【完結】良い子な邪神に転生した俺は強すぎて封印不可?頑張って封印されます!

鏑木 うりこ

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71 元の国では

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「なんで……」

 冬は去ったのに、人々は絶望していた。暖かくなり、芽吹くはずの緑が茶色に枯れている。ぽかぽかと陽気が気持ちいはずなのに、うすら寒い。

「キキッ……」「チチッ!」

「気持ち悪い!」

 暗がりからこちらを見ているのはネズミ達だ。冬の寒さを乗り越えた獣たちは増え始める。

「種を撒いても芽が出ません!」

「こっちは水浸しで流れちまった!」

 雨が全く降らない地域と長雨が続く地域がある。

「ネズミに全部掘り起こされちまったよ……」

「どうなってるんだ」

 農民たちは途方に暮れ、畑道具を投げ捨てる者も現れる。


「たっかいねえ……」

「しょうがねえだろう、物がこねえんだ」

 王都にあったいくつもの商会が畳んで別へ移っていく。

「この国での商売はやってけないんだ……すまん、皆」

「どちらへ移動されるのですか?」

 今日も大きめの商会が一つ王都の店を出ていく。

「……ルベルトだよ。少し時期を逃したけれど、こっちよりマシだ」

「ルベルト……」

 引っ越しの大きな馬車や荷車がガラガラと門を出て行った。

「ルード商会も閉まったのかい……」

「寂しくなるねえ……」

 街の人々は底知れぬ不安をいつも抱えている。


「繁盛しているのは葬儀屋だけだよ……」

 今日も近くで誰か亡くなったのか、悲しみの列が途絶えることはない。



「何故だ!!」

 顔色は死人のように悪い王太子は机を殴りつけるも状況が改善する事はない。

「もしかしてですが、追い出された事を逆恨みした邪神の呪いでは……」

「そうか!それだ!小僧のようなふりをして恐ろしい、流石は邪神と言わざるを得ないな!」

 王太子が納得できる答えを導いたのに、すぐさま否定の声が出てしまう。

「それは無いでしょうな」

「何故!」

「かの邪神は今ルベルトにいるそうで、レイシャル様の元、平穏に暮らしているそうですよ」

「は?レイシャル?ルベルトだと……?!」

「ええ」

 王太子に意見したのは邪神擁護派の貴族だった。

「あの極寒の貧国が最近何かと話題に上るので、人をやって調べさせました。ルーチェ様……邪神はルベルト王女ミレニア様と元第二王子のレイシャル様に庇護を求め、了承され移り住んだのです」

「ば、馬鹿な!邪神を迎え入れる国がある訳が!レイシャルは阿呆か!」

「しかし現にルベルトはルーチェ様……邪神を受け入れました。それからです、あの国があり得ない発展をしたのは。可愛い物ですよ、マンドラは」

 まるで見て来たようにそう呟く貴族の顔は明るい。この国の人間は一様に暗く沈んでいると言うのに。

「そんなはずは、そんな馬鹿な事はあるはずがない!邪神だぞ!」

「あの方はただの邪神にあらず。そこをお間違えになったのが殿下、あなたの失策ですよ。さてあとは自分でお考え下さい、私はこれで失礼させていただきます」

 一礼をして、その貴族は王太子の前を辞した。その足でそのまま国を出るだろう。

「殿下……」

「私は……私は間違っていたのか……?あの邪神はただの邪神ではないと?どういう事なんだ……?」

 その答えを探さなければならない、しかも早急に。そうでなければこの国には暗い未来しか残っていないように感じた。



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