【完結】婚約解消したら消されます。王家の秘密を知る王太子の婚約者は生き残る道を模索する

留学生に化ける

　学園に通ってカール様と男爵令嬢の様子を見るのと並行して、逃げる準備も始めることにした。

　移動魔法で国外に出て、幻影魔法で姿を変えよう。

　どこの国に行くかな？　

　平民の女性ひとりでも生きていけそうな国がいい。

　私は魔法を使えるし、強いので冒険者としてギルドに登録しておけば、生活はできるだろう。

　まぁ、とりあえず今日から学園だ。

　私はキシロカイン公爵家の親戚でセフォチアム王国のハイデマリー・ニコランジルということになり、留学中は親戚の公爵家に滞在し、学園に通っているという設定になった。

　ちなみにハイデマリーは実在の人物。私の従姉妹だ。
　もちろんハイディに許可を取り化けることになった。

　父も母もノリノリだ。弟は若干引き気味で覚めた目で見ている。

「姉上、幻影魔法ばっちりですね。実際のハイディ姉上とは全くの別人ですが。まぁ、セフォチアムとは離れていて我が国とは友好国ですが、あまり行き来はないので、ちょうど良かったですね。それにこれなら誰も姉上とはわかりませんよ」

「でも、見る人が見たらわかるのよ。カール様とか側近達はわかると思うけど、何が言われたら適当に答えておくわ」

「そうですね。男爵令嬢を調べるために潜入したと言うのも変な感じですものね」

　マリウスは乾いた笑いを見せる。

　玄関ホールに行くと母が待っていた。母は悪い顔をして笑いを浮かべている。本当にこの人は面白がりで困る。

「エル、いつものあなたも素敵だけど、ハイデマリーのあなたも可愛いわ。本人とは似ても似つかないハイデマリーだけど、庇護欲誘う感じだわ～」

　母は完全に面白がっている。ハイディが聞いたらきっと激怒するだろう。

　ちなみにハイデマリーの容姿は父母、国王夫妻の要望で男爵令嬢のように庇護欲をくすぐる感じにしようということになった。

　絶対みんな面白がっている。遊んでるとしか思えないわ。

　父も姿をあらわした。

「エル、気をつけて行っておいで。王家が影をつけてくれているそうだから危険なことがあっても大丈夫だ。まぁ、お前なら影などいらんだろうが……」

　まぁ、私は強いから別に護衛などはいらない。

「影ですか。まぁ、つけていただけた方が国王夫妻に正しい報告がいくのでありがたいです」

　罠に嵌められるようなことがあっても影が見ているなら安心だ。男爵令嬢サイドの人間がほんとに前男爵夫人を手にかけたのなら、カール様や側近に近づいたら何らかのアクションを起こしてくるはずだ。

「姉上！　行きますよ！」

「はーい」

　私はマリウスと一緒に馬車に乗り、学園に向かった。