【完結】良い子な邪神に転生した俺は強すぎて封印不可?頑張って封印されます!

鏑木 うりこ

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72 元の国では2

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 邪神の話は中々集まらなかった。関りの深い神殿関係者は全て消えていたからだ。

「……ルベルトへ……レイシャルに聞くしかあるまい」

 悔しいとか自らの面子を気にしている場合ではなかった。国王が病に倒れたのだ。いや、国中が病んでいた。暖かくなり、風邪らしい病はなりを潜めたが、次は腹痛が流行りだした。風邪が治りきらず、体力の落ちた子供や老人から新しい病を得て、帰らぬ人となる。
 医者や薬屋が自らの限界を超えて働き続け、倒れ始める。

「何か栄養のある消化に良い物を……」

「……何も……売っていないわ……」

 パンですら買うのが困難になって来て、取り合いが起こる始末。野菜や果物はほとんど見かけなくなっている。

「ちくしょう!ネズミの野郎!!」

 貯蔵してある芋や豆、小麦をネズミがかじる。キキッと小馬鹿にしたようにネズミは嗤い、追いかけた猫が返り討ちに合うという現象が目撃され始める。

「ウチの猫もやられた……」

 一匹のネズミを追いかけて暗がりに入り込むと何とそこに何十匹ものネズミが待ち構えている。猫は威嚇するが、暗がりのネズミ達は恐れることなく、大きな猫に飛び掛かり……猫の数はどんどん減っている。そしてまだ気が付いている者は少ないが、ネズミはどんどん大きな獲物に襲い掛かろうとしているのだ、人間と言う大きな獲物に。


 日、一日と国は疲弊していく。王太子が心待ちにしていた手紙は、彼がクビにした竜騎士の一人が携えてやってきた。

「……人が死ぬのはあの方の本意ではありませぬ故」

「……」


 そうして王太子は事の真実を知る事になる。

「この地は元々神より愛されし地であったのに、あの邪神を追い出した事で全ての神から見放されたと」

 竜騎士は無言で頷く。彼とてこの瘴気の中で腐っていく故郷の様子を目にするのは辛い。

「神から見放され、闇や病気が押し寄せてきているという事か」

「あの方がいるだけで魔物たちは畏れて寄って来ませんでした。その脅威が去ったのです。喜んで押し寄せている……他の邪神がこの無防備な地を食い荒らしているんです」

 疲れた男はそれでも王太子だった。

「どうすればこの国は蘇る?」

「失った神の恩寵を得るのは難しいと思います」

「あの邪神はルベルトで大切に扱われておるのだったな」

「ええ、貧しかったルベルトが変わったのはあの方のお陰です」

「この国に戻る事は……ないだろうな」

「酷く傷ついていらっしゃいましたから」

 そして、病床の父に代わり決断を下す。

「わが国民を受け入れてくれぬかと、レイシャルにすがりたい。書状を届けてくれないか?」

「謹んで承りたく思います」


 王太子は無能な男ではなかった。ただ、絶対悪だと思った邪神が訳ありだっただけだ。普通ならそれは正しい行為であったに違いない。国の脅威を無くしたという手柄も欲しかったのかもしれないが、それでも無能な男ではなかった。

「……父上、王位を譲って下さい」

「何を……言っているのじゃ……?」

「父上は権力から降り、母上とルベルトにて静養が必要です。レイシャルが受け入れてくれます」

 突然言われ現国王は困惑したが、息子の決意した悲しい目を見て頷けなかった。

「王妃達はレイシャルの元に送ろう。ワシはここに残る、お前こそレイシャルの元へ行け」

 全ての責任を背負って滅びゆく国と命運を共にしようと決意した息子を置いてはいけない。先の短い己よりやり直せる息子を、王として父として責務を全うしたいと譲らなかった。

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