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第15話 鏡像世界その1
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知らない言葉ばかりの世界は、呪いがかかったような気持ちの悪い世界だった。
次は平凡な世界でゆっくり観光しよう。そう改めて思って適当な根幹世界へ入ることにした。
「次は普通の世界だといいなぁ」
「そもそも根幹世界であんな珍しい世界なんて、そうそうないんだけどね」
そう言って私と昴くんは世界樹の幹に向かって歩みを進めた。
◇ ◇ ◇
「ど、どう……? 昴くん……。見た感じは普通の世界だけど……」
眼の前には生前住んでいたアパートよりも新しい、新築の集合住宅がある。
時刻は朝くらいだろうか、太陽の位置が低くくて白い。
先の世界がよっぽどトラウマになってしまったのか、普通の見た目の世界でも油断できないからついつい怯えてしまう。
「お、黒江ちゃんこのアパートの看板見てよ」
「うん?」
アパート名として縦長の四角いプレートに『WHIT YOU』と記載されている。
「なんかちょっとオシャレなアパートになってる! なによりちゃんと読めるよ!」
「良かったね、今度は普通みたいだ。それじゃあ年代とか軽く調べるためにコンビニで新聞でも買おうか。あぁ、その前にお金の確認もしなきゃ。お金も共通だといいんどけど、近くの自販機で試してみようか」
出現地点の関係もあるので、根幹世界の現代日本の通貨はなるべく持ち歩くようにしている。
根幹世界以外に行くときや、異なる時代の世界へ行くときは、事前に宝石とか金貨とか、どの世界でも一定の価値があるものにしている。
気をつける点があるとしたら、根幹世界と言ってもお金は定期的に微妙に形を変えるので注意が必要だ。
「あ……」
自販機の前で昴くんが固まっていた。
「どうかした?」
昴くんの目線の先を見ると、値段表記が『円031』となっていた……。
厳密に言えば『3』も鏡文字になっている。
「………………」
「えーっと……。違う世界にする?」
苦笑いをした昴くんが私の顔を覗いてくる。きっと渋い顔をしているに違いない。
「……昴くん、さっきのはバベルの塔が爆発してたんだっけ……?」
「爆発はしてないだろうけど、塔が崩壊して言語がバラバラになったってインターネットのサイトに書いてあったね、今回はどうだろ……」
「今回も爆発してると思う……?」
「爆発はしてないだろうけど、僕たちの知ってる歴史とは違う何かが起こってるのは間違いないだろうね……。でも、聞こえてくる声は僕らの知っている言語と同じだから、単純に文字が鏡文字になって、文章の向きも逆になっているって感じかな……?」
頭痛と目眩はするけど、呪いのようなものは感じないし、読みづらいだけだからまた図書館で調べに行こうかな……。
「とりあえずお金が使えるかだけは試してみようか……。何となく使え無さそうな気はするけど……」
そう言いながら昴くんが自販機に十円を投入しようとすると。
「あれ……? 黒江ちゃん、自販機のお金入れるところっていつも左にあったっけ?」
右手に硬貨を持つ昴くんが自販機の前に立つと、硬貨の投入口はちょうど左手のある場所にあった。
「あれぇ……? あんまり意識したことないけど右側だったような……?」
私と昴くんはお互いの眼を合わせて思い出そうとするも、普段あまり意識していなかったことなだけに記憶が曖昧で思い出すことができなかった。
「うーん。昴くん、もしかしてこの世界って、文字が逆になってる世界じゃなくて、鏡の中の世界っていう感じなのかなぁ?」
「なるほど、鏡像世界ってことか……」
昴くんもうーんと唸りながら、顎に手を当てて考え事をしている。
今回も前回も、昴くんの知らない世界に来たから、彼が悩んでいるところを見れるのは新鮮で楽しい。
そして何より、一緒に歩んでいるという感じがして嬉しい。
ちなみに、お金は使えたけど、返却で出てきたお金は鏡に写したように逆だった。
◇ ◇ ◇
この世界でもまた図書館へやってきた。
入り口に書いてある市立図書館という文字は鏡文字になっていたけど、場所は私のいた世界と同じ場所に存在していた。
パソコンを使おうと昴くんが席に座ると、マウスは左側にあり、キーボードの配置も私達の知る物とは鏡に写したかのように反対向きになっていた。
「うっ……。これは慣れるまでにちょっと時間がかかるかも……」
案の定、マウスも左と右クリックが逆さまになっていたけれど、こちらは一時的に設定を変えさせてもらって事なきを得た。
「あ、黒江ちゃん。インターネットなら鏡文字変換ツールってのがあるみたいだよ。デザインとかで使うためなのかな、これならネットで調べる分には割りと楽かもしれない」
「へぇー、便利なものがあるんだね。いま司書さんに手鏡借りてきちゃったけど、返してくるね」
特に何も聞かれずに鏡だけ借りることが出来て、すぐ返すんだ、何も不審がられることはないだろう。
手鏡を返却したときに、ちょうど司書さんが手書きで書類を書いているのが見えた。
鏡の中の世界だからだろうか、左手にペンを握ってすらすらと鏡文字を書いている。
「普通な光景に見えるけど、改めて考えると変な感じかも」
思ったことがつい口に出てしまった。
それにしても、文字が反転しているなんて、どうやって原因を探ればいいんだろ?
知らない言葉ばかりの世界では言葉がバラバラな事が当たり前だったから『言葉がバラバラな理由』を調べるきっかけを見つけるのに苦労した。
結果的には『言葉がバラバラな理由』で検索しただけで、それにまつわる神話が出てきたから解決したけど……。
まぁ、本当にその神話がきっかけなのかはわからないから、解決というよりは納得と言ったほうが正しいのかもしれない。
「昴くん、どう? なにか出てきた?」
パソコンに向かってツールを使いながら検索を進める昴くんの元に戻ってきた。
「うーん、この前の世界と同じで『鏡文字の理由』っていう風に検索してみたけど出てこないね。少なくとも神話が原因で鏡文字になっているわけではないみたい」
「そっか……。当たり前だもんね、この世界の人達からしたら別に普通のことなんだし」
神話のようなおとぎ話が原因ではなくて、本当に昔からずっと鏡の中の世界なのか……。
本当に原因なんてわかるのかなぁ。
うーん、そもそもなんでこんな理由を調べていたんだっけ。ま、いっか。
次は平凡な世界でゆっくり観光しよう。そう改めて思って適当な根幹世界へ入ることにした。
「次は普通の世界だといいなぁ」
「そもそも根幹世界であんな珍しい世界なんて、そうそうないんだけどね」
そう言って私と昴くんは世界樹の幹に向かって歩みを進めた。
◇ ◇ ◇
「ど、どう……? 昴くん……。見た感じは普通の世界だけど……」
眼の前には生前住んでいたアパートよりも新しい、新築の集合住宅がある。
時刻は朝くらいだろうか、太陽の位置が低くくて白い。
先の世界がよっぽどトラウマになってしまったのか、普通の見た目の世界でも油断できないからついつい怯えてしまう。
「お、黒江ちゃんこのアパートの看板見てよ」
「うん?」
アパート名として縦長の四角いプレートに『WHIT YOU』と記載されている。
「なんかちょっとオシャレなアパートになってる! なによりちゃんと読めるよ!」
「良かったね、今度は普通みたいだ。それじゃあ年代とか軽く調べるためにコンビニで新聞でも買おうか。あぁ、その前にお金の確認もしなきゃ。お金も共通だといいんどけど、近くの自販機で試してみようか」
出現地点の関係もあるので、根幹世界の現代日本の通貨はなるべく持ち歩くようにしている。
根幹世界以外に行くときや、異なる時代の世界へ行くときは、事前に宝石とか金貨とか、どの世界でも一定の価値があるものにしている。
気をつける点があるとしたら、根幹世界と言ってもお金は定期的に微妙に形を変えるので注意が必要だ。
「あ……」
自販機の前で昴くんが固まっていた。
「どうかした?」
昴くんの目線の先を見ると、値段表記が『円031』となっていた……。
厳密に言えば『3』も鏡文字になっている。
「………………」
「えーっと……。違う世界にする?」
苦笑いをした昴くんが私の顔を覗いてくる。きっと渋い顔をしているに違いない。
「……昴くん、さっきのはバベルの塔が爆発してたんだっけ……?」
「爆発はしてないだろうけど、塔が崩壊して言語がバラバラになったってインターネットのサイトに書いてあったね、今回はどうだろ……」
「今回も爆発してると思う……?」
「爆発はしてないだろうけど、僕たちの知ってる歴史とは違う何かが起こってるのは間違いないだろうね……。でも、聞こえてくる声は僕らの知っている言語と同じだから、単純に文字が鏡文字になって、文章の向きも逆になっているって感じかな……?」
頭痛と目眩はするけど、呪いのようなものは感じないし、読みづらいだけだからまた図書館で調べに行こうかな……。
「とりあえずお金が使えるかだけは試してみようか……。何となく使え無さそうな気はするけど……」
そう言いながら昴くんが自販機に十円を投入しようとすると。
「あれ……? 黒江ちゃん、自販機のお金入れるところっていつも左にあったっけ?」
右手に硬貨を持つ昴くんが自販機の前に立つと、硬貨の投入口はちょうど左手のある場所にあった。
「あれぇ……? あんまり意識したことないけど右側だったような……?」
私と昴くんはお互いの眼を合わせて思い出そうとするも、普段あまり意識していなかったことなだけに記憶が曖昧で思い出すことができなかった。
「うーん。昴くん、もしかしてこの世界って、文字が逆になってる世界じゃなくて、鏡の中の世界っていう感じなのかなぁ?」
「なるほど、鏡像世界ってことか……」
昴くんもうーんと唸りながら、顎に手を当てて考え事をしている。
今回も前回も、昴くんの知らない世界に来たから、彼が悩んでいるところを見れるのは新鮮で楽しい。
そして何より、一緒に歩んでいるという感じがして嬉しい。
ちなみに、お金は使えたけど、返却で出てきたお金は鏡に写したように逆だった。
◇ ◇ ◇
この世界でもまた図書館へやってきた。
入り口に書いてある市立図書館という文字は鏡文字になっていたけど、場所は私のいた世界と同じ場所に存在していた。
パソコンを使おうと昴くんが席に座ると、マウスは左側にあり、キーボードの配置も私達の知る物とは鏡に写したかのように反対向きになっていた。
「うっ……。これは慣れるまでにちょっと時間がかかるかも……」
案の定、マウスも左と右クリックが逆さまになっていたけれど、こちらは一時的に設定を変えさせてもらって事なきを得た。
「あ、黒江ちゃん。インターネットなら鏡文字変換ツールってのがあるみたいだよ。デザインとかで使うためなのかな、これならネットで調べる分には割りと楽かもしれない」
「へぇー、便利なものがあるんだね。いま司書さんに手鏡借りてきちゃったけど、返してくるね」
特に何も聞かれずに鏡だけ借りることが出来て、すぐ返すんだ、何も不審がられることはないだろう。
手鏡を返却したときに、ちょうど司書さんが手書きで書類を書いているのが見えた。
鏡の中の世界だからだろうか、左手にペンを握ってすらすらと鏡文字を書いている。
「普通な光景に見えるけど、改めて考えると変な感じかも」
思ったことがつい口に出てしまった。
それにしても、文字が反転しているなんて、どうやって原因を探ればいいんだろ?
知らない言葉ばかりの世界では言葉がバラバラな事が当たり前だったから『言葉がバラバラな理由』を調べるきっかけを見つけるのに苦労した。
結果的には『言葉がバラバラな理由』で検索しただけで、それにまつわる神話が出てきたから解決したけど……。
まぁ、本当にその神話がきっかけなのかはわからないから、解決というよりは納得と言ったほうが正しいのかもしれない。
「昴くん、どう? なにか出てきた?」
パソコンに向かってツールを使いながら検索を進める昴くんの元に戻ってきた。
「うーん、この前の世界と同じで『鏡文字の理由』っていう風に検索してみたけど出てこないね。少なくとも神話が原因で鏡文字になっているわけではないみたい」
「そっか……。当たり前だもんね、この世界の人達からしたら別に普通のことなんだし」
神話のようなおとぎ話が原因ではなくて、本当に昔からずっと鏡の中の世界なのか……。
本当に原因なんてわかるのかなぁ。
うーん、そもそもなんでこんな理由を調べていたんだっけ。ま、いっか。
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