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夢ではなかったのか?(ブランシュ視点)(ミッシェル[ハワード]視点)
しおりを挟む前半ブランシュ視点、途中からミッシェル(ヘンリー)視点になります。
ーブランシュ視点ー
夢でも殺されるのね。
夢の中ではクロヴィス様と結婚できて幸せだったわ。
夢の中では優しいお姉様やお兄様がいて幸せだった。
でもまたあの男に殺されるのか。
夢の中では一度も会うこともなかったのに。私が何をしたというのよ。
こんなに何回も何回も刺されるなんて余程恨まれているのね。
「ブランシュ!」
「ブランシュ死ぬな!」
クロヴィス様、ヘンリーお兄様も来てくれたのね。
「ブランシュ! 誰にやられた⁈」
「オ…ス…カー」
「オスカーだと!」
ヘンリーお兄様は見たこともないような怖い顔をしている。
あぁもう何も見えなくなってきた。
「クロ…ヴィ…スさま…ありが…と…」
「逝くな! 逝くなブランシュ! 」
クロヴィス様が私を抱きしめて泣いている。
洋服が血で汚れてしまうわ。
あれ、私?
魂が身体から抜けたのかしら?
今度こそ幸せになれると思ったのに。
ーミッシェル(ヘンリー)視点ー
「2度もあの男に殺されるなんて……」
「2度も?」
私の呟きをクロヴィスが聞き返した。
「あぁ、この世界は私が巻き戻した。クロヴィスも前の記憶があるんだろう?」
「巻き戻した? 夢の中の話ではなかったのか? ヘンリー、お前は誰なんだ? ブランシュの兄は5歳の時に亡くなったと聞いていた。私は今は死んでから神様が見せてくれている夢だと思っていた」
「私はブランシュ……いや母上の息子のミッシェルだ。母上があの男に殺された後、爵位も領地も全てを売り闇魔導士に魔法で時間を巻き戻してもらった」
「では、夢ではないのか? ブランシュはまたあの男に殺されたのか? 今度は何の接点もないのに。許さない……今度こそブランシュを取られたくなかった。だから急いで入籍をしたのに」
クロヴィスは握りしめた拳に爪がくいこんだのだろう。血が滴り落ちている。
「ヘンリー、私は巻き戻る前の世界では一矢も報わずブランシュに殉死した。でも今度はオスカーを殺す。捕縛などさせない。この世の地獄を味合わせながらゆっくりとなぶり殺しにしてやる。ブランシュを頼む」
クロヴィスはブランシュにキスを落とし、立ち上がって外に出ていった。
私はブランシュを抱きしめた。
許せない。
オスカー、地獄に落としてやる。
そしてあの闇魔導士もだ。
探し出し、締め上げよう。クロヴィスはまだいいが、なぜオスカーに記憶を残したんだ。あの男はきっと逆恨みをしてブランシュを殺した。始まる前に殺せばいいとでも思ったのだろう。
1週間後、オスカーは身体をバラバラにされた状態で見つかった。
生きたまま少しづつ切り刻まれたようだ。
鬼と化したクロヴィスがそうしたのだろう。
あれからクロヴィスは行方不明だ。
姉上と私は闇魔導士のところに来た。
扉を開き中に入ろうとしていたら黒い影があらわれた、
「クロヴィス?」
「私も同席させてくれ」
「もちろんだ」
私達は密かに中に入った。
闇魔導士は椅子に座っていた。
私は後ろから羽交締めにし、クロヴィスは喉元に剣を当てている。
「どういうことか説明してもらおうか。記憶があるのは私と姉だけの約束だろう。クロヴィスだけならまだしもオスカーまで記憶かあり、母上を斬殺した責任をどう取ってもらおうか?」
「オスカーと同じように生きたまま切り刻んでやろうか?」
クロヴィスは心を壊しているようだ。
「ひとりやるもふたりやるも同じだ」
姉は闇魔導士の前に立った。
「わざとなの? それとも失敗したの? 答えによってはこの指を突き刺すわ」
綺麗に赤く染めた長い爪を闇魔導士の目に当てている。
目は魔導士の弱点だ。目を潰されると魔力が無くなり生きる屍となる。
爪で目をつぶすとは姉も心を壊しているようだ。
「ま、待ってくれ! 失敗だ。失敗したんだ。今度こそちゃんとやる。ちゃんとやるから許してくれ! 金も返す」
「金などいらない。ちゃんとやり直すのか」
「あぁ、ちゃんとやる。そうだ! ルブラウン侯爵家は消してしまおう。初めから存在しなかったことにする。それでどうだ。お前達もオスカーを切り刻んで殺したので仕返しはもういいだろう? 兄や姉に生まれ変わるのもやめにしよう。ルブラウン侯爵家さえなければお前の母親は好きな男と結婚していただろう? そしてお前達は必ずまた母の子として生まれてくる約束をする」
「今度失敗したり、約束を違えたら、どこまでも追いかけて目をつぶすからな。お前だけ幸せにはしない」
私は魔法で闇魔導士の後ろ首にどこにいても必ずわかる魔道具を挿入した。
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