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我が家
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屋敷に戻り、戦闘用のドレスを脱ぎ自宅用の少し緩いドレスに着替える。
本当なら髪もほどき、化粧も落として部屋着に着替えたいが、ベッドに入るまでは本気で気を抜くわけにはいかない。
「エル、随分険しい顔ね。王宮で何かあったの?」
母は鋭い。
「はい。色々と」
私がため息をつくとほほほと笑う。父も首を突っ込んできた。
「可愛いエルにため息をつかせるなんてけしからん。消すか?」
王太子を消すのはちょっとヤバいですわ。お父様。
父は筆頭公爵。世間からは厳しい人として怖がられているが家では妻と娘が大好きなちょっと過激な親バカな父親だ。
国王とは子供の頃からの側近でプライベートでも多分親友で、とても仲がいい。
父は魔法省で大臣をしていて、この国の筆頭魔導士だ。その遺伝子のせいか私もかなり魔力があり、魔法が使える。王家が私を婚約者にしておきたいのは魔力が強いからかもしれない。
私は食事が終わってから弟に男爵令嬢のことを聞いてみた。
「ねぇ、マリウス、ミレーユっていう男爵令嬢のこと知ってる?」
向かいに座る弟のマリウスは急に難しい顔になった。
「とうとう姉上の耳に入ってしまいましたか」
「ええ、入ってしまったの。知る限りの事を教えてちょうだい」
マリウスはミレーユ嬢とは同じクラスらしい。
「私が知っているのは皆が知っている噂話で真実はどうだかわかりません。それでもいいですか」
私が頷くとマリウスはミレーユ嬢のことを話してくれた。
ミレーユ嬢はインクレミン男爵の庶子で母親は平民だそうだ。
両親は愛し合いミレーユを孕ったが、伯爵令嬢と婚約していたミレーユ嬢の父と結婚することはできなかった。
男爵が結婚したあとも愛人として囲われていたが、昨年夫人が亡くなり、インクレミン男爵は愛人だったミレーユ嬢の母と再婚した。そしてミレーユ嬢は男爵令嬢となり、王立学園に通うことになったそうだ。
つい最近まで平民だったせいかマナーなどはまだまだだめだが、小柄で可愛らしく庇護欲を掻き立てられるタイプらしい。
「マリウスは庇護欲を掻き立てられないの?」
私の問いに弟は笑う。
「庇護欲ですか? ないですね。私はまだまだ誰かを庇護できるほどのチカラはありませんよ」
相変わらず辛辣だ。マリウスはカール様や側近の方々が庇護できるようなチカラもないくせに馬鹿じゃないのかと思っているのだろう。
「テオは引っかかっていないそうじゃない」
「テオドール様は黒いですからね」
いやいや、我が弟よ、君も十分黒いよ。
「それでその男爵令嬢はどうなの? まともなの? 邪悪なの?」
「私にはわかりませんよ。ただ前男爵夫人が亡くなったのも病死なのかどうか疑わしいらしいですよ。前夫人が亡くなれば誰が得をするか考えたら、ただの病死とは思えない。まぁ噂ですがね」
マリウスは右手をひらひら振りながら自室に戻った。
カール様とその男爵令嬢が真実の愛なら応援しないでもないが、騙されているのならそれなりに対処しなきゃならない。
マリウスは真実の愛とは思っていないようだ。
私が考え込んでいると、父がぽつりと言った。
「エルも学園に行ってみてはどうだ?」
「私が? 学園にですか?」
「あぁ、飛び級で卒業しているが、校長は国王だし、ねじ込むことは可能だろう。なんなら魔法で別人になり、転校してはどうだ?」
「あら、それ面白いですわね。誰かに聞くよりエルが見極めるのがいちばんだわ。どうせカール殿下がらみなんでしょ?」
確かにカール様がらみだけど……。
面白がりで迅速な父母はすぐさま国王に連絡をとり、私は何故か友好国からの留学生という事でしばらくの間、学園に通わされることになった。
勘弁してほしいわ。
本当なら髪もほどき、化粧も落として部屋着に着替えたいが、ベッドに入るまでは本気で気を抜くわけにはいかない。
「エル、随分険しい顔ね。王宮で何かあったの?」
母は鋭い。
「はい。色々と」
私がため息をつくとほほほと笑う。父も首を突っ込んできた。
「可愛いエルにため息をつかせるなんてけしからん。消すか?」
王太子を消すのはちょっとヤバいですわ。お父様。
父は筆頭公爵。世間からは厳しい人として怖がられているが家では妻と娘が大好きなちょっと過激な親バカな父親だ。
国王とは子供の頃からの側近でプライベートでも多分親友で、とても仲がいい。
父は魔法省で大臣をしていて、この国の筆頭魔導士だ。その遺伝子のせいか私もかなり魔力があり、魔法が使える。王家が私を婚約者にしておきたいのは魔力が強いからかもしれない。
私は食事が終わってから弟に男爵令嬢のことを聞いてみた。
「ねぇ、マリウス、ミレーユっていう男爵令嬢のこと知ってる?」
向かいに座る弟のマリウスは急に難しい顔になった。
「とうとう姉上の耳に入ってしまいましたか」
「ええ、入ってしまったの。知る限りの事を教えてちょうだい」
マリウスはミレーユ嬢とは同じクラスらしい。
「私が知っているのは皆が知っている噂話で真実はどうだかわかりません。それでもいいですか」
私が頷くとマリウスはミレーユ嬢のことを話してくれた。
ミレーユ嬢はインクレミン男爵の庶子で母親は平民だそうだ。
両親は愛し合いミレーユを孕ったが、伯爵令嬢と婚約していたミレーユ嬢の父と結婚することはできなかった。
男爵が結婚したあとも愛人として囲われていたが、昨年夫人が亡くなり、インクレミン男爵は愛人だったミレーユ嬢の母と再婚した。そしてミレーユ嬢は男爵令嬢となり、王立学園に通うことになったそうだ。
つい最近まで平民だったせいかマナーなどはまだまだだめだが、小柄で可愛らしく庇護欲を掻き立てられるタイプらしい。
「マリウスは庇護欲を掻き立てられないの?」
私の問いに弟は笑う。
「庇護欲ですか? ないですね。私はまだまだ誰かを庇護できるほどのチカラはありませんよ」
相変わらず辛辣だ。マリウスはカール様や側近の方々が庇護できるようなチカラもないくせに馬鹿じゃないのかと思っているのだろう。
「テオは引っかかっていないそうじゃない」
「テオドール様は黒いですからね」
いやいや、我が弟よ、君も十分黒いよ。
「それでその男爵令嬢はどうなの? まともなの? 邪悪なの?」
「私にはわかりませんよ。ただ前男爵夫人が亡くなったのも病死なのかどうか疑わしいらしいですよ。前夫人が亡くなれば誰が得をするか考えたら、ただの病死とは思えない。まぁ噂ですがね」
マリウスは右手をひらひら振りながら自室に戻った。
カール様とその男爵令嬢が真実の愛なら応援しないでもないが、騙されているのならそれなりに対処しなきゃならない。
マリウスは真実の愛とは思っていないようだ。
私が考え込んでいると、父がぽつりと言った。
「エルも学園に行ってみてはどうだ?」
「私が? 学園にですか?」
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「あら、それ面白いですわね。誰かに聞くよりエルが見極めるのがいちばんだわ。どうせカール殿下がらみなんでしょ?」
確かにカール様がらみだけど……。
面白がりで迅速な父母はすぐさま国王に連絡をとり、私は何故か友好国からの留学生という事でしばらくの間、学園に通わされることになった。
勘弁してほしいわ。
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