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第5話 ロンドンその1
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昴くんに聞かれた
「次はどこに行きたい?」
って。
だから、
「私が見たことのないロンドンに行きたい」
と、答えた。
日本と答えても良かったのだけど、あまりにも芸がないかなっと思ってしまったのでロンドンにすることにした。
ロンドンなら大学生の頃に旅行で行ったことがあるから、並行世界でどれだけ変わっているのかというのもある程度は理解できると思ったからだった。
だから、きっと私の見たことのないものが見れるのだろうと思っていた。
◇ ◇ ◇
「ついたよー」
並行世界の元となる世界樹の大きな幹に近い所を潜り、光る輪っかから出てくるとそこには――
日本があった。
物凄く見たことのある家だった。
どう見ても私が生前暮らしていたアパートだ。
「あー、そっか。ここに出ちゃうのかぁ」
私の隣に立つ昴くんが頭を掻きながらバツの悪い顔をしている。
「えっとね、僕ら幽霊が並行世界を渡ったときって、生前思い入れがあった場所に出ることになるんだよね。どこでも好きな場所に行けたり出れたりするほど便利じゃないんだ」
つまり、私が思い入れのあった場所というのは、このアパートということになるのか……。
うーん、まぁ確かに私の人生で昴くんと過ごした短い時間には思い入れがあると言えばあるけど……。辛かった記憶の方が多いからなんだか釈然としない……。
「一応、並行世界を自由に移動する魔法を使える人もいるらしいから、そういう人と一緒なら好きな世界の好きな所に出られるんだろうけど……」
そもそも魔法がある世界であることが前提だから、私には縁のない話だ。
「うーん。僕の生まれた世界っていわゆるパンゲア大陸みたいな形だったから、どの土地でも歩いて行けたけど、黒江ちゃんがいるような根幹世界って海があるしパスポートとかがないと海外に行けないから不便なんだよねぇ……」
パンゲア大陸って確か地球が地殻変動が起こる前の超大陸で、現代の全ての大陸が一つの大陸だったっていうやつかな……?
さっきまでいた場所ってそんなすごい場所だったんだ……。
というより、出現地点がこのアパート前ってことは、昴くんの生まれた世界でのアパート前はあんな東南アジアみたいな風土の場所だったのか。
なんかもう、色々とはちゃめちゃでついていけない……。
「黒江ちゃん、とりあえず一度また光の輪をくぐって世界樹の方へ戻ってもらって良い?」
「うん、それは別に大丈夫だけど?」
◇ ◇ ◇
光の輪をくぐって再び世界樹のもとへと戻ってきた。
恐らく今後もずっとお世話になるんだろうけど、この無重力とも違う上下感覚のない空間は慣れる気がしない。
「ごめんね、せっかく面白いロンドンを見せられる世界だったんだけど。前に来たときは僕が一人でこっそり入国して行ったんだ。だけど、流石に黒江ちゃんにはそんなことさせられないし、もうちょっといい感じの世界を探してくるから待ってて」
さらっと凄いことを言った気がする。
密入国で世界を回っているとか……。確かに彼からしたら一期一会の世界なのかもしれないけど、最低限その時代のその国の法は守るべきだと思う。
ただ、守っていたら手間やお金がいくらあっても足りないということなのかもしれない。特に時代が古ければ古いほど移動手段は少ないから尚更だろう。
私があげたお金をすぐに使ってしまったというのも、彼にとっては単に手段があったから使ったという程度だったのかもしれない……。
この辺りは感覚の違いだ、少しずつ感覚を擦り合わせていけばいいだけの話だ。
「この空間は例えるなら天国みたいな場所でさ。僕らみたいな幽霊でも眠れるし、心も安らぐからちょっと居眠りでもして待ってて」
昴くんはそう言い、私達がいま出てきた根幹世界から少し枝葉の方へ向かって泳いでいった。
「そう言われても……」
既に眠るという行為を一ヶ月以上していないので、改めて意識するとどうやっていたのかわからなくなっている。
とりあえず、眼を瞑ってみる。
眼前が真っ暗になり、身体は不思議な空間の影響でゆらゆらと浮いて、まるで揺り籠の中にいるように感じた。
これが眠るという感覚だったのだろうか……?
なんだか意識が遠くなっていく……。
◇ ◇ ◇
「――あ、起きた?」
瞼を開けるとそこには昴くんの顔が眼の前にあった。
口づけでもするのではというくらいの距離に、思わず顔が赤くなってしまった。
いや、私達は一応結婚しているんだ、これくらいのことで動揺していては身が持たないはずなんだけど……。
「結構寝てたみたいだね。それだけ疲れていたってことかな、ゆっくり休めて何よりだよ」
昴くんが私の顔を見て笑顔で答える。
「ごめんね、どれくらい寝てたの……?」
「ざっと五十年くらいかな? 本当に疲れていたんだね」
「ごっ……!」
いくら幽霊になったからと言って、それは流石に眠りすぎだと思うし、なによりそれを気長にまっていた昴くんも昴くんだ。どこかで起こしてくれればいいのに。
「ごめんね! そんなに待たせちゃって! え!? ホントに五十年!?」
「心っていうのはそれだけ疲れが取れるのに時間がかかるんだ。それに、僕にとっては一年なんて一分くらいの感覚だよ、だから黒江ちゃんの寝顔をずっと見れて楽しかったから気にしないで」
微笑みながら昴くんが答える。世の中待つにしても限度がある。
それに例え楽しくても、人の寝顔を五十分も見続けるのは十分長いと思うのだけどなぁ……。
「そうそう、忘れる所だった。見たことがないロンドンの世界を見つけてきたよ。日本とロンドンが地殻変動で近くにある世界で、移動もそこまで大変じゃない世界なんだ」
そんな都合のいい世界が……。いや、パンゲア大陸が現存するような世界があるんだから、あってもおかしくないか……。
「それじゃあ、今度こそ行こうか。新婚旅行二日目の観光地にさ」
二日目って言っても既に五十年と一ヶ月が過ぎているんだけどね……。
「次はどこに行きたい?」
って。
だから、
「私が見たことのないロンドンに行きたい」
と、答えた。
日本と答えても良かったのだけど、あまりにも芸がないかなっと思ってしまったのでロンドンにすることにした。
ロンドンなら大学生の頃に旅行で行ったことがあるから、並行世界でどれだけ変わっているのかというのもある程度は理解できると思ったからだった。
だから、きっと私の見たことのないものが見れるのだろうと思っていた。
◇ ◇ ◇
「ついたよー」
並行世界の元となる世界樹の大きな幹に近い所を潜り、光る輪っかから出てくるとそこには――
日本があった。
物凄く見たことのある家だった。
どう見ても私が生前暮らしていたアパートだ。
「あー、そっか。ここに出ちゃうのかぁ」
私の隣に立つ昴くんが頭を掻きながらバツの悪い顔をしている。
「えっとね、僕ら幽霊が並行世界を渡ったときって、生前思い入れがあった場所に出ることになるんだよね。どこでも好きな場所に行けたり出れたりするほど便利じゃないんだ」
つまり、私が思い入れのあった場所というのは、このアパートということになるのか……。
うーん、まぁ確かに私の人生で昴くんと過ごした短い時間には思い入れがあると言えばあるけど……。辛かった記憶の方が多いからなんだか釈然としない……。
「一応、並行世界を自由に移動する魔法を使える人もいるらしいから、そういう人と一緒なら好きな世界の好きな所に出られるんだろうけど……」
そもそも魔法がある世界であることが前提だから、私には縁のない話だ。
「うーん。僕の生まれた世界っていわゆるパンゲア大陸みたいな形だったから、どの土地でも歩いて行けたけど、黒江ちゃんがいるような根幹世界って海があるしパスポートとかがないと海外に行けないから不便なんだよねぇ……」
パンゲア大陸って確か地球が地殻変動が起こる前の超大陸で、現代の全ての大陸が一つの大陸だったっていうやつかな……?
さっきまでいた場所ってそんなすごい場所だったんだ……。
というより、出現地点がこのアパート前ってことは、昴くんの生まれた世界でのアパート前はあんな東南アジアみたいな風土の場所だったのか。
なんかもう、色々とはちゃめちゃでついていけない……。
「黒江ちゃん、とりあえず一度また光の輪をくぐって世界樹の方へ戻ってもらって良い?」
「うん、それは別に大丈夫だけど?」
◇ ◇ ◇
光の輪をくぐって再び世界樹のもとへと戻ってきた。
恐らく今後もずっとお世話になるんだろうけど、この無重力とも違う上下感覚のない空間は慣れる気がしない。
「ごめんね、せっかく面白いロンドンを見せられる世界だったんだけど。前に来たときは僕が一人でこっそり入国して行ったんだ。だけど、流石に黒江ちゃんにはそんなことさせられないし、もうちょっといい感じの世界を探してくるから待ってて」
さらっと凄いことを言った気がする。
密入国で世界を回っているとか……。確かに彼からしたら一期一会の世界なのかもしれないけど、最低限その時代のその国の法は守るべきだと思う。
ただ、守っていたら手間やお金がいくらあっても足りないということなのかもしれない。特に時代が古ければ古いほど移動手段は少ないから尚更だろう。
私があげたお金をすぐに使ってしまったというのも、彼にとっては単に手段があったから使ったという程度だったのかもしれない……。
この辺りは感覚の違いだ、少しずつ感覚を擦り合わせていけばいいだけの話だ。
「この空間は例えるなら天国みたいな場所でさ。僕らみたいな幽霊でも眠れるし、心も安らぐからちょっと居眠りでもして待ってて」
昴くんはそう言い、私達がいま出てきた根幹世界から少し枝葉の方へ向かって泳いでいった。
「そう言われても……」
既に眠るという行為を一ヶ月以上していないので、改めて意識するとどうやっていたのかわからなくなっている。
とりあえず、眼を瞑ってみる。
眼前が真っ暗になり、身体は不思議な空間の影響でゆらゆらと浮いて、まるで揺り籠の中にいるように感じた。
これが眠るという感覚だったのだろうか……?
なんだか意識が遠くなっていく……。
◇ ◇ ◇
「――あ、起きた?」
瞼を開けるとそこには昴くんの顔が眼の前にあった。
口づけでもするのではというくらいの距離に、思わず顔が赤くなってしまった。
いや、私達は一応結婚しているんだ、これくらいのことで動揺していては身が持たないはずなんだけど……。
「結構寝てたみたいだね。それだけ疲れていたってことかな、ゆっくり休めて何よりだよ」
昴くんが私の顔を見て笑顔で答える。
「ごめんね、どれくらい寝てたの……?」
「ざっと五十年くらいかな? 本当に疲れていたんだね」
「ごっ……!」
いくら幽霊になったからと言って、それは流石に眠りすぎだと思うし、なによりそれを気長にまっていた昴くんも昴くんだ。どこかで起こしてくれればいいのに。
「ごめんね! そんなに待たせちゃって! え!? ホントに五十年!?」
「心っていうのはそれだけ疲れが取れるのに時間がかかるんだ。それに、僕にとっては一年なんて一分くらいの感覚だよ、だから黒江ちゃんの寝顔をずっと見れて楽しかったから気にしないで」
微笑みながら昴くんが答える。世の中待つにしても限度がある。
それに例え楽しくても、人の寝顔を五十分も見続けるのは十分長いと思うのだけどなぁ……。
「そうそう、忘れる所だった。見たことがないロンドンの世界を見つけてきたよ。日本とロンドンが地殻変動で近くにある世界で、移動もそこまで大変じゃない世界なんだ」
そんな都合のいい世界が……。いや、パンゲア大陸が現存するような世界があるんだから、あってもおかしくないか……。
「それじゃあ、今度こそ行こうか。新婚旅行二日目の観光地にさ」
二日目って言っても既に五十年と一ヶ月が過ぎているんだけどね……。
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