【完結】良い子な邪神に転生した俺は強すぎて封印不可?頑張って封印されます!

鏑木 うりこ

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残った者達は

1 旅する神官

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 その旅の司祭様は変わっていた。

「ふむふむ、この辺りは貝が美味しいのですね。へえ、干すんですか?」

「ええ、貝柱だけ干すんですよ。長持ちしますし、出汁も取れますから中々重宝しますよ」

 彼は相当高位の聖職者らしかったが、神殿には入らず、旅を続けていた。しかも彼の旅は海辺の街を回るものだった。

「あー……良いですね。少し買わせてもらえませんか?あの方に送りたいなあ」

「買うだなんて!司祭様に息子の怪我を治していただいたんです!好きなだけお持ちになってください!」

「ありがとうございます。ああ、でも貝も生きていた物か……あの方には送れない。良し、私が食べて感想をお伝えしよう!」

「この干した貝を酒に漬け込むとまた……」

「ほうほう?それは旨そうですな!」

 彼は海辺の町の人々に乞われ、治療し、祈り、祝福をした。時には荒れた海に祈りを捧げたり、迫りくる魔物を追い払ったり、結界で守ったりとたくさんの人々を助けたが、暫くするとまた海岸線を歩き次の町へ移って行った。

「司祭様に目的地はあるのですか?」

 ある時、不思議に思った子供が尋ねた事がある。司祭様は笑って目的地はないのです、と答えながら。

「私は、海の美味しい食べ物をたくさん食べてある人にお話してあげたいのです。だから海辺の町ばかり行くんです」

「へえ!司祭様はどんなものを召し上がったのですか?」

「それはですね……」

 あちこち回るたびに、彼は美味しかったものを子供達に教え、そして子供達は司祭様がお話したいある人について思いを巡らせる。

「とても快活な男の子です。キラキラした丸い目ととっても優しい心の持ち主なんですが、理由があって旅に出ることが出来ない方なんです……だから、お話だけでもと思いましてね」

「へえ!良い子なんですね、その子は」

 子供達の返答に司祭様は目を細めた。

「ええ、馬鹿みたいに良い子なんですよ……」

 遠くを見つめる目は少し憂いを含んでいたが、子供達は司祭様の語る良い子にあってみたいなあと無邪気に笑いあった。


 そして時は流れ、この世界でも海辺を歩く神官がいた。彼は何故海辺の町ばかり歩きたいのか分からなかった。でも海辺へ行き、美味しい物をたくさん食べてお伝えしたい、そう思った。

「誰にだろう……分からないや」

 まだ若いが彼は生まれた時から魔力が強く、すぐに神官と言う位につけるほどだった。神殿に留まって修業するように勧められたが、旅をすることを選んだ。そうしたいと魂が感じているからだった。

「ふう……ああ、ここは聖龍神殿の本拠地か」

 この大陸……もしかしたらこの世界で一番大きな勢力を誇っている聖龍教の大神殿がある大きな街へ到着した。龍神シェーロンを奉る聖龍教は今の教皇がものすごい力を持っている若者で、彼の下に集う者達も素晴らしい奇跡の力を持ったものだそうだ。
 神の御使いである神龍達とも親交が深く、もはや地上の神とも呼ばれているほどの人物らしい。

「どんな方なんだろう、お会いしてみたいが……私のような旅の神官では会う事などありはしないな」

 彼は海沿いを行く。教皇が住まう大神殿は海沿いの断崖に建てられていて、まさに絶景であった。

「大神殿の下って通れるのかな?」

 海沿いギリギリに人が一人通れる道がある。そこをおっかなびっくり進んでいると

「いっくぞー!そおれ!」

「ルー!危ないですよ!」

「大丈夫!キイちゃんたちもいるもん!」

 彼の真上で声がした。遠くからみても岩陰で気が付かなかったが、どうやら崖の中腹に洞窟があり、そこから若い男がぴょーん!と飛び出して海に飛び込んだ。

「え?うわっ!」

「ん?あ!ごめんなさい!」

 飛び込んだ男が盛大に跳ね上げた海水が神官をびしょぬれにしてしまう。

「こんな所に人が居るなんて全然気が付かなった~~!ごめんなさい!」

 ぷかっと海面から顔を出して謝る顔は若い。しかも金色の長い髪に金色の目をしている綺麗な男だった。

「いえ、大丈夫ですよ。海の水には慣れてますから。でもあんなところから飛び降りて大丈夫ですか?」

「うん!退屈になったらよくここで泳いでるんだ!ねーキイちゃん」

「おーそうだぞ!いっつも遊んでるからルーチェも泳ぎが上手になったよな!」

 その男の横に小さなぬいぐるみたいなサイズだが、金色の龍が顔を出す。

「ド、ドラゴン!?龍様ではありませんか!」

「おう!俺は金龍様だぞう!」

 えへん、と水の中で威張って見せるが、ただ可愛らしいだけだ。

「流石キイちゃん!可愛い上に偉い~!」

「へへ、まあな!もっと褒めていいんだぞ、ルーチェ」

「キイちゃん!かっこいい!キイちゃん!可愛い!」

 そして旅の神官はまた一つ思い出す。ルーチェ、どこか遠くで聞いた名前、そして近くでも聞いた名前。

「……教皇様が……お若い男性で……名を確か、ルーチェと……?」

「おう!こいつがルーチェ教皇様だぞう!髪が金色だから俺が色々面倒見てるんだ!」

「ありがとね~キイちゃん。でもキイちゃんは黄色だったのにいつの間に金色になったの?」

「忘れた~」

「教皇……様……いや、あの神殿のとてもいい子のルーチェ様で……あれ、ルーチェ焼きの……色が違う……ルーチェ様は黒い髪に金の瞳……」

 何かに混乱し、ぶつぶつと呟く神官の声がキイの耳に届いた。

「ああ、前の世界で封印される前は黒い髪に金の目だったよな、ルーチェ」

「うん。封印されてる間に髪の毛の色が変わっちゃったからね」

「そ、そうだったんですね……そう、そうですか。封印は……もう終わったのですね……。あれから長い時が流れましたものね……ああ、どうですか、今は何でも食べられるのですか?お魚は?」

 急に聞かれ驚いたが、ルーチェは笑顔で答えた。この神官は嫌いじゃない、とても懐かしい何かを感じるから。

「うん!お魚も貝も大好き!でもやっぱりパリパリの焼きのりが一番好きだよ!」

「は、はは……そうですか。あの送った海苔とやらは届いたんですね……良かった……良かった……。ねえ、宜しければなんですが、私がこの辺りで食べておいしかったお魚の話をきいていただけませんか?なんと生で食べるんですよ」

「お刺身!美味しそう~!待ってね、お部屋に戻ろう!キイちゃん。俺とあの人を上の洞窟まで運んでくれる?」

「いいとも!俺も美味しそうな話聞きたい!」

 隠された洞窟は神殿の中に繋がっていて、神官は客人として早速たくさんの話を聞かせた。

「それでですね、魚が食べられないとおっしゃったので……」

「そうだねえ!今は大丈夫なんだよ~」

「それは良かった!ではこの貝の干物を……」

「!美味しい!」


 神官は何千年分も積もりに積もった話をし、そしてまた旅に出た。

「今度は海苔以外も送りますね!ルーチェ様!」

「うん!楽しみに待ってる~!絶対また来てよ!」

「はい!今度は封印されずに待っていてくださいね!」

 神官はまた海辺を歩き始める。今度はとても楽し気に。何せ会う気になればいつでも会えるようになったんだから。次は何千年もあとなんてことはなく、会いに行けばいつでも会えるんだから。

「大丈夫!もう封印される理由がないからね!だって俺は良い子だからさ!」

 教皇と言う立場なのにルーチェは神官に手を振って見送った。この気さくな所も皆から愛される理由の一つなんだろうと神官も手を振ってこたえた。

「さあ!次の町の美味しいものは何でしょう!」

 足取りも軽く次の町を目指した。


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