青眼の烏と帰り待つ羊

鉄永

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3部

私も相手に起き上がってほしくないから何回か刺し直したんだ、似た者同士だね

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「律日はさ、なんで人を殺したの?」
「え?」
「いや、なんで殺したというか、なんで殺せたのか、というか」
「うーん、衝動的に?」
 スコープを覗いたまま、律日は退屈そうにお喋りを始めたかずさに返答する。
「反射に近かったかもしれません。相手が死んだのは結果的なもので、殺すのは目標じゃありませんでした。まあ、殺しても何とも思いませんでしたから、深層では殺して構わないと判断していたのかもしれませんが」
 律日にとって、銃を撃つという行為は、殺すための行為では無かった。
 ただ、動いてほしくなかった。そこをどいてほしかったし、邪魔をされたくなかった。
 傍から見ればそれは殺したかったという感情に類されるわけだが。
「あ~、ちょっと分かるな。」
 自分が嫌だと思ったことを止めてほしいだけというか…とかずさは頷きながら共感を示す。
 そうそう、あるあるですかね、と律日も頷いた。
「でも、私はやっぱり殺してしまったときは若干後悔したな。こう、やっちゃったって感じ」
「へえ。最中の勢いにまかせしまったなあ、みたいな?」
「そうそう、ずっと我慢してたからさ」
「いざって時に手がでちゃうんですよね。…まあ、こう言ってはなんですけど、イメージ通りです」
「なんだよ、どういう意味?」
「計画立てなそうだなって…。ほら、帳尻合わせるのが常套手段でしょ?」
「まあね。勢いに任せても何とかなるもんだなって、その時気付いたから。お前は計画立てすぎて動けないタイプでしょ?足して割ったらちょうどいいから、精々私に振り回されてたらいいよ」
「はいはい。よく学ばせていただきます」

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