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あれからの話を聞きました
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ヴェルミーナと26年ぶりに再会した。ヴェルミーナは53年ぶりだと言う。アイリーンが亡くなってから53年も経っている。それが短いのか長いのかわからない。ましてや違う世界だと思っていたのに同じ世界だったことにも驚きを隠せなかった。
アイリーンの父母や国王や王妃は80歳を超えているがまだ健在らしい。
「アイリーン様が転生して、グローイスクロイツ王国で聖女をしていると聞いたらきっと会いたがると思いますわ」
ヴェルミーナは穏やかに微笑む。
私も会えるものなら会いたい。卒園パーティーで断罪され牢に入れられ、次の日には処刑された。あの日は父母や国王夫妻は隣国の国王の結婚式の為にあの国を留守にしていた。
まさかその間にあの馬鹿王太子殿下とアバスレ偽聖女がそんな企てをしていたとは誰も思わなかっただろう。
馬鹿王太子殿下は王命だと言ったそうだ。国王がそんなことを言うはずかないとみんな思いながら、勅命書を見せられ何も言えず従ったのだろう。
あのふたりは王命と嘘をつき、公文書を偽造し、王の印まで偽造した。これも罪のひとつだろう。
私の首が落ちた時、雷鳴が轟き、王子宮に雷が落ちたらしい。それから豪雨が降り続いたそうだ。それも我が国の王都だけに。隣国からの帰り道、国王達は王都にかかる雷雲を見て胸騒ぎがしたそうだが、後の祭りだった。
ヴェルミーナが見せてくれたクラウディア様から送られた手紙をにはそのような事が書いてあった。
53年前の手紙はもう茶色く変色しつつあった。
王太子殿下と聖女は聖女アイリーン様を陥れ殺した極悪人として広場に大きな杭を立てそこに磔にされたそうだ。罰は民が与えて良いと本当の王命が下った。
聖女は「私は聖女よ! こんなことをして神が黙っている訳がないわ! お前達みんなには神の罰が下るわ!」と喚き散らしていたそうだ。
しかし、その時聖女の杭に雷が落ちたそうだ。聖女は無傷であったが失禁したらしい。民のひとりが「神はお怒りだ! 真の聖女を殺したこいつらを許すな!」と叫んだ。それをきっかけに皆口々に叫び、投石を始めた、最後は火のついた矢を放ったそうだ。
なんだか酷いわね。私はそこまでしなくてよかったと思うけど、まぁ皆さんの気持ちが収まらなかったのならしかたないわね。
「しかし、国王や王妃は馬鹿でも実の息子だろう? 心を鬼にしたのか?」
ジークヴァルトは不思議そうに私とヴェルミーナを見る。
「私の母は王妃様の妹だったの。父と陛下は親友でね。それで私が婚約者になったの。3歳で婚約して、それから毎日お妃教育の為に王宮通いが始まったから、毎日会う私は国王夫妻にとって姪だけど娘みたいなものだったの。みんな聖女が憎かったのではないかしら? あの聖女は地位を傘にきてやりたい放題だったもの。たぶん精神拘束系の魔法も使っていて、王太子殿下や側近を意のままにしていたと思うの。陛下や王妃様はそんな王太子に愛想を尽かしていたわ」
私の話を受け、ヴェルミーナはジークヴァルトを見てふふふと笑った。
「自分と血のつながった子供がお粗末でいくらたしなめても治らず、余計に酷くなった時、愛が憎悪になるの。ましてや可愛がっている姪を蔑ろにされて殺されたのよ。国に未来も閉ざされたようなものだしね」
そんなものなのかしら? 確かにあの頃、陛下達と王太子殿下の間には距離があった。王太子殿下があの聖女にのめり込んでいるのが許せなかったようだ。あの聖女はとにかく酷かった。
「ヴェルの話を聞いていたらみんなに会いたくなってきたわ。私は誰にもお別れができずに旅立ってしまったものね」
でも会っても私がアイリーンだとは誰もわからないだろう。
会いたいけど……。
アイリーンの父母や国王や王妃は80歳を超えているがまだ健在らしい。
「アイリーン様が転生して、グローイスクロイツ王国で聖女をしていると聞いたらきっと会いたがると思いますわ」
ヴェルミーナは穏やかに微笑む。
私も会えるものなら会いたい。卒園パーティーで断罪され牢に入れられ、次の日には処刑された。あの日は父母や国王夫妻は隣国の国王の結婚式の為にあの国を留守にしていた。
まさかその間にあの馬鹿王太子殿下とアバスレ偽聖女がそんな企てをしていたとは誰も思わなかっただろう。
馬鹿王太子殿下は王命だと言ったそうだ。国王がそんなことを言うはずかないとみんな思いながら、勅命書を見せられ何も言えず従ったのだろう。
あのふたりは王命と嘘をつき、公文書を偽造し、王の印まで偽造した。これも罪のひとつだろう。
私の首が落ちた時、雷鳴が轟き、王子宮に雷が落ちたらしい。それから豪雨が降り続いたそうだ。それも我が国の王都だけに。隣国からの帰り道、国王達は王都にかかる雷雲を見て胸騒ぎがしたそうだが、後の祭りだった。
ヴェルミーナが見せてくれたクラウディア様から送られた手紙をにはそのような事が書いてあった。
53年前の手紙はもう茶色く変色しつつあった。
王太子殿下と聖女は聖女アイリーン様を陥れ殺した極悪人として広場に大きな杭を立てそこに磔にされたそうだ。罰は民が与えて良いと本当の王命が下った。
聖女は「私は聖女よ! こんなことをして神が黙っている訳がないわ! お前達みんなには神の罰が下るわ!」と喚き散らしていたそうだ。
しかし、その時聖女の杭に雷が落ちたそうだ。聖女は無傷であったが失禁したらしい。民のひとりが「神はお怒りだ! 真の聖女を殺したこいつらを許すな!」と叫んだ。それをきっかけに皆口々に叫び、投石を始めた、最後は火のついた矢を放ったそうだ。
なんだか酷いわね。私はそこまでしなくてよかったと思うけど、まぁ皆さんの気持ちが収まらなかったのならしかたないわね。
「しかし、国王や王妃は馬鹿でも実の息子だろう? 心を鬼にしたのか?」
ジークヴァルトは不思議そうに私とヴェルミーナを見る。
「私の母は王妃様の妹だったの。父と陛下は親友でね。それで私が婚約者になったの。3歳で婚約して、それから毎日お妃教育の為に王宮通いが始まったから、毎日会う私は国王夫妻にとって姪だけど娘みたいなものだったの。みんな聖女が憎かったのではないかしら? あの聖女は地位を傘にきてやりたい放題だったもの。たぶん精神拘束系の魔法も使っていて、王太子殿下や側近を意のままにしていたと思うの。陛下や王妃様はそんな王太子に愛想を尽かしていたわ」
私の話を受け、ヴェルミーナはジークヴァルトを見てふふふと笑った。
「自分と血のつながった子供がお粗末でいくらたしなめても治らず、余計に酷くなった時、愛が憎悪になるの。ましてや可愛がっている姪を蔑ろにされて殺されたのよ。国に未来も閉ざされたようなものだしね」
そんなものなのかしら? 確かにあの頃、陛下達と王太子殿下の間には距離があった。王太子殿下があの聖女にのめり込んでいるのが許せなかったようだ。あの聖女はとにかく酷かった。
「ヴェルの話を聞いていたらみんなに会いたくなってきたわ。私は誰にもお別れができずに旅立ってしまったものね」
でも会っても私がアイリーンだとは誰もわからないだろう。
会いたいけど……。
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