14 / 21
やっと掴んだ幸せ(シンシア視点)
しおりを挟む
ランディが旅立って3年が過ぎた。向こうの貴族学校に通いながらフレディ様から色々教えてもらっているらしい。
「シンシア、そろそろね。私が行く予定だった視察に代わりに行ってね」
「来月の?」
「そうよ。私がどうしても手が離せない用事が入ったので、最近体調が良くなったシンシア王妃が代わりに行くのよ」
こんなに元気なんだけれど、私はこの国ではずって病弱な王妃役を貫いている。
「マギーはあっちに行ってもそのままついてもらうから安心して。あっちには我が公爵家の精鋭使用人ばかりだし、何も心配はいらないわ。長かったけど、やっと自由になれるわね」
「ありがとう」
「特にランドルフがあっちに行ってからは長かったでしょ?」
ミランダはふふふと意味ありげに微笑んだ。
「あちらでのシンシアの身分はルリッド伯爵の叔母の友達の令嬢よ。また今度もお馴染みの病弱設定。領地で静養していて元気になったから、年が合い、独身であったルリッド伯爵と結婚することになったの。戸籍はちゃんと用意しているから心配ないわ。今までほとんど社交の場に登場しない幻の王妃様だし、顔を知っている人はほとんどいないから大丈夫よ」
私を社交の場や公務の場に出さなかったのは初めからラックノーラン国に行かせる為だった。
先にフレディ様をミランダの遠縁で子供のいないルリッド伯爵の養子にし、伯爵家を継がせた。フレディ様も騎士を辞めてからずっと王妃宮でランディの守り役をしていたので、社交の場には出ていない。レキソール侯爵は騎士の時に大怪我をし、人前に出るのを嫌がっていると噂されていた。守り役になった事も内緒だったのでレキソール家の人たち位しか知らない。
レオンフィード殿下の書いたシナリオ通り私達は過ごしてきた。
「では、行ってくるわね」
私は侍女のマギーと馬車に乗る。視察は2泊の予定だ。
ここから13時間位かかる国に行く。だがしかし、本当は私はその国を通り過ぎてフレディ様が待つラックノーラン国に行くのだ。
私は視察先の国で体調を崩して急逝した事になる。
その辺りはヴァーナリアン公爵家とレオンハルト王弟殿下が魔法を使い、ぬかりなく事実とする。
そして私はルリッド伯爵に嫁ぐ。伯爵家にはラックノーラン国に留学しているランディもいる。
ランディがこの計画を受け入れてくれるのかどうか心配だった。
謀った私達を拒否するのではないかと不安だった。
しかし、ランディは全てを受け入れてくれた。
フレディ様の子でよかったと喜んでくれた。私はそれだけでもう胸がいっぱいになった。
やっと親子3人で暮らせる。
1ヶ月間の旅を終え、ラックノーラン国のルリッド伯爵邸に到着した。
馬車を見つけ、玄関から走ってくるランディの姿が見える。その後ろでフレディ様が微笑んでいる。
「私はもういつ死んでもいいわ」
「何を言っているのですか? 母上はこれから父上と幸せになるのです。ルリッド伯爵家の跡取りを産まなければなりませんよ。もう、誰にもふたりを引き離すことなどできませんからね」
ランディのこんな明るい笑顔を初めて見た。
「シア、回り道したがやっと君と結婚できる。愛してる。今までもこれからも。未来永劫、来世も君だけを愛してる」
フレディ様が私を抱きしめた。私は涙が止まらない。
「もう、父上、息子の前でいちゃつかないでくださいよ」
ランディが笑う。
この幸せを失いたくない。レオンハルト殿下ありがとうございます。ミランダ、ありがとう。
私はこの国でシンシア・ルリッドとして生きていく。
愛する人達と共に。
「シンシア、そろそろね。私が行く予定だった視察に代わりに行ってね」
「来月の?」
「そうよ。私がどうしても手が離せない用事が入ったので、最近体調が良くなったシンシア王妃が代わりに行くのよ」
こんなに元気なんだけれど、私はこの国ではずって病弱な王妃役を貫いている。
「マギーはあっちに行ってもそのままついてもらうから安心して。あっちには我が公爵家の精鋭使用人ばかりだし、何も心配はいらないわ。長かったけど、やっと自由になれるわね」
「ありがとう」
「特にランドルフがあっちに行ってからは長かったでしょ?」
ミランダはふふふと意味ありげに微笑んだ。
「あちらでのシンシアの身分はルリッド伯爵の叔母の友達の令嬢よ。また今度もお馴染みの病弱設定。領地で静養していて元気になったから、年が合い、独身であったルリッド伯爵と結婚することになったの。戸籍はちゃんと用意しているから心配ないわ。今までほとんど社交の場に登場しない幻の王妃様だし、顔を知っている人はほとんどいないから大丈夫よ」
私を社交の場や公務の場に出さなかったのは初めからラックノーラン国に行かせる為だった。
先にフレディ様をミランダの遠縁で子供のいないルリッド伯爵の養子にし、伯爵家を継がせた。フレディ様も騎士を辞めてからずっと王妃宮でランディの守り役をしていたので、社交の場には出ていない。レキソール侯爵は騎士の時に大怪我をし、人前に出るのを嫌がっていると噂されていた。守り役になった事も内緒だったのでレキソール家の人たち位しか知らない。
レオンフィード殿下の書いたシナリオ通り私達は過ごしてきた。
「では、行ってくるわね」
私は侍女のマギーと馬車に乗る。視察は2泊の予定だ。
ここから13時間位かかる国に行く。だがしかし、本当は私はその国を通り過ぎてフレディ様が待つラックノーラン国に行くのだ。
私は視察先の国で体調を崩して急逝した事になる。
その辺りはヴァーナリアン公爵家とレオンハルト王弟殿下が魔法を使い、ぬかりなく事実とする。
そして私はルリッド伯爵に嫁ぐ。伯爵家にはラックノーラン国に留学しているランディもいる。
ランディがこの計画を受け入れてくれるのかどうか心配だった。
謀った私達を拒否するのではないかと不安だった。
しかし、ランディは全てを受け入れてくれた。
フレディ様の子でよかったと喜んでくれた。私はそれだけでもう胸がいっぱいになった。
やっと親子3人で暮らせる。
1ヶ月間の旅を終え、ラックノーラン国のルリッド伯爵邸に到着した。
馬車を見つけ、玄関から走ってくるランディの姿が見える。その後ろでフレディ様が微笑んでいる。
「私はもういつ死んでもいいわ」
「何を言っているのですか? 母上はこれから父上と幸せになるのです。ルリッド伯爵家の跡取りを産まなければなりませんよ。もう、誰にもふたりを引き離すことなどできませんからね」
ランディのこんな明るい笑顔を初めて見た。
「シア、回り道したがやっと君と結婚できる。愛してる。今までもこれからも。未来永劫、来世も君だけを愛してる」
フレディ様が私を抱きしめた。私は涙が止まらない。
「もう、父上、息子の前でいちゃつかないでくださいよ」
ランディが笑う。
この幸せを失いたくない。レオンハルト殿下ありがとうございます。ミランダ、ありがとう。
私はこの国でシンシア・ルリッドとして生きていく。
愛する人達と共に。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
拾った指輪で公爵様の妻になりました
奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。
とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。
この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……?
「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」
公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる