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78 人は変わる
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それでも人は慣れてしまう、その豊かさに。ルーチェ様がこのルベルトへやって来てからもう10年も過ぎれば本当のルベルトを知らない子供達が大人へ変わってゆく。
「邪神排除すべき!」「あの邪神がいなくなればルベルトはもっと栄える!」「邪神を擁護する神殿は要らない!」
ソフィーティア教とか言う新興宗教が南から入ってきて、邪神を排除しろと騒ぎ出す。
「マンドラが増えすぎています!あいつらどこにでも生えて、マンドラ被害が拡大しています、処分してください!」
「アレを虐めるからでしょう!それにマンドラは氷魔法で冷やせば球根になって休眠します。増えた分は休眠させると砂糖協会から達しがあったのをご存じないのか!」
「わにゃんが強すぎて飼育が出来ません」
「どうしてあれらより強い人間を用意できないのに無許可で飼うのですか!そちらの方が違反です、すぐ取り締まります!」
「高い金を払って買った虹色羊が偽もんだった!」
「虹色羊は冬しか虹毛をつけません!それにあの羊は許可なく売買できないものです!」
「子供の神聖力の暴走!?」「働かせすぎて死んだ!?」
役所は常に忙しく、違法取引も後を絶たない。
「儲かりすぎると闇売買が増えてしまいますね……」
「本当のルベルトを知らない子供達がこのまま大きくなって、不安しか残りません」
レフィは13歳になっている。まだまだ子供っぽく読む本は絵本ばかりで、魔法の一つも使えない。
「……あと、2年……」
レイシャルとミレニアは頭を抱える。間違いなくルーチェは封印されてもこの地を助けて欲しいとそれぞれの眷属たちに頼むだろうし、ルーチェを封じた地に他の邪神は寄りたがらないだろう。神の恵みも降り続けるだろうけれど、人は、人間は変わってしまうかもしれない。
「お父様、お母様。私も精いっぱいお勉強します」
10歳になったミシェルは神童と呼ばれるほど立派な少年だ。全てにおいて王太子としての力を兼ね備えている。ミレニアの美貌を引き継ぎ、レイシャルの聖騎士としての力も引いていた。
「それに比べて……」
貴族の声は耳障りだ。古くからのルベルト貴族の公爵、侯爵は知っているので何も言わないが、伯爵以下は常にその話題でざわざわとうるさい。
「おとうさま、しんでんへ行って来てよろしいですか?」
「ああ、ルーチェ様にご挨拶に行っておいで」
「はい、ありがとうございます」
表立って言う者はいない。だが、レフィメントは気が付いている。
「ぼくは、第一おうじだけど、ミシェルのほうが王様にふさわしい」
ミシェルはそんなことは言わない。
「お兄様が次期王太子です。私はお兄様を補佐するためにいるんですよ!」
心からそう言っているのは知っている。でも周りの大人はそう思っていない事に鈍いレフィメントですら気が付いてしまっている。
「やっぱりミシェル様だよ、お父様もそう言っていたもん。仲良くするならミシェル様」
「俺もそう言われた。レフィメント様じゃ愚鈍な王にしかならないって」
「泥船に乗りたくないってお母様が……」
親を映す鏡のような子供達の声が、耳に響いて痛い。なんとか耳を塞ぎ、神殿に急ぎルーチェに飛びつくレフィメント。
「ルーチェ様、僕は愚鈍な王になるのでしょうか?」
でもこの質問はしてはいけなかったとレフィメントは泣きそうになった。大好きな人の金の瞳が曇ってしまうからだ。
「そんなことはないよ、レフィ。俺のせいでそんなことを言われているんだね……ごめん、君の運命を捻じ曲げた俺を許して」
「いいえ!ルーチェさまはなにも悪くないです!ぼくがダメだからいけないのです!」
でも、お月様みたいな目はどんどん雲がかかってしまう。
「違うよ、レフィ。悪いのは全部俺。君は全然ダメな子なんかじゃないのに……ごめんね、レフィ……」
ぎゅっと抱きしめてくれてるのに、とても悲しかった。何故か嫌いなセラフィス教皇も今日にいたっては現れず、ルーチェを慰めてくれる人はいない。
「ごめんね、ごめんね、ルーチェちゃん。ぼく、ルーチェちゃんを困らせたかった訳じゃないの!」
「分かってるよ、レフィ。でも君が謝る必要なんて何もないんだ……」
泣くことも謝る事も出来ずにただぎゅっと抱き締めているしかできなくて、レフィメントはとても悲しかった。
「邪神排除すべき!」「あの邪神がいなくなればルベルトはもっと栄える!」「邪神を擁護する神殿は要らない!」
ソフィーティア教とか言う新興宗教が南から入ってきて、邪神を排除しろと騒ぎ出す。
「マンドラが増えすぎています!あいつらどこにでも生えて、マンドラ被害が拡大しています、処分してください!」
「アレを虐めるからでしょう!それにマンドラは氷魔法で冷やせば球根になって休眠します。増えた分は休眠させると砂糖協会から達しがあったのをご存じないのか!」
「わにゃんが強すぎて飼育が出来ません」
「どうしてあれらより強い人間を用意できないのに無許可で飼うのですか!そちらの方が違反です、すぐ取り締まります!」
「高い金を払って買った虹色羊が偽もんだった!」
「虹色羊は冬しか虹毛をつけません!それにあの羊は許可なく売買できないものです!」
「子供の神聖力の暴走!?」「働かせすぎて死んだ!?」
役所は常に忙しく、違法取引も後を絶たない。
「儲かりすぎると闇売買が増えてしまいますね……」
「本当のルベルトを知らない子供達がこのまま大きくなって、不安しか残りません」
レフィは13歳になっている。まだまだ子供っぽく読む本は絵本ばかりで、魔法の一つも使えない。
「……あと、2年……」
レイシャルとミレニアは頭を抱える。間違いなくルーチェは封印されてもこの地を助けて欲しいとそれぞれの眷属たちに頼むだろうし、ルーチェを封じた地に他の邪神は寄りたがらないだろう。神の恵みも降り続けるだろうけれど、人は、人間は変わってしまうかもしれない。
「お父様、お母様。私も精いっぱいお勉強します」
10歳になったミシェルは神童と呼ばれるほど立派な少年だ。全てにおいて王太子としての力を兼ね備えている。ミレニアの美貌を引き継ぎ、レイシャルの聖騎士としての力も引いていた。
「それに比べて……」
貴族の声は耳障りだ。古くからのルベルト貴族の公爵、侯爵は知っているので何も言わないが、伯爵以下は常にその話題でざわざわとうるさい。
「おとうさま、しんでんへ行って来てよろしいですか?」
「ああ、ルーチェ様にご挨拶に行っておいで」
「はい、ありがとうございます」
表立って言う者はいない。だが、レフィメントは気が付いている。
「ぼくは、第一おうじだけど、ミシェルのほうが王様にふさわしい」
ミシェルはそんなことは言わない。
「お兄様が次期王太子です。私はお兄様を補佐するためにいるんですよ!」
心からそう言っているのは知っている。でも周りの大人はそう思っていない事に鈍いレフィメントですら気が付いてしまっている。
「やっぱりミシェル様だよ、お父様もそう言っていたもん。仲良くするならミシェル様」
「俺もそう言われた。レフィメント様じゃ愚鈍な王にしかならないって」
「泥船に乗りたくないってお母様が……」
親を映す鏡のような子供達の声が、耳に響いて痛い。なんとか耳を塞ぎ、神殿に急ぎルーチェに飛びつくレフィメント。
「ルーチェ様、僕は愚鈍な王になるのでしょうか?」
でもこの質問はしてはいけなかったとレフィメントは泣きそうになった。大好きな人の金の瞳が曇ってしまうからだ。
「そんなことはないよ、レフィ。俺のせいでそんなことを言われているんだね……ごめん、君の運命を捻じ曲げた俺を許して」
「いいえ!ルーチェさまはなにも悪くないです!ぼくがダメだからいけないのです!」
でも、お月様みたいな目はどんどん雲がかかってしまう。
「違うよ、レフィ。悪いのは全部俺。君は全然ダメな子なんかじゃないのに……ごめんね、レフィ……」
ぎゅっと抱きしめてくれてるのに、とても悲しかった。何故か嫌いなセラフィス教皇も今日にいたっては現れず、ルーチェを慰めてくれる人はいない。
「ごめんね、ごめんね、ルーチェちゃん。ぼく、ルーチェちゃんを困らせたかった訳じゃないの!」
「分かってるよ、レフィ。でも君が謝る必要なんて何もないんだ……」
泣くことも謝る事も出来ずにただぎゅっと抱き締めているしかできなくて、レフィメントはとても悲しかった。
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初めての投稿です。
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※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
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