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思い
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ジークハルト様が私の為に時を巻き戻したの? 私はそのことに衝撃を受けた。
「私の為に?」
「いや、私のエゴだ。自分が許せなかった」
魅了魔法をかけられていたのだから仕方ない。解かれた後のジークハルト様の苦しみははかり知れないと思う。
「私が加護魔法をかけたばかりにジーク様を苦しめてしまってごめんなさい。そもそも私となんか婚約しなければこんなに苦しまなくてもよかったのに」
私はくちびるを噛んだ。
私と婚約していなければ、私を殺しても罪の意識に苛まれることもなかっただろう。
私が加護魔法をかけてなければジークハルト様は戦いで死ぬこともできたはず。
そんなことを思っていたらジークハルトに抱きよせられた。
「レティは何も悪くない。悪いのは私だ。私が弱い人間だったからあんな女の魔法にかかって操られてしまった。そして大事なレティを自分の手で亡くしてしまった。
もう一度、会いたかった。赦してもらえるわけがないのにな。
レティは前の記憶がないと思い、私は何もなかったような顔をしてずっと側にいた。自分を殺した男が側にいて怖かっただろう? レティが嫌なら私は消えるよ」
ジークハルト様は本当に辛そうな顔をしている。
「もう、悲劇のヒーローみたいじゃないですか~」
ジュリエッタ様が突然、笑いながら言う。
「ジークハルト様、大丈夫ですよ。
私以前にレティシア様に聞いたことがあるんです。『自分を殺した男がいつも側にいて怖くないのか?』って。
そしたらレティシア様は、殺された時のジークハルト様の剣さばきがあまりに早くて全く覚えてないので怖くもないし、トラウマにもなってないと仰ったのです。
あの時、シャロンと神に腹が立って赦さないと思ったけど、ジークハルト様に怒りは無かったと。
だから大丈夫です。レティシア様はジークハルト様が大好きですもんね。ねっ?レティシア様」
ジュリエッタ様は私に返事を強要する。
「ねっ?」
「は、はい!」
私は思わずはいと返事をしてしまった。
「ジークは巻き戻す前の人生の時からレティシア嬢のことが大好きで、私達は毎日可愛い可愛いって聞かされてたんだよ。
16歳になったら結婚して幸せに暮らすんだといつも言ってた。
だからあの時は本当に信じられなかった。レティシア嬢はこれからジークに対しては女王様みたいに偉そうにすればいいよ。なんでも言うこと聞かせればいい。
私はあの時、あの場にいて見ていた。確かに剣さばきは早かったな。
あの後レティシア嬢を祭壇の上に寝かせたんだ。そしたら崩れかけた神殿の天井からすごい光が降り注いできて、レティシア嬢の身体が空に向かって浮き上がり消えた。
それを見た時に私たちはとんでもないことをしたんだと思った。
そしたら、神の声みたいなのが聞こえて来たんだ。
やっぱり救いの神子は本物だったんだなって思ったよ」
セシル様が遠い目をしながら話す。
「お前、レティを祭壇の上に寝かせたって、触ったのか!」
ジークハルト様はそこ?
「そこかよ!!」
セシル様が絶叫する。
「まぁ、お前はあの女の魔法にかからなかった凄いやつだから仕方ないな。セシル、悪かった。私達、魔法にかかった馬鹿どもはお前の事も苦しめたな」
ジークハルト様がセシル様にあやまった。
「いや、私は弱かったんだ。何も言えなかったし、何もできなかった。自分が情けないよ」
セシル様はうつむいた。
神の声って何だったんだろう?
「私の為に?」
「いや、私のエゴだ。自分が許せなかった」
魅了魔法をかけられていたのだから仕方ない。解かれた後のジークハルト様の苦しみははかり知れないと思う。
「私が加護魔法をかけたばかりにジーク様を苦しめてしまってごめんなさい。そもそも私となんか婚約しなければこんなに苦しまなくてもよかったのに」
私はくちびるを噛んだ。
私と婚約していなければ、私を殺しても罪の意識に苛まれることもなかっただろう。
私が加護魔法をかけてなければジークハルト様は戦いで死ぬこともできたはず。
そんなことを思っていたらジークハルトに抱きよせられた。
「レティは何も悪くない。悪いのは私だ。私が弱い人間だったからあんな女の魔法にかかって操られてしまった。そして大事なレティを自分の手で亡くしてしまった。
もう一度、会いたかった。赦してもらえるわけがないのにな。
レティは前の記憶がないと思い、私は何もなかったような顔をしてずっと側にいた。自分を殺した男が側にいて怖かっただろう? レティが嫌なら私は消えるよ」
ジークハルト様は本当に辛そうな顔をしている。
「もう、悲劇のヒーローみたいじゃないですか~」
ジュリエッタ様が突然、笑いながら言う。
「ジークハルト様、大丈夫ですよ。
私以前にレティシア様に聞いたことがあるんです。『自分を殺した男がいつも側にいて怖くないのか?』って。
そしたらレティシア様は、殺された時のジークハルト様の剣さばきがあまりに早くて全く覚えてないので怖くもないし、トラウマにもなってないと仰ったのです。
あの時、シャロンと神に腹が立って赦さないと思ったけど、ジークハルト様に怒りは無かったと。
だから大丈夫です。レティシア様はジークハルト様が大好きですもんね。ねっ?レティシア様」
ジュリエッタ様は私に返事を強要する。
「ねっ?」
「は、はい!」
私は思わずはいと返事をしてしまった。
「ジークは巻き戻す前の人生の時からレティシア嬢のことが大好きで、私達は毎日可愛い可愛いって聞かされてたんだよ。
16歳になったら結婚して幸せに暮らすんだといつも言ってた。
だからあの時は本当に信じられなかった。レティシア嬢はこれからジークに対しては女王様みたいに偉そうにすればいいよ。なんでも言うこと聞かせればいい。
私はあの時、あの場にいて見ていた。確かに剣さばきは早かったな。
あの後レティシア嬢を祭壇の上に寝かせたんだ。そしたら崩れかけた神殿の天井からすごい光が降り注いできて、レティシア嬢の身体が空に向かって浮き上がり消えた。
それを見た時に私たちはとんでもないことをしたんだと思った。
そしたら、神の声みたいなのが聞こえて来たんだ。
やっぱり救いの神子は本物だったんだなって思ったよ」
セシル様が遠い目をしながら話す。
「お前、レティを祭壇の上に寝かせたって、触ったのか!」
ジークハルト様はそこ?
「そこかよ!!」
セシル様が絶叫する。
「まぁ、お前はあの女の魔法にかからなかった凄いやつだから仕方ないな。セシル、悪かった。私達、魔法にかかった馬鹿どもはお前の事も苦しめたな」
ジークハルト様がセシル様にあやまった。
「いや、私は弱かったんだ。何も言えなかったし、何もできなかった。自分が情けないよ」
セシル様はうつむいた。
神の声って何だったんだろう?
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