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6話 使用人達
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夕食の後、使用人全てがホールに集められた。
ほとんどの使用人はこの要塞のような屋敷の中の使用人住居棟で暮らしているそうだ。通いの人も近くに住んでいる。皆さん辺境の地、グローズクロイツ領出身の人だそうだ。
義両親やさっき会ったエマ、家令らしき紳士も大柄だなと思ったが、使用人達も皆、やたら大きい。騎士団の人達と思われる塊はアルトゥール様までとは言わないが王都ではなかなかいないようなゴリマッチョ揃いだ。
皆が揃ったところで、アルトゥール様が声を上げた。
「皆に紹介する。こちらは私に嫁いで来てくれることになったディートリントだ。明日、領地の教会で婚姻式を挙げる。そのあと、この屋敷で領地の皆を招待し、披露パーティーを行う。皆、忙しい中、用意をしてくれて有難う。ディートリントは辺境の地は初めてで慣れないことも多いと思う。皆、助けてやってほしい。よろしく頼む」
みんながざわざわしている。きっと出戻りの令嬢が嫁いでくると聞いていたはず。イメージと違ったのだろう。私、見た目は妖精だからね。
「皆さん、よろしくお願いします」
さっきエマに挨拶したのと同じように頭を下げた。
なんだかキャーキャーと黄色い声が上がっている。
「頭を下げられたぞ」「なんと謙虚な」
「可愛い」「小さい」「妖精みたい」「デッカいアルトゥール様と大丈夫か?」とか、みんな口々に言ってくれている。
誰も中身を知らないからね。ここでは猫を被る気はないからすぐにわかっちゃうわね。きっと。みんな幻滅しちゃうかな。
アルトゥール様が話を続ける。
「そちらにいるのはディートリントについてきてくれた侍女のメアリーだ。皆、この辺境の地について色々教えてやってほしい」
メアリーを見た。メアリーはまさか自分の紹介があるとは思っていなかったようでドギマギしているみたいだ。
「メ、メアリーでございます。ディー様とは子供の頃からのご縁でお仕えいたしております。ディー様と共にこの辺境の地に骨を埋めるつもりで参りました。皆様、よろしくお願いいたします」
メアリー、そんな気持ちでついてきてくれたのね。嬉しくて泣いちゃうわ。
「では、解散。持ち場に戻ってくれ。ディーと顔を合わせた時にそれぞれ自己紹介をしてやってくれ」
「「「「「はい!」」」」
お~ホールに声が響く。凄い!
皆が解散したあと、私も部屋に下がろうしたが、アルトゥール様に声をかけられた。
「ディー、紹介しておく、うちの家令のヨハンだ。エマの夫なんだ。ふたりは若い頃からずっと我が家を支えてくれている。私にとっては使用人というより、叔父、叔母のような人達だ」
「奥様、ヨハンとお呼び下さい。こんな可愛らしい方が坊ちゃまの元に来てくださるなんて夢のようです。坊ちゃまに不満があればいつでもヨハンやエマにお伝えください。坊ちゃまにお灸を据えさせていただきます」
ヨハンはくすりと笑う。
「有難うございます。ディートリントです。よろしくお願いします」
アルトゥール様は少し困ったような顔をした。どうしたのかしら?
「そろそろ坊ちゃまはやめてくれないか。お前もエマもいつまでも坊ちゃま呼ばわりだ」
「申し訳ございません。善処いたします」
あの顔は善処する気はないな。
アルトゥール様は小さくため息を付き、傍にいる男性達の紹介を始めた。
「これはブルーノとコンラート。ブルーノは主に事務方の仕事をしてもらっている。コンラートは騎士団の団長で身体を動かす方の仕事をしてもらっている。どちらも私とは生まれた時から一緒にいる信頼できる奴らだ」
二人ともかなり長身だ。さすがに事務方のブルート様は細身だが、身体は鍛えている感じだ。顔も綺麗だし王都に行ったらめちゃくちゃモテるだろう。コンラート様はゴリマッチョだが、顔は丸顔で可愛い。人が良さそうだ。
「ディートリントでございます。よろしくお願いします」
私が礼を取り微笑むと、二人ともガチガチに固まっている。不思議に思いコテンと小首を傾げると、コンラート様が膝から崩れ落ちた。
「可愛い……妖精だ……」
ヤバいわこの人。完全に誤解してる。
「ラート、明後日からディーが鍛錬に参加したいそうだ。初日は私も参加するが、これからはディーだけの日もあるだろうからよろしく頼む」
「へ? 鍛錬?」
コンラート様は目をぱちくりしている。
「辺境の地の騎士団の鍛錬は実戦形式のものが多いとアル様から伺っております。王都ではなかなか実戦がないので最初は足手纏いになると思いますが、一生懸命がんばりますのでよろしくお願いします」
私がそう言うと、コンラート様は真顔になった。
「な、何をおっしゃっているのか? こんなに華奢で可愛い姫様は私達に守られて下さい。アル! まさかお前、この妖精姫様に戦わせるつもりか!」
「本人の希望だからな。まぁ、頼むわ」
コンラート様は納得がいかないような顔でアルトゥール様を睨んでいる。
アルトゥール様は話を続ける。
「ブルーノとヨハンは領地経営のことを教えてやってほしい。女主人の仕事は母が教えるから……」
「アル、いきなりそんなに沢山は無理だろう。まずはこの地に慣れてもらう。家の仕事はそれからゆっくりでいいんじゃないか? 無理して姫様が壊れてしまったらどうする!」
ブルーノ様もなんだかお怒りだわ。それに姫様って。私は姫じゃないんだけどなぁ。
アルトゥール様は私の顔を見て微笑む。
「ディー、こいつらはそう言っているが、どうする?」
「コンラート様、ブルーノ様、大丈夫ですわ。私は見かけはこんなですが、体力はあります。やらせてみて下さい。ダメなら大人しく守られていますわ」
「ぷっ」
メアリーが私の言葉に吹き出した。
「皆様、ご心配はごもっともでございますが、ディー様は見掛け倒しでございます。心配には及びません」
メアリーの言葉にふたりは固まった。
「み、見掛け倒し?」
「はい。見掛け倒しでございます」
メアリーは胸を張り、ふんと鼻を鳴らした。
まぁ、そう言う事で、私の明後日からの鍛錬と執務も決まり、明日の婚姻式を待つばかりとなった。
ほとんどの使用人はこの要塞のような屋敷の中の使用人住居棟で暮らしているそうだ。通いの人も近くに住んでいる。皆さん辺境の地、グローズクロイツ領出身の人だそうだ。
義両親やさっき会ったエマ、家令らしき紳士も大柄だなと思ったが、使用人達も皆、やたら大きい。騎士団の人達と思われる塊はアルトゥール様までとは言わないが王都ではなかなかいないようなゴリマッチョ揃いだ。
皆が揃ったところで、アルトゥール様が声を上げた。
「皆に紹介する。こちらは私に嫁いで来てくれることになったディートリントだ。明日、領地の教会で婚姻式を挙げる。そのあと、この屋敷で領地の皆を招待し、披露パーティーを行う。皆、忙しい中、用意をしてくれて有難う。ディートリントは辺境の地は初めてで慣れないことも多いと思う。皆、助けてやってほしい。よろしく頼む」
みんながざわざわしている。きっと出戻りの令嬢が嫁いでくると聞いていたはず。イメージと違ったのだろう。私、見た目は妖精だからね。
「皆さん、よろしくお願いします」
さっきエマに挨拶したのと同じように頭を下げた。
なんだかキャーキャーと黄色い声が上がっている。
「頭を下げられたぞ」「なんと謙虚な」
「可愛い」「小さい」「妖精みたい」「デッカいアルトゥール様と大丈夫か?」とか、みんな口々に言ってくれている。
誰も中身を知らないからね。ここでは猫を被る気はないからすぐにわかっちゃうわね。きっと。みんな幻滅しちゃうかな。
アルトゥール様が話を続ける。
「そちらにいるのはディートリントについてきてくれた侍女のメアリーだ。皆、この辺境の地について色々教えてやってほしい」
メアリーを見た。メアリーはまさか自分の紹介があるとは思っていなかったようでドギマギしているみたいだ。
「メ、メアリーでございます。ディー様とは子供の頃からのご縁でお仕えいたしております。ディー様と共にこの辺境の地に骨を埋めるつもりで参りました。皆様、よろしくお願いいたします」
メアリー、そんな気持ちでついてきてくれたのね。嬉しくて泣いちゃうわ。
「では、解散。持ち場に戻ってくれ。ディーと顔を合わせた時にそれぞれ自己紹介をしてやってくれ」
「「「「「はい!」」」」
お~ホールに声が響く。凄い!
皆が解散したあと、私も部屋に下がろうしたが、アルトゥール様に声をかけられた。
「ディー、紹介しておく、うちの家令のヨハンだ。エマの夫なんだ。ふたりは若い頃からずっと我が家を支えてくれている。私にとっては使用人というより、叔父、叔母のような人達だ」
「奥様、ヨハンとお呼び下さい。こんな可愛らしい方が坊ちゃまの元に来てくださるなんて夢のようです。坊ちゃまに不満があればいつでもヨハンやエマにお伝えください。坊ちゃまにお灸を据えさせていただきます」
ヨハンはくすりと笑う。
「有難うございます。ディートリントです。よろしくお願いします」
アルトゥール様は少し困ったような顔をした。どうしたのかしら?
「そろそろ坊ちゃまはやめてくれないか。お前もエマもいつまでも坊ちゃま呼ばわりだ」
「申し訳ございません。善処いたします」
あの顔は善処する気はないな。
アルトゥール様は小さくため息を付き、傍にいる男性達の紹介を始めた。
「これはブルーノとコンラート。ブルーノは主に事務方の仕事をしてもらっている。コンラートは騎士団の団長で身体を動かす方の仕事をしてもらっている。どちらも私とは生まれた時から一緒にいる信頼できる奴らだ」
二人ともかなり長身だ。さすがに事務方のブルート様は細身だが、身体は鍛えている感じだ。顔も綺麗だし王都に行ったらめちゃくちゃモテるだろう。コンラート様はゴリマッチョだが、顔は丸顔で可愛い。人が良さそうだ。
「ディートリントでございます。よろしくお願いします」
私が礼を取り微笑むと、二人ともガチガチに固まっている。不思議に思いコテンと小首を傾げると、コンラート様が膝から崩れ落ちた。
「可愛い……妖精だ……」
ヤバいわこの人。完全に誤解してる。
「ラート、明後日からディーが鍛錬に参加したいそうだ。初日は私も参加するが、これからはディーだけの日もあるだろうからよろしく頼む」
「へ? 鍛錬?」
コンラート様は目をぱちくりしている。
「辺境の地の騎士団の鍛錬は実戦形式のものが多いとアル様から伺っております。王都ではなかなか実戦がないので最初は足手纏いになると思いますが、一生懸命がんばりますのでよろしくお願いします」
私がそう言うと、コンラート様は真顔になった。
「な、何をおっしゃっているのか? こんなに華奢で可愛い姫様は私達に守られて下さい。アル! まさかお前、この妖精姫様に戦わせるつもりか!」
「本人の希望だからな。まぁ、頼むわ」
コンラート様は納得がいかないような顔でアルトゥール様を睨んでいる。
アルトゥール様は話を続ける。
「ブルーノとヨハンは領地経営のことを教えてやってほしい。女主人の仕事は母が教えるから……」
「アル、いきなりそんなに沢山は無理だろう。まずはこの地に慣れてもらう。家の仕事はそれからゆっくりでいいんじゃないか? 無理して姫様が壊れてしまったらどうする!」
ブルーノ様もなんだかお怒りだわ。それに姫様って。私は姫じゃないんだけどなぁ。
アルトゥール様は私の顔を見て微笑む。
「ディー、こいつらはそう言っているが、どうする?」
「コンラート様、ブルーノ様、大丈夫ですわ。私は見かけはこんなですが、体力はあります。やらせてみて下さい。ダメなら大人しく守られていますわ」
「ぷっ」
メアリーが私の言葉に吹き出した。
「皆様、ご心配はごもっともでございますが、ディー様は見掛け倒しでございます。心配には及びません」
メアリーの言葉にふたりは固まった。
「み、見掛け倒し?」
「はい。見掛け倒しでございます」
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