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episode 0 琴音
しおりを挟むーー私のお兄ちゃんは……
優しくて……いつも側にいてくれて……
私の事をいつも見てくれていた……
でも今は……
ーー私には興味がない
◆
私は夢を見ていた。小さい頃の夢……
ーーそれは夏祭りでの大切な思い出。
「お兄ちゃん、待ってよぉ……」
「遅いぞ~琴音! 早く来ないと置いてくぞー?」
「待ってよぉ……」
「しょうがないな~ ほら、手」
「うん……」
すると祭り会場の夜空に輝く満天の花火が打ち上げられ、私とお兄ちゃんはそれに見惚れていた。
「わぁー! 綺麗ー!」
「うん! そうだ琴音、ここの花火を一緒に見ると願い事が叶うんだってさ!」
「願い事……?」
「うん! 琴音の願い事ってなんだ?」
「私の願い事……? 私、お兄ちゃんとずっと一緒にいたい! 」
「ぷっ、あははは、なんだよそれー」
「わ、笑わないでよぉ……」
「琴音とはこれからもずっと一緒じゃん!」
「ほんと……?」
「約束するよ!」
「わぁ! ありがとう! 」
「っーーーー?!」
私はそこで目を覚ました。またこの夢だ……気がつけば私の目から何かが溢れ落ちていた。
ーーそれは涙だった。
「あれ……? 私……なんで泣いて」
自分でも何故涙が溢れ落ちているのかさっぱりわからない。
嬉しいはずなのに、大切な思い出なはずなのに、なんで……?
大切な思い出だから泣いてる? それは違う。じゃあ悲しいから泣いてる?
ーーでもその理由がわからない。
「はぁ……何やってるんだろ、私」
私が夢で見るのはいつも同じ場面。まるでその他の事には蓋をしているかのような感じ。
他には何も思い出せない。思い出そうとすればするほど大粒の涙が私の邪魔をしてくる。
もしかしたら一瞬のトラウマみたいな物なのかな?
でも理由がわからないんじゃトラウマとは言えないのかもしれない。
ってバカじゃないの?! そんな理由もわからない事でメソメソしてちゃいけない……
周りの人にメソメソしてる自分は見られたくない……特にお兄ちゃんには……
私は小さい頃から泣き虫だった。よくお兄ちゃんにもまた琴音が泣いてると良く言われていた。
お菓子の取り合いでたくさん喧嘩もしたっけ。
まぁ、今思うとほんとにそんなことでって感じだけど……
私はたぶんかなりの、かまってちゃんだったんだろうなぁ。
泣くとお兄ちゃんがいつも側にいてくれるとずっと思っていたのかも。
でもそれも小学二、三年までの期間限定だったなぁ。
当然だと言われてしまえばそれまでなんだけど、それからは態度はガラっと変わり一切私には興味すら示さなくなった。
お兄ちゃんは友達もたくさんできたみたいでいつも遊びに行ってばっかり。
帰ってきても私と話す事もなく一日が終わっていた。
私は悲しかったのか、寂しかったのか、あんまり良くそのときの事は覚えてない。
ただ一つ言える事があるとすれば……
ーーそれ以来、私はお兄ちゃんが嫌いになった。
◆
「おっはよ~、こーとりーん!」
私が中学高へ向かっていると同じクラスの瑠璃ちゃんが手を振りながら近寄ってきた。
「あ、おはよ~瑠璃ちゃん」
この子は辻山瑠璃ちゃん。私が小学に上がったときに友達がそんなにいなかった私に最初に声をかけてきてくれた子。
今ではなんでも話せるような私には親友と呼べる唯一の子かもしれない。
私は瑠璃ちゃんと学校にいくと教室へ向かうため階段を登っていた。
私の中学では一年生は四階、二年生は三階、三年生は二階と言うような作りになっていて私は一年生なのもあり四階へ向かっていると三階の踊場に差し掛かったあたりで廊下をまるで恋人のように楽しく話しながら歩いてくるお兄ちゃんと女の人の姿が見えた。
その瞬間私の中になんとも言えない怒りとはまた違うような感じの想いが込み上げていた。
それを察知したのか瑠璃ちゃんが心配そうな顔して私を見ていた。
「ちょ、ちょっと……ことりん?」
瑠璃ちゃんの心配をよそに私はお兄ちゃん達から目を退け四階への階段を登っているときにふとお兄ちゃん達を見て見ると一緒に歩いていた女の人と一瞬目があった。
そして、私をあざ笑うかのようにーー私に微笑んだ。
「ーーーーーーっ?!」
私はその目があった瞬間まるで地獄にでも落とされたかのような感覚に陥った。
私は唇から血が出るんじゃないかと思えるほど強く噛み締めながら走って教室へ向かった。
「あ……ことりん! 待ってよー!」
ーー瑠璃ちゃんの声も聞こえないほどに。
私はその日の夕方、瑠璃ちゃんと一緒にカラオケに来ていた。
瑠璃ちゃんはいつものように盛り上っていた。
「ほら、こーとりん! 一緒に歌おうよ~!」
「あ、……うん」
「……ことりん」
私は瑠璃ちゃんが本当は心配して今日カラオケに行こうと言ってくれた事は痛いほどわかっていた。
正直なところ瑠璃ちゃんには本当に申し訳なかった。
「あのさ、ことりん、今朝何かあったの……?」
「あ……ううん、何もないよ? えへへ……ごめんね、せっかくカラオケに誘ってくれたのに……私」
私はニコっと笑って見せると瑠璃ちゃんは急に怒ったような口調で私を見つめながら言ってきた。
「ーー嘘よ」
え……? 瑠璃ちゃん?
「何もなかったら、なんでッ! そんな辛そうな顔してんのよ!!」
「瑠璃……ちゃん?」
瑠璃ちゃんの目にはうっすらと涙があった。
「ことりん、辛くて、辛くて、今にでも死にそうな顔してるじゃないッ……!」
私はそのとき笑ったつもりでいても瑠璃ちゃんには笑ってたようには見えなかったんだとわかった。
「私、ことりんの親友じゃないの?! 私、ことりんがそんな顔してるのやだよ……見たくないよ……」
瑠璃ちゃんはそっと私を抱きしめながら泣いていた。
「瑠璃ちゃん……ごめんね……」
私もこの時久しぶりに大声で泣いた気がする。
その後、私は瑠璃ちゃんに本当の事を話した。お兄ちゃんの事、私の事、全部話したとおもう。
瑠璃ちゃんは全部聞いてくれた、普通ならお兄ちゃんの事なんて話したら笑われてしまうと思っていた。
でも瑠璃ちゃんは絶対ーー笑わなかった。むしろ本当に親身に話を聞いてくれた。
それから瑠璃ちゃんと思いっきり話した。
「そっかぁ、ことりんお兄ちゃんの事大好きだもんね~」
「なっ?! だ、だ、誰があんな奴の事なんか……!」
「ぷっ、あはははは、はいはい、そういう事にしといてあげる~!」
「ちょ、ちょっと瑠璃ちゃん~! ち、違うってば! 嫌いだっていってるでしょ~!!」
「ふ~ん? 私にはそうは思えないけど~?」
瑠璃ちゃんはニヤニヤ私を見て笑っていた。
「な、なによ~?!」
「あはは、そうそう、それそれ! やっぱりそう言う顔してることりんが、一番いいよ? 」
「~~~~~~~?!」
私は顔が真っ赤になるくらい恥ずかしいかった。
「瑠璃ちゃんの……瑠璃ちゃんの……バカーーーーッ!!」
そんな感じで瑠璃ちゃんに話した事によって少しお兄ちゃん嫌いとも呼べる事がなくなりかけた時でもあったのでした。
それからと言うもの私は瑠璃ちゃんからお兄ちゃんとまた仲良くなるために私の方から積極的に話しかけるようにと言われ、少しずつ、本当に少しずつだけどお兄ちゃんとまた話せるようになりました。
ーーそれから半年後の春
私の両親は不慮の事故で亡くなり、お兄ちゃんは親戚の方の反対を押し切り私と二人でこのまま今の家に住む事を選びました。
私は最初は恥ずかしいのと嬉しいのと色々な気持ちになったけど、この家は私にとっても、お兄ちゃんにとっても、お母さん、お父さんとの
ーー四人の思い出の場所でもあるから……。
◆
そして、私の高校生の始まりの日。
私は学校の前で待って待っていました。
「あ、こーとりーん!」
声の聞こえた方を見てみると瑠璃ちゃんが息を切らしながら走ってきました。
「ごめ~ん! 送れちゃって、待った?」
「ううん、私も今来たとこだから!」
私がニコっと笑うと瑠璃ちゃんは私の顔を見るなり驚いた表情を見せた。
「うわぁー! ことりんポニテにしたんだー!」
「あ、うん……」
私は頬を赤くしながら答えると瑠璃ちゃんはニヤニヤ笑いながら言ってきた。
「ふ~ん、もしかして~愛するお兄ちゃんの~」
「ひぇっ?! べ、べ、別にそんなんじゃッ! ーーあぅぅ……」
私が両手をバタバタさせていると瑠璃ちゃんは大笑いしていた。
「瑠璃ちゃん、私もまたバスケやろうかな……」
「えー?! ほんとにー?! 」
「う、うん……」
すると瑠璃ちゃんは私の耳元でそっと呟いた。
「また、お兄ちゃんに興味持ってもらえるようにならないとねっ」
「はぁぅぅぅ……」
私はこれでもかというくらいに顔が真っ赤になってしまった。
瑠璃ちゃんは私を見て笑いながら学校の中に向かって歩き出しました。
私は思いっきり大声で叫んでしまった。
ーーーー瑠璃ちゃんのバカーーーーーーっ!!
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