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12 かなり頭の悪い自己陶酔

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「極会議で着た服は洗っておきますので持って行きます」
「……吸うな」
「いえ、吸いますけど? ああ生きてるって素晴らしい。で、ないのですが使用済みパンツはどこに?」
「捨てた」
「ゴミ箱は既に漁りましたが、ありませんでしたけど?」

 サファイア君は一流のストーカーだな……。面倒くさいので去り際に一言。

「穿いてない」
「きぃゃあああああ!」

 倒れて静かになったので、何よりだった。いや、穿いてるからね、普通のパンツを。そして穿いたまま帰るから。まあでも過去の凛莉師匠はパンツも穿き替えて戻っていたなぁ。それくらい闇ギルドとの繋がりを消すために慎重だったわけだ。俺も次からはパンツも穿き替えよう。でももうマークの服を着てしまったから今日はこのまま。部屋に置いて行った眼鏡を持ち、秘密の通路を抜け、街にある小さな家に帰る。

「そういえば凛莉師匠の恋人探しで俺が元に戻る方法探すの忘れてた……」

 ベッドの上に座り込んで、ふと目を上げると大きな姿見の中に凄くかっこいい理想の男がいる。顔も良ければ姿も良い、背も高いし声もいい声で地位も高いし実力も折り紙付き……誰もが憧れるマラカイト・凛莉がこちらをみている。目の端が自分にだけ分かるくらい赤くなっていて、たまった欲求不満が爆発しそうになっている。

「……もう少し、もう少しくらい……」

 不安よりこの凄い状況を喜んでしまっている自分がいる。自分の見た目がこんなイケメンになることなんて夢以外である訳がない。いや、確かにVRの世界なら好きに外見は作れたけれど、やっぱりマラカイト・凛莉は別格だ。他そこに居るだけで辺りを冷え込ませるような殺気があるかと思えばいるのかいないのか分からないくらい存在感が消えている。

「はあ、かっこいいな、凛莉師匠は……」

 自分が映った姿見にため息をついてしまう。こんなかっこいい人の中身が残念な自分であっていいはずがないんだけれど、あともう少しこの姿を堪能したい。
 何も変わらない平凡でただ生きる為に生きているような現実より、整った容姿で抜きん出た実力を兼ね備えた師匠でいることを少しくらい望んでも許されるのではないだろうかと思ってしまう。

「なんかこの顔と体なら……自分を見ながら気持ち良くなれちゃうのでは……」

 かなり頭の悪い自己陶酔の台詞が出たような気がするけれど、とりあえず反省してベッドに潜り込んだ。

「……気の、せいか」

 何か、何か記憶の一欠片が頭の隅をよぎった気がしたけれど、とりあえず無視して眠りにつく。明日には凛莉師匠の恋人を見つけられるだろうか?

 
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