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62 おやすみなさい
しおりを挟む鮫島君を友達だと呼んだ事について皆にに聞かれるだろうと、色々言い訳やら覚悟やらを考え、決め込んだけれど誰一人として聞いて来なかった。
ヨキシャとレンスンすら何も聞いてこない……多分、王城から我が家に戻ってくる時、二人はモンティラスティ王女殿下とキリアスラル殿下が乗った馬車に同乗させていただいて帰ってきたので、馬車の中で何か言われたに違いない。
「流石に我等三人が同じ馬車に乗ると馬が悲鳴を上げますから」
「申し訳ない、フィーラの技術者にもこれ以上丈夫な車輪はないと言われまして……」
「ははは! フィーラでもそんな感じですよ!」
父上は素早く我が家から馬車を持ってこさせて、三台に分乗して帰ってきたのだ。
突然やってきた高貴な来客に、我が家の使用人達は右往左往の大慌てで出迎えの用意をしてくれたが、抜かりがなかった。
「おお! これはモクト工芸のソファだな。座っても?」
「勿論ですとも。もし、勢いで何か壊れてもお気になさらず! いつものことですので」
「ははは! それはありがたい。アルバの奴、大層やらかしたのだな?」
「ちょうど入れ替えたいと思っていた所でしたので逆にありがたいですよ。私もフィーラのモクト工芸の家具は気に入りまして。丈夫なのに品があり、細工も素晴らしい」
「それは嬉しいな。もう少し曲線を活かしたエレレス工藝の家具も良いぞ。あれは軽くもあるから、2.3見繕って送って良いかな?」
「おお! ありがとうございます」
私とヨキシャとレンスンが並んで座ってもまだまだ幅が余るソファにキリアスラル殿下が座ると1人用に見える……流石です。
「はは、流石に軋みもせんな。ここで眠れそうだ」
「キリアス様ー! 客間にベッドありますってば。一番良い部屋はこちらですよ」
「モンティ様はこちらですよー」
何故かヨキシャとレンスンがお二人を案内している。色々お話しして仲良くなったみたいだ……私より打ち解けているのはちょっと嫉妬だな。
「なんだなんだ、小粒どもはアウラリスの家に詳しいな!」
「そりゃそうですよー! 住まわせて貰ってますから!」
「朝ご飯も美味しいですよー! こーんなでっかいソーセージ出るんです!」
レンスン、そんな腕みたいなソーセージは出ないよ……。
「おお! そりゃ楽しみだなー!」
料理番達に怒られても知らないよ! そんな様子を家に着き、眺めていたら急に眠気が押し寄せて来た。
「アウリー、疲れたね。今日はもう寝た方が良いよ」
「ん……あ、大丈夫……」
そう言ってみたものの、安心したせいもあり、瞼がゆるゆると下がって行く。
「もう寝なさい」
「……でも……」
「駄目だ。部屋へ行くよ」
「でも、あの……皆さんに……」
「兄上と姉上と話したい事もたくさんあるんだ。アウリーはまた明日だ」
「でも、」
「行くよ」
有無を言わさずひょいっと抱き上げられる。ちょっと嬉しいなと思ったような気がしたけれど、その後の記憶はなかった……多分すぐ寝てしまったんだと思う。
「なんて可愛い寝顔……これは姉上にも兄上にも見せられない! 部屋に早く連れていかねば」
「おー?! どれどれぇ、可愛い所を見せてくれ?」
「姉上、駄目です! 寝かせてきます!」
夢現でアロウ様の声が聞こえて来たような気がしたけれど、安心してフワフワした夢の中に飛び込んで行ってしまった。
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