【完結】婚約解消したら消されます。王家の秘密を知る王太子の婚約者は生き残る道を模索する

金峯蓮華

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残念な婚約者

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「エル、どうしよう」

「何かあったのですか?」

「好きになってしまったんだ。私はミレーユと結婚したい」

「……」

 私に自分の恋愛の相談をしてきたのはこの国の王太子のカールハインツ・ラメルテオン。私の婚約者だ。

 私達は3歳の時に婚約した。

 王太子妃教育や王妃教育の為に毎日王宮に通っていて、殿下と一緒にいた私は殿下の中ではいずれ妻になる婚約者という認識ではなく、困ったことがあるとなんでも助けてくれる頼りになる姉のような認識を持っているようだ。

 でないと恋愛相談などしないだろう。

「カール様、ミレーユとはどなたなのですか?」

「王立学園のひとつ下の学年なんだ。すごく可愛くていい子なんだよ」

「爵位は?」

「爵位? 確か男爵令嬢だったと思う」

 男爵令嬢か。側妃は無理だな。愛妾にならできないこともない。

「カール様、残念ですが、王家と縁続きになれるのは伯爵以上の爵位を持つ家門の令嬢だけです。男爵令嬢ではなれても愛妾ですわね」

 カール様は悔しそうに歯を食いしばる。

「愛妾なんてそんなひどいことはできない。私はミレーユを正妃にしたいんだ」

 正妃??? 何を言っているんだ?

「カール様、ミレーユ嬢を正妃にする為には私と婚約解消をし、そしてミレーユ嬢をどちらかの伯爵以上の家門の養女にしなくてはなりません」

「え?」

「え? ではありません。ミレーユ嬢は王太子妃の公務はできますか? 婚約を解消したら、王家のことを知りすぎている私は秘密裏に消されます。そうなると今までのようにカール様の事をフォローすることはできません。ミレーユ嬢に私の代わりが務まりますでしょうか?」

 カール様は目を限界まで見開いて固まっている。

 こんな子供でもわかるような事に気がつかなかったのだろうか?

 私は情けなくなり、ため息をついた。

「エルは死ぬのか?」

「はい。生かしてはもらえないでしょうね。私は秘密を知りすぎています」

「今までのようにエルが難しい事をしてくれて、私を助けてくれて、それでミレーユと結婚することはできないのか」

 カール様は良い人なんだけど、国王になるは無理がある。だから王妃様はカール様の足りないところを補う為に私を早くから婚約者にし、王家に必要な事を叩き込んだ。

 こんな事言ったら不敬で処罰されるかもしれないが、今、私が死んだら、私にかけた時間もお金も無駄になる。
 それにカール様が国王になり、その男爵令嬢が王妃になったらこの国は滅びるだろう。
 その男爵令嬢はどれくらいできる奴なのか?

 王妃様に相談するべきか? それとも逃げるべきか?

「困るよ~。エルがいなくなったら困る。どうしよう。どうしたらいい?」
知らんがな。
泣き出した王太子を見ながら私はため息をついた。

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