32 / 134
32 大きい……!
しおりを挟む「だ、駄目ですうっアルバルストさまぁ! け、結婚前にぃ、そんなことをしてはしゅ、醜聞になりますぅ!」
「分かっているっ! だが、止められん、くそッやはり私が馬車から飛び降り……」
「もっと駄目ですーっ! 興奮状態のあなたが別の人に襲い掛かる方がもっと駄目ですーっ! それならまだ、アウラリス様の方がなんとかなりますぅー!」
ああ、そういえばそうだっけ……オメガのヒートに当てられたアルファは性的興奮状態になって誰かに襲いかかりたくなるんだっけ……そうか、そうだね、私ならどのみち近いうちに結婚するんだ、少し順序が前後した所でどうにかなるよね?
「アロウさま、私は……あなたを受け入れます……」
「アウリー!!」
「煽るようなこと言わないで下さいぃいいいーー!」
レンスンが叫んでいる……そんなつもりじゃなかったけれど、それが一番良いんじゃないかって思ったんだ。
「急いでディーズ邸へーーっ」
「も、もう少し、もう少しですーーっ」
御者のサムの必死の叫び声が聞こえ、車輪の音はとても大きく、揺れも激しい。事故を起こさないギリギリの速度で走っているんだとは思う……。
「ア、アウリー……逃げて」
「どこへ逃げるっていうんですっ! ヒート中のオメガを外に出したらそれこそ大変なことになりますよぉっ」
「う、うう……っ」
ああ、そうか……私はヒートを起こしたのか。しかも初めてのヒートだ……初めては凄く強烈だと習った気がする……だからアロウ様がこんな風におかしくなってしまったのか……とても申し訳ない。
「アルバルストさまぁっもう少し耐えてぇ~!!」
レンスンは必死で私とアロウ様の間に体を捩じ込もうとしてくるが、力の差は歴然で、片手で押し返されている。
「む、無理だ、もう……無理だぁっああっアウリー、アウリーっ!」
「アロウ……様……」
まるで獣のような息遣いのアロウ様が目の前まで迫ってきている。私は今からこの人に抱かれるんだろう。きっと乱暴にこんな狭い馬車の中で……しかも泣いて鼻水まみれのレンスンと口から血を流して気絶しているヨキシャの目の前で衣服を剥ぎ取られる。
ぞくりと背中に何かが駆け抜ける。でも不思議なことにそれは恐怖じゃない気がしている。何だろう、おかしいな……でもこの人ならいい気がするんだ。この人になら一刻乱暴に扱われても大丈夫。だってこの先、必ず私を大切にしてくれるって知っているから、少し熱に浮かされていたって大丈夫なんだ。むしろ今、苦しんで耐えているこの人を助けてあげられるのは私しかいない。だから大丈夫なんだ。
「アロウ様……きて……」
「アウリーーッ!!」
馬車はディーズ邸の広い敷地の中に飛び込んだようではあった。
「門を閉めてーっ! 人を、人を呼んでっアウラリス様がヒートですぅ!!」
御者の叫び声が遠くで聞こえた気がする。でももうアロウ様は目の前だ……もう理性が振り切れたようなアロウ様は履いていたトラウザーズのベルトに手をかけ、ズルリと脱ぎ下げた。
「うわ」
最初に声を上げたのはレンスンだった。そして私も絶句したのだ。
「で、でかい」
何もかもの思考を吹っ飛ばしてその感想が口から溢れでた。
「な、なにそれ……腕? あ、足……?!」
レンスンが真っ青な顔でとんでもない例えをする。でもそれくらいでかいんだ……長さ、大きさ……こ、こんなの初めてみた。え? 第三の足?
「え」
「あ……」
流石に現れたアロウ様のアレの大きさに、ぽかんと間抜けな顔を晒してしまう。もう一度確認して、それからアロウ様の顔を見る……本当に、コレあなたの? とそんな目で見てしまったかもしれない。
「あ……」
「アロウ様っ?!」
アロウ様の顔からとんでもない速度で色が消えていく。真っ赤だったのが、真っ青を通り越して白くなって……なんだか土気色に変わっていく。
「アロウ様っ?!」
大きな体からふらりと揺れたと思うとちょうど急停止した馬車の慣性も加わって、後ろに倒れた。
ゴツン! とものすごい音がして後頭部を思いっきり打ちつけたアロウ様はそのまま動かなく……気を失っていた。
「アロウ様っ! アロウ様っ?!」
大慌てで声をかけても完全に白目だ……!
「アウラリス様っ! ご無事ですかぁああっ」
「アウラリスさまぁあっ!!」
家から使用人が飛び出してきて、馬車の扉を開ける。とりあえず、制服のジャケットを脱いでアロウ様の大事な所を隠した。
「そ、それにしても……」
つい、横目で見てしまう……今は割と大人しくなっているけれど、なんか……凄かった、凄かった……。
「あ、アルバルスト様が大きすぎて婚約破棄されたって、もしかして股間のアレのこと……?」
レンスンの呟きに、流石の私もヒュッと喉が鳴った。そ、そうか……なるほどな……アロウ様の元婚約者は小柄な方だったと聞いている。ならばアレは無理か……? 優秀なアロウ様が婚約破棄なんてあり得ないと思っていたけれど、それなら納得できる。
そう腑に落ちると同時に……え、アレを突っ込まれるの……? 私? そこに考えが至って目の前が暗くなった。
「アウラリスさまーーっ!」
レンスンの声が遠くなる。将来の閨事情を想像したせいじゃなくて、初ヒートで疲れたから気を失ったんだ、絶対そう。
1,951
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです
天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。
その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。
元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。
代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる