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猫になった

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「ふふ、ボク達の美しさに皆見惚れているよ、ナリン」

「ああ、そうだね。でも君の美しさを皆に見せるなんて勿体無いよ。ボクだけのものにしておきたいな、セリン」

「ねーまだぁ?初めていいの~?」

 二人の世界にレイリーの声が突き刺さる。同じタイミング、同じ角度で眉を顰める双子。

「ははぁ?ボク達が羨ましいんだね?戦車チャリオットは!」

「残念だけど、きみじゃあボク達には不釣り合いだよ、戦車チャリオット

 少し怒りを滲ませた双子の声は、レイリーの中にはちっとも染み込まず、表面を滑って落ちた。

「はぁ?何言ってんの?可愛いっつーのはユウリさんみたいな人の事で、お前らみたいなケツの青いガキなんてお呼びじゃねーんだよ。足りないのよ、色気が!い・ろ・け!分かるぅ?」

「「レイリーー!殺すッ!」」

 火蓋は切って落とされた。


 双子は対になった短剣を使う。一矢乱れぬ攻撃で、四本の刃が同時に振り下ろされるが、レイリーには当たらない。
 それを上回るスピードで全て避けるからだ。
 しかし、合間に繰り出すレイリーの爪も届かない。二人がかりて防御する隙をつけないのだ。

「このままではレイリーが不利だね。チーターの持久力のなさは有名だから、先にレイリーのスピードが落ちる……二人とも何をしている?」

「「え?」」

 悠里と睦月はオーグの近くにしゃがみ込んで地面に小枝で絵を描いて遊んでいた。
 ちょうど二人がしゃがみ込んでいる場所は砂になっており、描きやすいようだ。

「だからね、昔のアニメにあったでしょう?動物型のロボが前足の所にこう言うブレードつけるやつ」

 下手くそな犬の前足に三角形の何かが付いている。

「ああ!あったあった。えーと、高周波ブレード!」

「そうそう!高速振動してるってやつ。でさ、緑に光るんだよ」

「あったー!かっこいいよな!」

 ブーン!ズガガン!身振り手振りで盛り上がっている。

「……ニッポンとかいう国の話か?」

「そうなんだ!」

 にこっと笑う悠里にオーグも釣られて笑顔になる。

「それでね、脳波コントロールのファンネルがねー」

「魔法か?」

「あー、そうだね。こうね、念じれば……」

 グランベルの神獣3人は地面の落書きに夢中になって、レイリーの事は何も見ていなかった。

「ナリン」「セリン」

「「さあ、可愛いチーターちゃん」」

 本能が告げた危機感に従って、レイリーは全力で飛び退る。しかし、目に見えぬ脅威は追いすがり、レイリーの足首を掴んだ。

 
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