【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

金峯蓮華

文字の大きさ
27 / 50

27話 コンラート親子3

しおりを挟む
**
コンラートの亡き妻の名前がアルトゥールの母と被っていたので変更しました。すみません。


「アル、話ってなんだ? 急ぎか? リオを探さないといけないんで忙しいんだけどな」

 サロンにコンラート様が入ってきて、そこにリオネルの姿を見つけ、驚いているようだ。一瞬固まり、リオネルに向かって走ってきて、襟首を掴んで殴ろうとした。

「ラート、やめろ!」

 拳を振り上げたところで、アルトゥール様に後ろから羽交締めにされ、引き離された。

「いきなり殴る奴があるか!」

「し、しかし……」

「お前はいつもそうだ。まずはリオの話を聞いてやれ。まぁ、座れ」

 アルトゥール様に窘められ、コンラート様は椅子に腰掛けた。

「なんで家出したんだ?」

「騎士になりたくなかったからだ」

「お前は騎士になるしかない。他の選択肢はない」

 はぁ~? 何それ? そんなことある訳ないわ。

 前に出ようとしたら、アルトゥール様に手で制止された。顔を見ると首を振っている。様子を見ろってことね。

 リオネルはコンラート様を睨みつけた。

「なぜ? なぜ騎士になるしかないのですか? なぜ他の選択肢はないのですか?」

「それは、お前がラーゲンバッハ家の嫡男だからだ。ラーゲンバッハ家の嫡男は代々騎士団長になると決まっている!」

 そんな理由か。

 リオネルは口角を上げた。

「だったら廃嫡にしてください。嫡男をやめます。なんなら廃籍にしてくれてもいいですよ。ラーゲンバッハの者でなければ騎士にならなくてもいいのでしょう?」

 みるみるうちにコンラート様の顔が真っ赤になっていく。怒っている。これはかなり怒っているな。

「何を馬鹿なこと言っているんだ! 廃籍になってどうするつもりだ! お前みたいな子供が平民になってひとりで生きていけるわけがないだろう!」

 椅子から立ち上がり、またリオネルに殴りかかろうとしたので、アルトゥール様に腕を取られた。

「ラート、少しは冷静になれ。まずはなぜリオが騎士になりなくないかを聞いてやれ。お前には耳がないのか?」

 アルトゥール様はコンラート様の耳を引っ張る。

 コンラート様は椅子に座り直した。

「聞いてやるよ。言ってみろ」

 リオネルは冷静なようだ。

「私は医者になります。もうすぐこの領地に、魔法医師を養成する学校ができると聞きました。特待生か、卒業後、このグローズクロイツ領で働くなら学費は無料だそうです。そして平民でも入学できるそうです。このグローズクロイツ領に医師がいれば母は死なずに住んだのかもしれません。あれから領主様は医師を駐在させてくれるようになりましたが、まだまだ数が足りない。私は母のように発見が遅れて、手遅れになる人がいないようにしたい。そして私のように幼くして母を亡くす者を減らしたいのです。あなたはが反対しても気持ちは変わりません」

 初めて聞いたのだろう。コンラート様は目を見開き固まっている。

「し、しかし、別にお前がならなくても医者を誘致すれば良いだろう?」

「こんな辺境の地に望んでくる者などいませんよ。住んでみたらこのグローズクロイツ領がどれほどいい場所かわかりますが、外から見ている分には何もない辺境の地です。魔獣も出るし、他国からいつ攻めて来られるか分からない。そんな地に来たいですか? 私はグローズクロイツ領が好きです。この地で生まれ、この地に骨を埋めるつもりです。だから私がこのグローズクロイツ領の医者になるのです。騎士団長はザックが適任です。ザックに任せます」

 コンラート様は黙り込んでしまった。

 アルトゥール様がコンラート様の隣に座った。

「お前が廃籍にするならうちの養子にしてもいいぞ」

「だめよ。兄妹になったら結婚できないわ。うちの実家の養子はどう?」

 私の言葉にアルトゥール様もコンラート様もリオネルも驚いたいるようだ。やってしまった……。

「結婚とは?」

 アルトゥール様が私の顔を見た。

「リ、リオネルとリーゼが結婚したらいいのではないかと思ったの。それだけ」

 やらかしたからしら。私はちょっと焦ってしまった。

「私はいいわよ。リオネルと結婚して、グローズクロイツ領で病院をやるのもいいわ。他の人はなかなか信用できないけどリオネルなら信用できる。まぁ、リオネルが嫌じゃなければだけどね」

 突然、アンネリーゼが爆弾発言をした。

「私もリーゼがいい。リーゼとなら私らしくいられる」

 あらあら、おふたりさんは相思相愛みたいね。

「じゃあ、決まりでいいわね。アル、リオネルとリーゼは婚約させてあげましょう。お願いします」

 私はアルトゥール様に微笑んだ。

「う、うん。そうだな。ラートもいいな」

「あぁ。婚約に関しては異存はない」

「騎士にならないことには異存があるのか?」

「医者になりたい理由はわかった。でもお前の代で途切れてしまってはご先祖様に顔向けができない」

 この石頭。まだ言うか。

「廃籍して下さい」

 リオネルも引かない。私はコンラート様の顔を見た。

「あの世に行った時に、ご先祖様に何が言われたら『あれはリオネルが勝手にやったことだ。リオネルが来た時に言ってくれ。私は預かり知らぬ事だ』と言えばいいのではないですか?」

「そうだな。もしくはお前が嫡男にこだわるなら、リオの望み通り廃籍にするか、廃嫡にしてザックを嫡男にするのもありだな。ザックはお前とそっくりだから騎士になりたくないとは言わんだろう?」

「確かにあいつは騎士にしかなれない」

 コンラート様が小さく呟いた。

「リオは亡くなったパトリシアによく似ている。パトリシアは穏やかで聡明で懐の深い人だった。パトリシアが生きていたらリオを支持したと思うぞ。お前もパトリシアが言ったらリオを騎士にすることを諦めたんじゃないか?」

「そ、そんなことは……」

 あるみたいだ。

「そうだな、リオがリーゼと結婚するなら、うちにある、今はあきになっているメルクル子爵を継いでもらおうかな。爵位だけで領地はないが、医師になるなら領地はいらないものな。ということで嫡男はザックに変更。今からリオをメルクル子爵にする手続きをする。異存はあっても聞かん。辺境伯命令だ」

 アルトゥール様はふんと笑う。

「全くもう。わかったよ。お前がそこまで言うなら諦める。私が頭を柔らかくすればいいだけだよな。リオネル、脳筋の親父ですまなかった。お前の話をちゃんと聞いてやればよかったな。まぁ、聞いても頭ごなしに怒鳴るだけだっただろうけど。アル、ディー様、ありがとう。こんな機会でもなけりゃ、リオとは話せなかったと思う」

 コンラート様は頭を下げた。

 あっという間にリオネルの進路、リオネルとリーゼの婚約が決まってしまった。

◇◇◇

「リオ、私と婚約してよかったの?」

「リーゼこそ、よかったのか?」

 ふたりは仲睦まじい。

「メルクル子爵」

 リオネルに呼びかけてみると、不思議な顔をしている。

 リオネルは結婚するまでは、今まで通りラーゲンバッハ家に住むが、国王陛下から承認がおり次第、メルクル子爵になる。

 リオネル・ラーゲンバッハからリオネル・メルクルになる。

 なんだか、今日1日でリオネルの世界が変わったような変わらないような。

 私は仲睦まじく微笑みあうふたりを見て、そっと部屋から出た。



***
すみません。明日の更新はお休みします。
朝早くから夜まで予定があり、書く時間をそうもありません。もしも書けたら夜遅く更新するかもです。勝手を申しましてすみません。よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...