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第16話 鏡像世界その2
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鏡の中の世界について調べ始めて数時間が経った。
パソコンを二台使って検索するよりも、お互いに意見を交換しながら考えたほうがいろんなアイデアが出ると気がついてからは、ずっと昴くんと話しながら考えている。
「ねぇ黒江ちゃん、これ見て。文字の成り立ちなんだけど。あんまりしっかりと覚えてはいないんだけど、文字の成り立ちで最初のほうは僕らの知っている文字と似ているよ」
「じゃあ、どこかで変わっていったのかな?」
文字が生み出されて、そこからどこかの時点で文字が反転していった……?
じゃあ、いつから変わっていったんだろ?
「文字がいつから変わっているかはわかるの?」
「うん、僕たちの知ってる文字がどうだったかは覚えてないんだけど、この世界では紀元前一〇〇〇年から一五〇〇年くらいの時期かな? この時期にはもう僕らの知ってる文字の原型が出来てて、この時点で既に鏡文字になっているんだ」
「っていうことは、その辺りで文字が反転する何かがあったっていうこと?」
「その可能性が高いだろうね。」
うーん、答えが出そうで出ない感じ。
「古代かぁ、私はもう一度紙の資料で日本の古い書物とかを見てみるよ。日本の資料が一番多いだろうし」
「うん、ありがとう。黒江ちゃん」
◇ ◇ ◇
パソコンから少し離れた所にある机に、紙の資料を広げて過去の文献を調べている。
もう何時間も鏡文字を見ていたからか、割と読めるようになってきてしまった。
「どう? 黒江ちゃん。何かわかった?」
「ううん、濡れ手に粟って言えたら良かったんだけどね」
「そろそろ閉館時間みたいだから、お暇しなきゃいけないみたい」
微笑む昴くんに言われて初めて気がついたけど、空はいつの間にか夜の闇が迫ってきていた。
夢中になっていたからなのか、それとも幽霊になって時間の感覚が狂ってきているからなのかわからないけど、あっという間に時間が過ぎてしまっていた。
「もうそんな時間だったんだ! 資料しまってこなきゃ!」
私がいくつも広げていた本を片付けていると、昴くんが何かに気がついたように一冊の本を手に取った。
「違和感が無かったから全然気が付かなかった……。これ見てよ、黒江ちゃん……」
渡された本のページには、江戸時代くらいの書籍の写真とその本に関する内容が書かれていた。
「これがどうかしたの?」
「僕はパソコンばかり見てたから気が付かなかったけど、この本は縦書きなんだ。この世界の縦書きは、僕たちの世界と同じで右から左に向かって書いてあるんだ」
「え……? あ、ホントだ! そういえばずっと右から左に読む横書きに慣れちゃってて、普段読み慣れてた右から左に読む縦書きに気が付かなかった!」
「結構大きい収穫じゃないかな? とりあえず今日は図書館を出てどこかで考察してみようか」
「うんっ!」
◇ ◇ ◇
私と昴くんは徒歩で近くの大きな公園へ向かっていた。
「着いた着いた。この公園、高校生くらいの頃は図書館行った帰りによく通ってたんだよね。元の世界でもどうなっているかわからないくらいだけど、この世界でも公園だっていうのはちょっと嬉しいかも」
「僕はそれより、黒江ちゃんの高校生くらいの頃の話を聞きたいけどね」
「それはまた今度かなー」
二人で笑いながらベンチを探し、そこに並んで座る。
「ふふ、この星空、アンラマンユの要塞基地じゃないよね?」
「うーん、この時代で判明している星は全部恒星だと思うけど、もしかしたら要塞基地が恒星に擬態してる可能性はあるかも知れないねぇ」
私が冗談っぽく聞くと、昴くんもそれに応えてくれる。
こういうちょっとしたところが楽しい。
「じゃあ、本題に戻ろっか。さっき私が見てた縦書きの文章だけど、昴くんはどう思う?」
「うーん、多分この世界での成り立ちを考えるよりも、僕らの知っている世界での文章の書き方の成り立ちを考えた方が良いとは思うんだけど……。いまいちピンときてないんだよねぇ」
「そっか、私のいた世界での文章の書き方か……」
正直、適当に別の世界に行って成り立ちを調べてまた戻ってくれば早いのかもしれないけど、これはそういう旅じゃない。
別にしっかりとした正解が欲しいんじゃなくて、私と昴くんが二人で出した結論が欲しいのだ。
「例えばだけど、右利きの私が左から右に向かって横書きに文字を書いたら、書いた部分が読めるから便利だけど、縦書きだと右から左に書いていくから手が邪魔になっちゃうよね」
「言われてみれば確かに黒江ちゃんの言う通りだ。じゃあ、なんで右から書こうとしたんだろ?」
「左から書くことに何か不都合があったのかな?」
私も昴くんも手を顎につけてうんうんと考えこむ。
このポーズもどちらが先にやったのかわからないけど、いつのまにかお互いに同じポーズを取るようになってしまった。
こういうところも、少しニヤけてしまう。
「あ!」
ひらめいた!
「巻物だよ! 昴くん!!」
「巻物?」
「巻物って縦書きでしょ?」
「少なくとも僕と黒江ちゃんの知ってる世界の巻物は縦書きだね。向きを変えて横書きならできるかもしれないけど」
「だから、右手で筆を持って、巻物を左手で押さえてたんだよ! 左から書くには左利きじゃないと書けないから、縦書きは右から左に向かっていくのが流行ったんだよ」
「なるほどなぁ。確かに右利きだったら――ん?」
「どうかした?」
今度は昴くんが宙を見つめて何かひらめいた顔をしている。
ちょっと待って、勝手に一人で全部思いつかないでよぉ!
パソコンを二台使って検索するよりも、お互いに意見を交換しながら考えたほうがいろんなアイデアが出ると気がついてからは、ずっと昴くんと話しながら考えている。
「ねぇ黒江ちゃん、これ見て。文字の成り立ちなんだけど。あんまりしっかりと覚えてはいないんだけど、文字の成り立ちで最初のほうは僕らの知っている文字と似ているよ」
「じゃあ、どこかで変わっていったのかな?」
文字が生み出されて、そこからどこかの時点で文字が反転していった……?
じゃあ、いつから変わっていったんだろ?
「文字がいつから変わっているかはわかるの?」
「うん、僕たちの知ってる文字がどうだったかは覚えてないんだけど、この世界では紀元前一〇〇〇年から一五〇〇年くらいの時期かな? この時期にはもう僕らの知ってる文字の原型が出来てて、この時点で既に鏡文字になっているんだ」
「っていうことは、その辺りで文字が反転する何かがあったっていうこと?」
「その可能性が高いだろうね。」
うーん、答えが出そうで出ない感じ。
「古代かぁ、私はもう一度紙の資料で日本の古い書物とかを見てみるよ。日本の資料が一番多いだろうし」
「うん、ありがとう。黒江ちゃん」
◇ ◇ ◇
パソコンから少し離れた所にある机に、紙の資料を広げて過去の文献を調べている。
もう何時間も鏡文字を見ていたからか、割と読めるようになってきてしまった。
「どう? 黒江ちゃん。何かわかった?」
「ううん、濡れ手に粟って言えたら良かったんだけどね」
「そろそろ閉館時間みたいだから、お暇しなきゃいけないみたい」
微笑む昴くんに言われて初めて気がついたけど、空はいつの間にか夜の闇が迫ってきていた。
夢中になっていたからなのか、それとも幽霊になって時間の感覚が狂ってきているからなのかわからないけど、あっという間に時間が過ぎてしまっていた。
「もうそんな時間だったんだ! 資料しまってこなきゃ!」
私がいくつも広げていた本を片付けていると、昴くんが何かに気がついたように一冊の本を手に取った。
「違和感が無かったから全然気が付かなかった……。これ見てよ、黒江ちゃん……」
渡された本のページには、江戸時代くらいの書籍の写真とその本に関する内容が書かれていた。
「これがどうかしたの?」
「僕はパソコンばかり見てたから気が付かなかったけど、この本は縦書きなんだ。この世界の縦書きは、僕たちの世界と同じで右から左に向かって書いてあるんだ」
「え……? あ、ホントだ! そういえばずっと右から左に読む横書きに慣れちゃってて、普段読み慣れてた右から左に読む縦書きに気が付かなかった!」
「結構大きい収穫じゃないかな? とりあえず今日は図書館を出てどこかで考察してみようか」
「うんっ!」
◇ ◇ ◇
私と昴くんは徒歩で近くの大きな公園へ向かっていた。
「着いた着いた。この公園、高校生くらいの頃は図書館行った帰りによく通ってたんだよね。元の世界でもどうなっているかわからないくらいだけど、この世界でも公園だっていうのはちょっと嬉しいかも」
「僕はそれより、黒江ちゃんの高校生くらいの頃の話を聞きたいけどね」
「それはまた今度かなー」
二人で笑いながらベンチを探し、そこに並んで座る。
「ふふ、この星空、アンラマンユの要塞基地じゃないよね?」
「うーん、この時代で判明している星は全部恒星だと思うけど、もしかしたら要塞基地が恒星に擬態してる可能性はあるかも知れないねぇ」
私が冗談っぽく聞くと、昴くんもそれに応えてくれる。
こういうちょっとしたところが楽しい。
「じゃあ、本題に戻ろっか。さっき私が見てた縦書きの文章だけど、昴くんはどう思う?」
「うーん、多分この世界での成り立ちを考えるよりも、僕らの知っている世界での文章の書き方の成り立ちを考えた方が良いとは思うんだけど……。いまいちピンときてないんだよねぇ」
「そっか、私のいた世界での文章の書き方か……」
正直、適当に別の世界に行って成り立ちを調べてまた戻ってくれば早いのかもしれないけど、これはそういう旅じゃない。
別にしっかりとした正解が欲しいんじゃなくて、私と昴くんが二人で出した結論が欲しいのだ。
「例えばだけど、右利きの私が左から右に向かって横書きに文字を書いたら、書いた部分が読めるから便利だけど、縦書きだと右から左に書いていくから手が邪魔になっちゃうよね」
「言われてみれば確かに黒江ちゃんの言う通りだ。じゃあ、なんで右から書こうとしたんだろ?」
「左から書くことに何か不都合があったのかな?」
私も昴くんも手を顎につけてうんうんと考えこむ。
このポーズもどちらが先にやったのかわからないけど、いつのまにかお互いに同じポーズを取るようになってしまった。
こういうところも、少しニヤけてしまう。
「あ!」
ひらめいた!
「巻物だよ! 昴くん!!」
「巻物?」
「巻物って縦書きでしょ?」
「少なくとも僕と黒江ちゃんの知ってる世界の巻物は縦書きだね。向きを変えて横書きならできるかもしれないけど」
「だから、右手で筆を持って、巻物を左手で押さえてたんだよ! 左から書くには左利きじゃないと書けないから、縦書きは右から左に向かっていくのが流行ったんだよ」
「なるほどなぁ。確かに右利きだったら――ん?」
「どうかした?」
今度は昴くんが宙を見つめて何かひらめいた顔をしている。
ちょっと待って、勝手に一人で全部思いつかないでよぉ!
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