7 / 24
第6話 ロンドンその2
しおりを挟む
日本とロンドンが地殻変動で近くにあるという、都合の良い並行世界に入った。
時代としては日本で言う明治時代か江戸時代の末期あたりだろうか。
流石に現代ではパスポートでの入国審査が厳しかったようで、時代的に少し前の世界を見つけてくれたそうだ。
そして、木造のオンボロな長屋の前に出現した私達は、なんやかんや半年ほど歩いたり小舟に乗ったりしてロンドンへ到着した。
もう歩いて数ヶ月という単位でもあまり気にならなくなった。
それでも、今回は歩きだと速度が遅いということで、今は馬車に乗って移動をしている。
そこで目にした光景は確かに私の知っているロンドンとは全く違っていた。
「建物がみんな木造だらけだ……」
ロンドンに近づいて来る段階から違和感はあった。
レンガ造りの家が殆どないのだ。
「た、確かに見たことない景色だけど……。これって単に地殻変動の影響とかじゃないの……?」
「ううん、これは先に入った世界と殆ど同じ光景なんだ。地殻変動が原因じゃないよ」
「じゃあ、なんで木造建築ばかりなの……?」
「黒江ちゃんがいた世界でも元々ロンドンは木造建築だったんだ。でも、黒江ちゃんの生きてた時代から四百年くらい前――日本だと江戸時代に入ったくらいかな? 街を全て焼き払う大火事があってから木造建築が禁止になってレンガ造りの家に変わったんだ」
「っていうことは、もしかして……?」
「そう、先に入った世界もこの世界も、その大火事が起こらなかった世界っていうわけ」
「……火の元一つで世界がこんなに変わっちゃうんだ」
「そういうこと。面白いよね、並行世界ってさ」
昴くんはニコニコとしながら、揺れる馬車から見える光景に満足している。
正確には、この光景を私に見せることができて満足しているって感じかな。
それにしても、これがいわゆるバタフライエフェクトなのだろう。
蝶の羽のはばたきが最終的に竜巻を起こすというやつ。
創作物なんかだと、大きい出来事のキッカケとなった小さな出来事のことを言ったりするけど、これがまさにそれなんだろうな。
どこかの誰かの火の元一つで街一つの景色が全て変わってしまう。
それくらい人の行動は世界に影響を与えているんだ。
私も大した人間だと思っていなかったけど、私の行動一つで人に何か大きな影響を与えていたのかもしれない。
――いや、もう既にそれはあるじゃないか。
「どうかしたの? 僕の顔なんかじっと見て」
そうだ、私が道端で疲れて倒れていた昴くんを助けて、彼に大きな影響を与えたんだ。
私みたいな小さい人間ですら人一人の人生を変えるくらいのことをしていた。
人間ですらこれだけたくさんいるんだ、他の動物たちも入れたら数えきれないくらいの並行世界が生まれていても何もおかしくない。
私だってそうだ、昴くん一人でこれだけ人生が変わって――変わったというか死んでしまうくらい影響を受けている。
別にそれが嫌というわけじゃない。ただただ凄いと感じることしか出来なかった。
「この世界ではどこで絵を描くの?」
その言葉に昴くんが優しく微笑む。
「そうだね、この世界にはもうクロックタワーとビッグベンがあるんだ。木造建築に囲まれたビッグベンを描いてみようかな」
「あ、でも、先に入った世界でも木造建築のロンドンを見ているなら、そこでも同じ絵を描いていたりしないの?」
「うーん、確かに似たような絵は描いているけど。それでも、それは新婚旅行で描いた絵じゃないし、世界も時代も違うし細かい部分も違う。僕はあくまで黒江ちゃんと一緒に見た光景を絵にしたいんだ」
照れることをサラッと言うなぁ。
確かに、もし海の絵を描いたらどこでも似たような絵になるかもしれない。
でも、同じ景色は二つとないし、そこに思い出が加わればなおさらだ。
絆されているわけではない。これはきっと愛情なのだろう。
ようやく、少しずつだけど自分の気持ちに気が付き始めた気がしてきた。
時代としては日本で言う明治時代か江戸時代の末期あたりだろうか。
流石に現代ではパスポートでの入国審査が厳しかったようで、時代的に少し前の世界を見つけてくれたそうだ。
そして、木造のオンボロな長屋の前に出現した私達は、なんやかんや半年ほど歩いたり小舟に乗ったりしてロンドンへ到着した。
もう歩いて数ヶ月という単位でもあまり気にならなくなった。
それでも、今回は歩きだと速度が遅いということで、今は馬車に乗って移動をしている。
そこで目にした光景は確かに私の知っているロンドンとは全く違っていた。
「建物がみんな木造だらけだ……」
ロンドンに近づいて来る段階から違和感はあった。
レンガ造りの家が殆どないのだ。
「た、確かに見たことない景色だけど……。これって単に地殻変動の影響とかじゃないの……?」
「ううん、これは先に入った世界と殆ど同じ光景なんだ。地殻変動が原因じゃないよ」
「じゃあ、なんで木造建築ばかりなの……?」
「黒江ちゃんがいた世界でも元々ロンドンは木造建築だったんだ。でも、黒江ちゃんの生きてた時代から四百年くらい前――日本だと江戸時代に入ったくらいかな? 街を全て焼き払う大火事があってから木造建築が禁止になってレンガ造りの家に変わったんだ」
「っていうことは、もしかして……?」
「そう、先に入った世界もこの世界も、その大火事が起こらなかった世界っていうわけ」
「……火の元一つで世界がこんなに変わっちゃうんだ」
「そういうこと。面白いよね、並行世界ってさ」
昴くんはニコニコとしながら、揺れる馬車から見える光景に満足している。
正確には、この光景を私に見せることができて満足しているって感じかな。
それにしても、これがいわゆるバタフライエフェクトなのだろう。
蝶の羽のはばたきが最終的に竜巻を起こすというやつ。
創作物なんかだと、大きい出来事のキッカケとなった小さな出来事のことを言ったりするけど、これがまさにそれなんだろうな。
どこかの誰かの火の元一つで街一つの景色が全て変わってしまう。
それくらい人の行動は世界に影響を与えているんだ。
私も大した人間だと思っていなかったけど、私の行動一つで人に何か大きな影響を与えていたのかもしれない。
――いや、もう既にそれはあるじゃないか。
「どうかしたの? 僕の顔なんかじっと見て」
そうだ、私が道端で疲れて倒れていた昴くんを助けて、彼に大きな影響を与えたんだ。
私みたいな小さい人間ですら人一人の人生を変えるくらいのことをしていた。
人間ですらこれだけたくさんいるんだ、他の動物たちも入れたら数えきれないくらいの並行世界が生まれていても何もおかしくない。
私だってそうだ、昴くん一人でこれだけ人生が変わって――変わったというか死んでしまうくらい影響を受けている。
別にそれが嫌というわけじゃない。ただただ凄いと感じることしか出来なかった。
「この世界ではどこで絵を描くの?」
その言葉に昴くんが優しく微笑む。
「そうだね、この世界にはもうクロックタワーとビッグベンがあるんだ。木造建築に囲まれたビッグベンを描いてみようかな」
「あ、でも、先に入った世界でも木造建築のロンドンを見ているなら、そこでも同じ絵を描いていたりしないの?」
「うーん、確かに似たような絵は描いているけど。それでも、それは新婚旅行で描いた絵じゃないし、世界も時代も違うし細かい部分も違う。僕はあくまで黒江ちゃんと一緒に見た光景を絵にしたいんだ」
照れることをサラッと言うなぁ。
確かに、もし海の絵を描いたらどこでも似たような絵になるかもしれない。
でも、同じ景色は二つとないし、そこに思い出が加わればなおさらだ。
絆されているわけではない。これはきっと愛情なのだろう。
ようやく、少しずつだけど自分の気持ちに気が付き始めた気がしてきた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる