらいなら自分で治せますし」

 ふわっと治癒術を発動させて自分にかける。赤く塗った化粧も袖で拭い落とし、意志の力で腫れさせた頬は少しだけ戻しておく。

「気になる方がいらっしゃるので、見回ってきますね」
「無理をなさらず!」

 そうやってその場から離れ、あっちへうろうろこっちへうろうろしても凛莉師匠の恋人らしき人は現れなかったし、手掛かりも何も見つからなかった。街の人もプレイヤーもマークに向ける感情はいい人止まり。絶対恋人じゃない……。

「どうしよう……」

 歩き疲れて家に帰り休憩を取る。マークは絶対に初級治癒術師の仮面を外しちゃいけないから、迂闊なことは外で口にしない……というか、出来ない。

「一日で恋人が見つかる訳もない。マークは毎日街をウロウロしているんだから数日粘るしかないなあ」

 こういう発言も手前の窓がある部屋ではしない。奥の寝室でなら口から出る。不思議なのだが、その辺りはゲームの強制力を感じてしまう……舞台裏の出来事は絶対に漏らせないようになっているんだ。

「……俺が元々ゲームプレイヤーで、凛莉師匠の中に入っちゃったことを今ゲームしてるプレイヤーにも話せないようになってるな……」

 何度か街行くプレイヤーに話しかけようとしたが、声が詰まったり人がぶつかって来て中断されたりと偶然なのか必然なのかとにかく無理なものは無理だった。

「明日も探してみよう……」

 とりあえず夜が来たので眠ることにした。むずむずしてぽわんと熱を帯びているような体を無理やり毛布で包んで丸くなる。その熱のせいか俺が元の体に戻るための情報集めの聞き込みなんかをした方が良いことをすっかり忘れていた……。


 
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