16 / 21
16章 地震の後で何かが起こった?
しおりを挟む
次の日、涼介はホテル内の小会議室に向かった。訓練に使った部屋以上にセキュリティーが厳重で、入り口付近に警備員が何人か立っていた。
山本調査員はドアの付近で他の黒服と話をしていが、涼介に気づいて振り向いた。
「おはようごさいます、蓮見さん。よろしくお願いします。これをどうぞ」
山本はプラスチックの書類フォルダーを二つ持っていた。そのうちの一つを涼介に渡した。開けると5ミリほどの厚みになる書類がファイルされ、右にはノートパッド、中央にはボールペンが付いていた。
書類フォルダーの背表紙のところに「STL」というアルファベットの頭文字があるのが気になった涼介は、山本に尋ねた。
「これは何のことですか」
「極秘資料ですので、パッと見た目にはわからないようにしてますね」
「はあ」
「スペース・タイム・リーパー対策の頭文字です。現在のところ、それしか適切な名称のつけ方が無いと聞いてます」
「…」
「こちらへ」
会議室に入ると、大テーブル周りにはすでに多くの人が座っていたが、そのメンバーを見回した涼介は目を見開いた。明らかに政治家と見られる背広姿の年配の男性が数人、大地震後のニュース放映に出てくるような、ワイシャツの上に作業衣風のジャケットを着た人などがいたからだ。
山本は会議室の上座に座っている別の黒服に会釈をした。
「この方は私の上司、実行委員会執行部、吉田部長です」
会議が始まり、吉田部長が口を開く。
「まず今回の異常現象対策において我々が知っておくべき基礎知識を、文科省及び内閣中央防災会議専門調査会から説明していただきます」
地震の専門家である大学教授が演壇に立った。
「それでは緊急時であり、ポイントのみをとの要請に応じてお話しさせていただきます。
皆様ご存知のように、日本は4つのプレートの層上に位置しております。それらが複雑に衝突しあうという世界に類を見ない環境にあり、日本列島が数々の自然災害に見舞われる要因となっています。火山活動と地震の予知と災害対策は我が国では必須であったので、古くから文書に記録が残されています…」
え…。これは何の話? 地球物理学の講義じゃあるまいし。涼介は落ちつかず、背中がもぞもぞして来た。山本調査員が笑ってコッソリと涼介に言った。
「もう少し我慢してください。すぐに本題に入りますよ」
「本題とは?」
「十数年前の大地震や災害が、異常な現象を引き起こしたってことです。公には伏せられてますけど」
大学教授は話を続ける。
「…地震の前に、科学的に説明できない現象が起こることは世界的に知られています。動物たちが異常行動を起こすことなどです。人間が進化の過程で失った知覚能力を動物たちは保持しています。彼らは身の危険を予知することができると言われています。…実は、地震後にも異常な現象が起きるという報告は以前からありましたが、ほとんど公になっていません。あまりに不可解で、科学的な説明が不可能だったせいです。そのため『神隠し』や『異形の魔物の出現』などの民間に言い伝えとして残されていたりします」
研究者が示すスライドを見て聴衆の間でヒソヒソと話し声が起こり、笑い声も聞こえた。
研究者は表情を変える事なく話を続けた。
「科学的な裏付けなしに言いますと、大地が揺れて崩れる凄まじいエネルギーが地底から放出されたことでこれらの現象が発生した可能性があります。その後決定的なカタストロフが起きないのは、放出されたエネルギーはやがて消滅するからです。しかし、もし…」
研究者は言葉を切り、聴衆を見回した。
「…もし、このエネルギーを何者かが利用できたらどうなるか。それは不可能ではないのです。これで私の話は終わらせていただきます」
聴衆たちは顔を見合わせ、ざわざわと話し声がした。あちこちで手が上がった。
「その異常現象が現実に起こっているのですか」
「何か説明不能な物が出現したのですか」
研究者が演壇を降りた後も人々は口々にしゃべっている。笑い声も混じった。
山本調査員はドアの付近で他の黒服と話をしていが、涼介に気づいて振り向いた。
「おはようごさいます、蓮見さん。よろしくお願いします。これをどうぞ」
山本はプラスチックの書類フォルダーを二つ持っていた。そのうちの一つを涼介に渡した。開けると5ミリほどの厚みになる書類がファイルされ、右にはノートパッド、中央にはボールペンが付いていた。
書類フォルダーの背表紙のところに「STL」というアルファベットの頭文字があるのが気になった涼介は、山本に尋ねた。
「これは何のことですか」
「極秘資料ですので、パッと見た目にはわからないようにしてますね」
「はあ」
「スペース・タイム・リーパー対策の頭文字です。現在のところ、それしか適切な名称のつけ方が無いと聞いてます」
「…」
「こちらへ」
会議室に入ると、大テーブル周りにはすでに多くの人が座っていたが、そのメンバーを見回した涼介は目を見開いた。明らかに政治家と見られる背広姿の年配の男性が数人、大地震後のニュース放映に出てくるような、ワイシャツの上に作業衣風のジャケットを着た人などがいたからだ。
山本は会議室の上座に座っている別の黒服に会釈をした。
「この方は私の上司、実行委員会執行部、吉田部長です」
会議が始まり、吉田部長が口を開く。
「まず今回の異常現象対策において我々が知っておくべき基礎知識を、文科省及び内閣中央防災会議専門調査会から説明していただきます」
地震の専門家である大学教授が演壇に立った。
「それでは緊急時であり、ポイントのみをとの要請に応じてお話しさせていただきます。
皆様ご存知のように、日本は4つのプレートの層上に位置しております。それらが複雑に衝突しあうという世界に類を見ない環境にあり、日本列島が数々の自然災害に見舞われる要因となっています。火山活動と地震の予知と災害対策は我が国では必須であったので、古くから文書に記録が残されています…」
え…。これは何の話? 地球物理学の講義じゃあるまいし。涼介は落ちつかず、背中がもぞもぞして来た。山本調査員が笑ってコッソリと涼介に言った。
「もう少し我慢してください。すぐに本題に入りますよ」
「本題とは?」
「十数年前の大地震や災害が、異常な現象を引き起こしたってことです。公には伏せられてますけど」
大学教授は話を続ける。
「…地震の前に、科学的に説明できない現象が起こることは世界的に知られています。動物たちが異常行動を起こすことなどです。人間が進化の過程で失った知覚能力を動物たちは保持しています。彼らは身の危険を予知することができると言われています。…実は、地震後にも異常な現象が起きるという報告は以前からありましたが、ほとんど公になっていません。あまりに不可解で、科学的な説明が不可能だったせいです。そのため『神隠し』や『異形の魔物の出現』などの民間に言い伝えとして残されていたりします」
研究者が示すスライドを見て聴衆の間でヒソヒソと話し声が起こり、笑い声も聞こえた。
研究者は表情を変える事なく話を続けた。
「科学的な裏付けなしに言いますと、大地が揺れて崩れる凄まじいエネルギーが地底から放出されたことでこれらの現象が発生した可能性があります。その後決定的なカタストロフが起きないのは、放出されたエネルギーはやがて消滅するからです。しかし、もし…」
研究者は言葉を切り、聴衆を見回した。
「…もし、このエネルギーを何者かが利用できたらどうなるか。それは不可能ではないのです。これで私の話は終わらせていただきます」
聴衆たちは顔を見合わせ、ざわざわと話し声がした。あちこちで手が上がった。
「その異常現象が現実に起こっているのですか」
「何か説明不能な物が出現したのですか」
研究者が演壇を降りた後も人々は口々にしゃべっている。笑い声も混じった。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる