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エリーゼの縁談
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「それで、殿下はどうするおつもりなんでしょうか?」
ジークハルト様に聞いてみた。
「もう、陛下にも話が行っているらしい。相手が大国スパリーナ国の王女だし、いくら婚約者がいても断ることは難しいだろうな」
我が国よりスパリーナ国の方が力がある。断ったら色々問題があるのだろう。ジークハルト様は難しい顔をしながら話を続ける。
「エリーゼ嬢はこの国の王妃殿下のお気に入りだし、母方の親戚が力のあるサランルロッテ公爵家だろ。あの家は王家とも縁続だ。国王もいくら王女殿下が可愛いからといってそんなエリーゼ嬢を困らせるようなことはしないだろう。この申し出は何かあると思う」
「いくら殿下のことが好きでも、婚約者がいるのに求婚するなんてびっくりしました。こんなこと言ったら不敬で捕まりますね」
馬車の窓から誰も聞いてないかキョロキョロ見ていたら、思いっきり笑われた。
「大丈夫だ。誰も聞いてない。まぁ、この事は様子を見よう。まだ何らかの動きがある気がする。レティもあんまり気にしないように」
そう言ってジークハルト様は、また私の頭を撫でた。
カリーナ姫は“スパリーナの我儘お姫様”という二つ名があるらしい。
遠くからチラッと見ただけなのでよくわからないが、綺麗な姫様だったと思う。
エリーゼ様も素敵な方だと仰っていたし、我儘で婚約者がいる相手を力でねじ伏せようとするような人だとは思えない。エリーゼ様とも仲が良いみたいだったし私はよくわからないなぁと思った。
ジークハルト様は何かあると言っていたけど、何かってなんだろう? 私は考えていたら眠くなってしまった。
何日かして、私とジュリエッタ様はまたエリーゼ様に呼び出された。
「殿下に呼ばれて話をしましたの」
いよいよ動き出したのか。
「殿下は自分との婚約を解消する代わりに、私にこの国の王太子殿下と婚約するのはどうかと打診されたの」
「「王太子殿下~⁉︎」」
私とジュリエッタ様は驚き、声をそろえて叫んでしまった。
「カリーナ姫が、無理に婚約を解消してもらうのだから、今と同じ位のレベルの結婚相手を探したら、灯台下暗しで近くにいたとユアン殿下と婚約するのはどうかと言ってきたらしくて」
灯台下暗しって……。
「なるほど、確かにスパリーナ国の王太子殿下なら、同じレベルどころか、格上ですね」
ジュリエッタ様、格上って……。
確かに国の大きさや強さから言うと格上かもしれないけどと私は首を捻る。
「それで殿下はそれを受け入れろと仰っているのですか?」
エリーゼ様に聞いてみた。
「殿下は私がそれで納得して、ユアン殿下と婚約してくれればカリーナ姫を受け入れようと思うと仰ったの。陛下や父とも相談したけど、スパリーナ国からの申し出は断れないみたいですわ」
「宰相様もお辛いですね」
ジュリエッタ様の言葉にエリーゼ様は困った顔をする。
「父はスパリーナ国の王太子殿下なら身に余る光栄だと申してますわ。我が国とスパリーナ国の橋渡しになりなさいと。カリーナ姫が我が国に嫁いで、お前がスパリーナ国に嫁ぐことが我が国の繁栄になるとね」
「エリーゼ様の気持ちも殿下の気持ちも国の繁栄の前には無力ですね」
「王家と公爵家ですものしかたありませんわ」
エリーゼ様はジュリエッタ様の言葉に貴族ならしかたないと答えた。
「スパリーナ国の王太子殿下の気持ちはどうなんですか? エリーゼ様のことがお好きなのでしょうか? エリーゼ様はどうなんですか?」
私の言葉にエリーゼ様は何か決意をしたような顔をしてふたりを見た。
「おふたりにだけ申しますわ。私はユアン殿下をお慕いしております。でも、初めてお会いした時にひと目見て恋をしてしまいました。でも私には婚約者がいる。叶わぬ恋と諦めておりましたの。ユアン殿下とは年齢も離れていますし、私のことなどなんとも思っていらっしゃいませんわ。それなのにこんな形で余り者みたいに婚約なんて、私を押し付けられたユアン殿下に申し訳なくて」
「スパリーナ国の王太子殿下はユアン様というお名前なんですね。私存じませんでした。レティシア様はご存知でした?」
突然、ジュリエッタ様が私に聞いてくる。
「いいえ、今初めて知りました」
私は何だかわからないけどとりあえず答えた。
「エリーゼ様は今まで我が国の王太子殿下の事を私達にお名前で仰った事は一度もありませんでした。普段でも殿下と名前ではなく殿下と呼んでいらっしゃいますよね。それなのにスパリーナ国の王太子殿下のことはお名前を呼んでおられます。それだけでもおふたりに対しての温度差を感じますわ」
おお、そういうことか。
ジュリエッタ様は続ける。
「元々婚約を解消したかったのだし、ユアン殿下のことがお好きならユアン殿下を選べばいいと思いますよ」
「私もそう思います。年齢は関係ないですよ。私とジーク様も年は離れてますが、ジーク様はあんな感じです」
エリーゼ様は私の話に少し笑ったが、またすぐに不安そうな顔をする。
「でも、ユアン殿下が私の事をお嫌いだったら。この無理矢理な婚約が迷惑だったらと思うとお返事できないのです」
それはそうだろうな。思っているのに思われないのは辛い。
でも貴族は家の為の政略結婚が当たり前。ましてや王族なのだから、ユアン殿下もわかっているだろう。私はそう思いながらエリーゼ様に聞いた。
「ユアン殿下はどうおっしゃっているのですか?」
「ユアン殿下はいつも優しくしてくださいます。『結婚の話もあなたが嫌でなければと嫁いできてほしい。長年一緒にいた婚約者と別れさせられ、国を離れ嫁ぐのは辛いだろうが私が全力で守ります』と仰って下さいました」
ジュリエッタ様はそれを聞いてふふふと笑った。
「それなら大丈夫です。ユアン殿下と結婚して下さい。そしてスパリーナ国の王太子妃として、パルダナスが我が国に手を出さないように睨みを利かすよう陛下や殿下に進言して下さい。殿下はエリーゼ様がお好きですよ」
そういうことか。私は子供なんでやっぱり疎いなぁ。
ジュリエッタ様は前世とやらで大人だったから恋愛のことはよくわかっているのだなぁ。
「ありがとう」
エリーゼ様はふたりにそう言うとにっこり笑った。
ジークハルト様に聞いてみた。
「もう、陛下にも話が行っているらしい。相手が大国スパリーナ国の王女だし、いくら婚約者がいても断ることは難しいだろうな」
我が国よりスパリーナ国の方が力がある。断ったら色々問題があるのだろう。ジークハルト様は難しい顔をしながら話を続ける。
「エリーゼ嬢はこの国の王妃殿下のお気に入りだし、母方の親戚が力のあるサランルロッテ公爵家だろ。あの家は王家とも縁続だ。国王もいくら王女殿下が可愛いからといってそんなエリーゼ嬢を困らせるようなことはしないだろう。この申し出は何かあると思う」
「いくら殿下のことが好きでも、婚約者がいるのに求婚するなんてびっくりしました。こんなこと言ったら不敬で捕まりますね」
馬車の窓から誰も聞いてないかキョロキョロ見ていたら、思いっきり笑われた。
「大丈夫だ。誰も聞いてない。まぁ、この事は様子を見よう。まだ何らかの動きがある気がする。レティもあんまり気にしないように」
そう言ってジークハルト様は、また私の頭を撫でた。
カリーナ姫は“スパリーナの我儘お姫様”という二つ名があるらしい。
遠くからチラッと見ただけなのでよくわからないが、綺麗な姫様だったと思う。
エリーゼ様も素敵な方だと仰っていたし、我儘で婚約者がいる相手を力でねじ伏せようとするような人だとは思えない。エリーゼ様とも仲が良いみたいだったし私はよくわからないなぁと思った。
ジークハルト様は何かあると言っていたけど、何かってなんだろう? 私は考えていたら眠くなってしまった。
何日かして、私とジュリエッタ様はまたエリーゼ様に呼び出された。
「殿下に呼ばれて話をしましたの」
いよいよ動き出したのか。
「殿下は自分との婚約を解消する代わりに、私にこの国の王太子殿下と婚約するのはどうかと打診されたの」
「「王太子殿下~⁉︎」」
私とジュリエッタ様は驚き、声をそろえて叫んでしまった。
「カリーナ姫が、無理に婚約を解消してもらうのだから、今と同じ位のレベルの結婚相手を探したら、灯台下暗しで近くにいたとユアン殿下と婚約するのはどうかと言ってきたらしくて」
灯台下暗しって……。
「なるほど、確かにスパリーナ国の王太子殿下なら、同じレベルどころか、格上ですね」
ジュリエッタ様、格上って……。
確かに国の大きさや強さから言うと格上かもしれないけどと私は首を捻る。
「それで殿下はそれを受け入れろと仰っているのですか?」
エリーゼ様に聞いてみた。
「殿下は私がそれで納得して、ユアン殿下と婚約してくれればカリーナ姫を受け入れようと思うと仰ったの。陛下や父とも相談したけど、スパリーナ国からの申し出は断れないみたいですわ」
「宰相様もお辛いですね」
ジュリエッタ様の言葉にエリーゼ様は困った顔をする。
「父はスパリーナ国の王太子殿下なら身に余る光栄だと申してますわ。我が国とスパリーナ国の橋渡しになりなさいと。カリーナ姫が我が国に嫁いで、お前がスパリーナ国に嫁ぐことが我が国の繁栄になるとね」
「エリーゼ様の気持ちも殿下の気持ちも国の繁栄の前には無力ですね」
「王家と公爵家ですものしかたありませんわ」
エリーゼ様はジュリエッタ様の言葉に貴族ならしかたないと答えた。
「スパリーナ国の王太子殿下の気持ちはどうなんですか? エリーゼ様のことがお好きなのでしょうか? エリーゼ様はどうなんですか?」
私の言葉にエリーゼ様は何か決意をしたような顔をしてふたりを見た。
「おふたりにだけ申しますわ。私はユアン殿下をお慕いしております。でも、初めてお会いした時にひと目見て恋をしてしまいました。でも私には婚約者がいる。叶わぬ恋と諦めておりましたの。ユアン殿下とは年齢も離れていますし、私のことなどなんとも思っていらっしゃいませんわ。それなのにこんな形で余り者みたいに婚約なんて、私を押し付けられたユアン殿下に申し訳なくて」
「スパリーナ国の王太子殿下はユアン様というお名前なんですね。私存じませんでした。レティシア様はご存知でした?」
突然、ジュリエッタ様が私に聞いてくる。
「いいえ、今初めて知りました」
私は何だかわからないけどとりあえず答えた。
「エリーゼ様は今まで我が国の王太子殿下の事を私達にお名前で仰った事は一度もありませんでした。普段でも殿下と名前ではなく殿下と呼んでいらっしゃいますよね。それなのにスパリーナ国の王太子殿下のことはお名前を呼んでおられます。それだけでもおふたりに対しての温度差を感じますわ」
おお、そういうことか。
ジュリエッタ様は続ける。
「元々婚約を解消したかったのだし、ユアン殿下のことがお好きならユアン殿下を選べばいいと思いますよ」
「私もそう思います。年齢は関係ないですよ。私とジーク様も年は離れてますが、ジーク様はあんな感じです」
エリーゼ様は私の話に少し笑ったが、またすぐに不安そうな顔をする。
「でも、ユアン殿下が私の事をお嫌いだったら。この無理矢理な婚約が迷惑だったらと思うとお返事できないのです」
それはそうだろうな。思っているのに思われないのは辛い。
でも貴族は家の為の政略結婚が当たり前。ましてや王族なのだから、ユアン殿下もわかっているだろう。私はそう思いながらエリーゼ様に聞いた。
「ユアン殿下はどうおっしゃっているのですか?」
「ユアン殿下はいつも優しくしてくださいます。『結婚の話もあなたが嫌でなければと嫁いできてほしい。長年一緒にいた婚約者と別れさせられ、国を離れ嫁ぐのは辛いだろうが私が全力で守ります』と仰って下さいました」
ジュリエッタ様はそれを聞いてふふふと笑った。
「それなら大丈夫です。ユアン殿下と結婚して下さい。そしてスパリーナ国の王太子妃として、パルダナスが我が国に手を出さないように睨みを利かすよう陛下や殿下に進言して下さい。殿下はエリーゼ様がお好きですよ」
そういうことか。私は子供なんでやっぱり疎いなぁ。
ジュリエッタ様は前世とやらで大人だったから恋愛のことはよくわかっているのだなぁ。
「ありがとう」
エリーゼ様はふたりにそう言うとにっこり笑った。
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