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28 幽霊犬グレーとアデーレへの告白
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俺は自分の部屋で一人になると、空中に向かって吠えた。
「わん!」
『ワン!』
するとグレーも出て来て一緒に吠えた。
俺はグレーを見つめる。
『あ、お久しぶりですねミッチー!』
幽霊犬グレーが、ハッハッハッと舌を出して息をする。
「グレー、今までどこに居たんだ? けっこう呼んだんだぞ」
『どこって、ずっと一緒にいましたよ!』
「へ?」
グレーがぴょんと跳ねて、空中を駆ける。
『ミッチーの姿が変わって魂の形が変わったせいで、なかなか外に出られなかったんですよ』
たったったっ、とグレーは走っている。
「魂の形が変わる……」
『私とミッチーの魂は合体してますから、私も影響を受けます。と言うかほら、最初の時も一ヶ月くらいはミッチーの前に姿を出せなかったでしょ』
「む、言われてみれば」
最初この世界に来た時、グレーは俺の前に出て来なかった。
初めて会ったのはこの世界に来て一ヶ月後ぐらいだったと思う。
『もうちょっと慣れれば外に出られるかなぁと思ってたんですけど。その前に、ミッチーの姿が元に戻っちゃいましたね』
たしっと、俺の前で止まって見上げて来る。
「俺なんで、姿が変わったんだと思う?」
『クーン』
グレーが耳を下げる。
『ミッチーの姿が変わった時、ミッチーの魂は悲しみと怒りに満ちていました。とても強い感情でした。あれがきっかけになって、魂が形を変えるのを私は見ていました』
アデーレが撃たれた時の事を思い出す。
俺はグレーの頭を撫でる。
「すまん、守れなくて」
グレーが俺の手をペロリと舐める。
『今日、姿が元に戻ったのはきっと、安心したからですね』
俺は固まる。
『アデーレ様の隣で寝れてよかったですね♡ アデーレ様って、とっても良い匂いがして、一緒に寝てるとすっごく幸せな気持ちになりますよねぇ♡』
「グレー、おまえって、姿を消してる間の記憶ってあるのか」
『表には出れませんけど、ちゃんとありますよ』
俺は顔を覆った。
『昨晩はお楽しみでしたね!』
「うぅ!!!」
しばらく丸まって羞恥に耐えた。
俺ははっとする。
「違うそうじゃない。俺はおまえに大事な話しがあるんだ」
グレーを真っ直ぐ見る。
「グレー、アデーレにおまえの事を言って良いか」
『ダメです』
「即答かよ……」
『だって、アデーレ様泣いちゃいますもん』
「まぁ、確かに泣くだろうけど、一つの不安は払拭出来る可能性がある」
グレーは首をかしげる。
「アデーレは俺と何かがくっついている可能性に気づいている。何とくっついるのかわかれば、安心するはずだ。それこそ、突然俺が暴れて化物になる可能性は無いって教えてやれる」
以前の異世界転移者は、きっとソリの合わない者同士でくっついたのだろう。
その点、俺はくっついた相手がこの愉快な幽霊犬グレーなので安心だった。
彼と仲違いして分裂したいとは、特に思わない。
『むむむむっ、アデーレ様に泣かれるのは嫌ですけど、アデーレ様に不安な気持ちで居てほしくもありません……』
グレーが眉間にきゅっとシワを寄せて悩んでいる。
『わかりました! アデーレ様に言っても良いですよ!』
「本当か!」
『ただし、アデーレ様には三日程おやすみをとって貰いましょう』
「な、なんでだ」
『アデーレ様が泣くお時間を作る為です。あとミッチーはずっとアデーレ様の側にいないとダメですよ!』
グレーに、足を踏まれる。
「わ、わかったよ」
『約束ですからね!』
「りょーかい」
彼の手をきゅっと握って、頷いた。
つづく
「わん!」
『ワン!』
するとグレーも出て来て一緒に吠えた。
俺はグレーを見つめる。
『あ、お久しぶりですねミッチー!』
幽霊犬グレーが、ハッハッハッと舌を出して息をする。
「グレー、今までどこに居たんだ? けっこう呼んだんだぞ」
『どこって、ずっと一緒にいましたよ!』
「へ?」
グレーがぴょんと跳ねて、空中を駆ける。
『ミッチーの姿が変わって魂の形が変わったせいで、なかなか外に出られなかったんですよ』
たったったっ、とグレーは走っている。
「魂の形が変わる……」
『私とミッチーの魂は合体してますから、私も影響を受けます。と言うかほら、最初の時も一ヶ月くらいはミッチーの前に姿を出せなかったでしょ』
「む、言われてみれば」
最初この世界に来た時、グレーは俺の前に出て来なかった。
初めて会ったのはこの世界に来て一ヶ月後ぐらいだったと思う。
『もうちょっと慣れれば外に出られるかなぁと思ってたんですけど。その前に、ミッチーの姿が元に戻っちゃいましたね』
たしっと、俺の前で止まって見上げて来る。
「俺なんで、姿が変わったんだと思う?」
『クーン』
グレーが耳を下げる。
『ミッチーの姿が変わった時、ミッチーの魂は悲しみと怒りに満ちていました。とても強い感情でした。あれがきっかけになって、魂が形を変えるのを私は見ていました』
アデーレが撃たれた時の事を思い出す。
俺はグレーの頭を撫でる。
「すまん、守れなくて」
グレーが俺の手をペロリと舐める。
『今日、姿が元に戻ったのはきっと、安心したからですね』
俺は固まる。
『アデーレ様の隣で寝れてよかったですね♡ アデーレ様って、とっても良い匂いがして、一緒に寝てるとすっごく幸せな気持ちになりますよねぇ♡』
「グレー、おまえって、姿を消してる間の記憶ってあるのか」
『表には出れませんけど、ちゃんとありますよ』
俺は顔を覆った。
『昨晩はお楽しみでしたね!』
「うぅ!!!」
しばらく丸まって羞恥に耐えた。
俺ははっとする。
「違うそうじゃない。俺はおまえに大事な話しがあるんだ」
グレーを真っ直ぐ見る。
「グレー、アデーレにおまえの事を言って良いか」
『ダメです』
「即答かよ……」
『だって、アデーレ様泣いちゃいますもん』
「まぁ、確かに泣くだろうけど、一つの不安は払拭出来る可能性がある」
グレーは首をかしげる。
「アデーレは俺と何かがくっついている可能性に気づいている。何とくっついるのかわかれば、安心するはずだ。それこそ、突然俺が暴れて化物になる可能性は無いって教えてやれる」
以前の異世界転移者は、きっとソリの合わない者同士でくっついたのだろう。
その点、俺はくっついた相手がこの愉快な幽霊犬グレーなので安心だった。
彼と仲違いして分裂したいとは、特に思わない。
『むむむむっ、アデーレ様に泣かれるのは嫌ですけど、アデーレ様に不安な気持ちで居てほしくもありません……』
グレーが眉間にきゅっとシワを寄せて悩んでいる。
『わかりました! アデーレ様に言っても良いですよ!』
「本当か!」
『ただし、アデーレ様には三日程おやすみをとって貰いましょう』
「な、なんでだ」
『アデーレ様が泣くお時間を作る為です。あとミッチーはずっとアデーレ様の側にいないとダメですよ!』
グレーに、足を踏まれる。
「わ、わかったよ」
『約束ですからね!』
「りょーかい」
彼の手をきゅっと握って、頷いた。
つづく
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