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結章
結章 第四部 第二節
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「予てより語る破れ目をくぐれ、汝‘子爵’ジュサプブロス!」
「語りて騙る蟒蛇の、口喰む木霊‘伯爵’ザクラプフェムノ!」
呪文がティエゲのそれと重合し、次元の結び目を綻ばせて、限局的な異次元を現世に許容させる。
それは魔神。日が差せば、影もまた物陰に差すように―――声の音響とすげ替わるように現出した年若い男は、屈めた背で長髪をゆらめかせては、いつだって面白がるような瞳をしている。それを見るまでも無い。指紋のひと巻きまで熟知し尽くしている。そのように手塩にかけ、練磨し、修練を重ねた研鑽の果て、人型にまで昇華させた……傍らに在る、ジュサプブロス。
その余裕を砕いて余りある―――詠唱を、あっという間に、相手は完了させた。
「ツェラシェルイシィ・アムアイニ!!」
それによる招聘は、更なる瞬時。
招き入れられた破滅の容貌は、完璧なまでに美しかった。人にそっくりで―――なのに、双眸、鼻梁、脊梁、脚線、睫毛の一本に至るまで、人では成し得ない美しさの造形を成立させている。肌の質感では成立しない白磁色に長い髪だけを纏った未成熟な裸体から発散される神々しさは、威光のように人心を魅了するだろう……練成魔士でなければ、それを神と呼ぶかもしれない。性差も無く、齢を刻むことも無く、慈悲も無い。
直後。その魔神を触媒に、相手の魔力が積算を浸透し―――否、侵犯し、貫通し、世界の折り目を折り直した。それが分かる。だから悟る。
(―――死んだっ!)
即座だった。
「数えにて!」
背後から、ティエゲが叫ぶ。こちらを追い越すようにして、魔術を放つべく―――その術式に被せるように、彼もまた同じ術式を編み上げた。示し合わせるまでもなく、最硬度を叩き出す障壁を構成する組み合わせである。開いた両手を前方に突きつけるようにして重ねて、先手を打った彼女を追い上げるように……声を、唱和させる。
「一二三五指十指、十四指!」
「君は御手―――腕へ招く、抱く蛇腹児!」
ふたりの魔術が重なり合って、純白の光を二重に展開した。つま先の前から、鞭のように撓る光の鉄鎖の連なりが膨れ上がり、そのまま自分たちを内側に閉ざすように中空で輪を描くまま、頭上で円周を縮め連結する。光線の弧に遮られて、卓上に伏せたジョッキグラスの中にいるような歪つさの視界が、目一杯に広がった―――
その刹那に、世界は壊落した。楽園のように。
「厭くる 天空へ お前は美しい!!」
ぞワっ―――としか表現できない、ただただ生命を圧搾される予感に身の毛がよだつ、と同時か……それすら遅かったか。魔術の……純白の破壊力が熱を帯びて、襲い来る。直前に読み取れた折り目から逆算するに、光熱波だ―――と考えていたのだが。
(違う―――これはッ……冗談じゃ、ない!)
光熱波は攻撃系の魔術の中でも、容易に折り成すことが出来る部類だ。低爵位の魔神でも扱いやすい、いわゆる初手である。拳打で言うところの手刀のようなもので、致命打に昇華させるよりは手数として使うことが多い―――という一般論が通用するような、一撃ではなかった。これは、一撃なんぞで済まされるような火力ではない。さながら、真白の津波だ。ありとあらゆる外力を拒絶する光の円の中に居ながら、戦慄するまま身構えてしまうまでに……圧倒される。
ティエゲもまた、ひるむことすら忘れて腰だめを固め、必死に魔術を制御していた―――と見えたが、駄目だ。もう焼き切られる。じゃ! と、まるで揚げ油を飛び散らせたような断末魔を上げて、一輪目の光の網が張り裂かれた。十秒と保たなかった。ならば二十秒後には死んでいるのか……ぞっとしない思い付きが凍える爪で背髄を掻いてくる頃には、光と熱の奔流も収束を見せ―――そして、思いついた妄想で終わってくれるうちに、己の生み出した光の連鎖も解け出した。上から下へと、光る粒子が雪崩落ち……すげ替わった眼界を、見るしかない。
それ ありうるなら<楽園崩落>。
あたかもそれは<楽園崩壊>。
「―――Memento mori」
呻く。
両サイドにあった壁が、無い―――どころか、上階すら無い。あまりの威力に、こちらを狙ってやや上向かせていた発射角度が、大きく跳ね上がったらしかった。床から、上……それ以外に表現しようがない辺り一面が、一掃されている。この三階層を支点に、四階層目もろとも天井まで斜めにぶち抜かれ、捲れ上がり、吹き飛ばされた。あまりの力圧に瓦礫の一抹まで粉砕されたものか、頭上から落石ひとつ落ちてこない。直撃を受けて、これだ……熱波が掠めた程度であろう周囲の石畳さえ、ぱきぱきと余熱で爆ぜては縦横無尽に罅を入れている。あちこちでぶすぶすと火の手を上げ始めたのは、書棚や書類といった生活物品なのだろうが―――これもまた、あらかた木っ端微塵にされているようで、蛇の舌のようにちろちろと延焼しているだけの無力なものだ。
まるで、銀杏型の野外劇場の舞台にいるが如く……ぽっかりと月光が差し込み出した大穴の根元で、ふたりして守り抜いた我が身同士を、ちっぽけな円陣のように焼け残った石床の上に寄せ合いながら。十数メートル先―――ちょうど銀杏の葉の根元の位置にいる相手と対峙して、それを認めるしかない。
激甚である。
「呼名召喚可能な―――魔神!?」
掲げていた両手を下げつつ、愕然と独りごちる。
これもまた、あまりのことに現実味を失くしてか―――ティエゲは、能天気なほどにいつもの調子で、追従してきた。ただし……その舌の根に蟠った声音の震えに、軽く噎せてから。
「すわ国宝級。んな公爵クラス、授業でしか拝んだことないわー。二重防御がチリ紙ときた。マジモンで‘公爵’? ‘大公’ディエースゥアーの直下でない?」
「ツェラシェルイシィ・アムアイニ―――世界樹より溶け出づる雫……」
と。視線を横ずらせて、ティエゲを注視の中に捉える。自分の左肩の、裏あたり……半歩ほど左半身を引いて腰を落とした彼女の肩口に、バケツ一杯の水銀を水飴にした風貌の魔神が張り付いていた。飴細工のように―――棍棒ほどもある棘を出したかと思えばその棘が猿の中指に変わり、それで輪を作った途端にくるんとまるまって昆虫の幼虫になる。鳴き声はしない。無音のまま増殖と減少を繰り返しては、捏ねられるパン生地のように変形している。
「それ。ザクラプフェムノ?」
「そ。ステルスや移動なんかの護身方面に特性アリの、中の下クラスの伯爵」
「腕前は?」
「あんたってばンっとにゲェだねー。この銀色うねりんこ見といて訊くかー? 厭味で済むうちに察しとき」
「ちょっとは上達していない?」
「してたらもーちょい給金と待遇イイ出世してたっちゅーの。家計簿見る? ハートの」
それこそ厭味で済ませられる土壇場ではないのだが、ティエゲは皮肉で口を閉ざすと、前方―――波浪のごとく、あたりかまわずもぎ取っていった元凶を見やった。一片たりと残らず、防壁の光塵が消え失せたのが……謂わば、そのタイミングだったのだが。
自分もまた、そちらを見据え直す。十メートルほど奥、こちら側の建築を破砕したのと引き換えに、より陰を籠らせた暗がりへと沈み込んだ―――立ち尽くす、その姿を。その肩に肩を並べた、魔神を。
(実力差をひっくり返しての竜闘虎闘にしたって、目クソ鼻クソに無謀だな。何分間、爪楊枝で軍艦と渡り合える? 何分で、素人ひとりが軍艦を操縦しきれず転覆させて自滅する?)
それが、甘い見積もりなのは分かっていた。その素人具合とて、ずぶなのかどうか知れたものではない。自分が彼に魔神と魔術の手解きをしたのは、二十年以上も前だ―――練達の進捗状況など知るべくもないし、あれからモグリの練成魔士にでも教鞭を取らせていた可能性も否定できない。分析する材料は限られ、そうするのに使える時間はなお限られている……
それでも―――見て分かることは、あった。
星と月による蒼褪めた帳を底から煮上げるように足元を這いずる熾から焙り出された男の姿態は、状況に比べればあまりに平凡だったろう。背丈の割に痩せぎすと思われていた背格好は、二十余年の年月を過ぎて、成長を終え、老成を始めていた。その、立ち居と顔立ち―――更には、陰気。かつては見慣れていた長い黒髪と、その漆黒よりくすんだ色合いの黒瞳。そして初めて見る、三条の古傷……左頬と唇のきわで、まるで生き物のように、壮絶な狂い笑みに押し上げられては蠢く白い傷痕。緋色の軍服に施された意匠と徽章は見るだに特別で、司左翼において無二のものだと知れた―――練成魔士としての実力か魔神の能力か、魔術の制御も完璧だったようで、その袖口には焦げも解れもない。鬼火を宿した宝石も含めて、目に見える武装はしていなかった……なんの安心要素にもならないが。この国の軍人は佩剣の義務を負う。
(そんな―――話か……これが!)
総括し、刮眼し、―――怒号するしかなくなって、彼は吼え声を上げた。
「すべて、仕組んだな……ジルザキア! ヴァシャージャー唯任左総騎士となってまで! お前は!」
「看破してくれるのは、いつだって貴様だな。デュアセラズロお……意図せず、もろとも壊していく。なにもかもを―――かつてと同じように!」
咆哮し返されたのは、意外だった―――そしてその文言が、こちらを殺戮する呪文でなかったことも。表向きそうであるだけか、いつでもそう出来るという裏返しか……分かったものではないが。この男のリミッターの外れ具合は尋常でないし、リミッターとして機能してくれる存在は既に失われた。おそらくは殺した。この手で。三年前に。約束と引き換えに残りの生涯を支払って、その男は大きくなった赤ん坊を楽園からもう一度取り返した。のこされた自分には……たったの、それだけ。
―――頼む。
(シザジアフ……!)
その名が、心臓より深みからこみ上げ、肺腑を痺れさせる。
現状を打破するための策を練らなければならないのは承知していたが、なによりも衝動が理性を押し拉いだ。舌頭まで唾を茹でこぼすような熱の勢いに呑まれ、口早に口数を増やしてしまう。
「アーギルシャイアの臍帯もお前だな。旗司誓を……<彼に凝立する聖杯>を、煽動したのか! いつから―――仕組んでいた? 僕もシザジアフも、蒸発した時からか」
「それが叶っていたなら、今とはまた違っていただろうがな」
「なに?」
「わたしだけでも残れば構わん―――練成魔士すら生死不明にした現場は王家の息が繋った上、母子の拉致も失敗したのだから、これ以上かかずらう益は無いと……組織は見捨てていたが。兄者が消え失せた時、わたしが思ったのは―――あの人が帰ってくる場所を残しておかないと。ただ、それだけだった。だからそのまま、わたしは組織に居続けた。彼がいた日々を、彼がいたように、使い込んだ……あの人には考えがあり、だからこそいなくなったのだと信じていた。彼の計画に障るような愚かな行いは、わたしだけはするまいと……心に決めていた。組織と縁を保ちながら後援へ回り、表向きは医者として、ヴァシャージャーの居住まいを構えた」
予想外の切り返しに、黙り込むまま、聞き入る―――少なくとも、そういう振りをして、切り札を手探りした。相手の呼吸の貯め方、手足の動線、眼球の振り幅、魔術が振るわれる兆しの有無。第六感までも振り絞って……この場を制する糸口を、探す。さっきのような一方的な最後通牒が自分たちの終止符となる結末を回避するためには、強弱、有利不利、有能無能といった度量衡から抜きん出る手を打つしかない。
(出来るか……?)
当の彼―――ジルザキアは、こちらの警戒をまるで意に介さずその場に佇んで、だらりと下げた両腕を力ませることすらなく、訥々と打ち明け話を続けている。
「彼が―――錆びた雲色の髪の男が<彼に凝立する聖杯>にいることも、後世には知っていた。旗司誓は、おおよそ軍閥だ。なれば、国家組織に縁者がいた方が、有事に役立てる。そう思い、わたしは八年前の戦争で立てた武勲を礎に、こちらへ移り住んだ。移り住んでからも……日常を、浪費した。浪費だと、気付いていなかった」
矢先。その顔面が痙攣した。【わら】いを上塗りしたのか。そう思えなくもない。
「ふざけている。なんだと? 彼が死んだ? 三年前だ。たった―――ひとっこひとりを、たすけようとした為に。死んだだと? あの……デュアセラズロの再来とまで世に言わしめた、彼が! 愚かしい特攻の末に。彼が、だ!!」
地団駄でも踏むように、がりっと長靴の踵で床板の欠片を抉りながら吐き捨てると、怒罵に見切りはついたようだ。まばたきで目の色から情動を掃くと、またしても呂律を静まり返らせてくる。
「その後、最小規模まで委縮した<彼に凝立する聖杯>に残らざるを得なかった旗司誓の誰かが、そのひとっこだということは分かった。それ以上は分からなかった。ならば全員殺すまで。それだけだ」
「組織に女を融通してもらって、座敷牢ででも犯行に及んだな。鎖と点滴に繋いで、アーギルシャイアの臍帯に……作り替えた。拐される程度の未熟者では、司左翼だか司右翼だか、軍服の見分けなど付くまい。身近だったから―――ただそれだけで、制服から警官だと思い込んだ。地下で暗ければ、緋色だか橙色だか、その色味の見分けすら付くまいよ」
「<彼に凝立する聖杯>の調査結果か。健闘したな」
「ああそれとも、本当に警官服でも仕立てたか? アーギルシャイアの臍帯を輸出するための踏許証の発行や隣国との手筈は、筐底に委ねたか……職権乱用か。中庸か。用が済むなら、どれでもいいか」
「戦争が勃起した当時から幅を利かせていた風聞どおりの証拠をくれてやったまでのこと。ここ数年で急激に隆盛してきた青い鴉なら、その上昇気流まかせにひと騒動起こしてくれようと―――それに巻き込まれて犠牲や被害が出たならば、死刑台へ送る足がかりとなる。一足飛びにそのような大義名分まで行かずとも、騒動を取り調べる過程で例のひとっこを探し出し、その者だけでもと……思っていたのに。貴様だ」
と―――
すうっ―――と片手をこちらに振り上げて、手首を指揮棒でも繰る仕草でくるりと回し、二本指の尖端を差し向けてきたのは、捨てぜりふの主と……彼の、魔神と。まるで鏡写しにしたかのように左右対称な動作なのに、殺意を剥き出しにした睥睨を突き刺してくるジルザキアよりも、ツェラシェルイシィ・アムアイニのどこを向くでもない瞳の虚にこそ怖気が走る。不可侵の領域に在る、未知へと―――神罰を信じる信徒のように震撼する。神の実存を疑う、愚かしい衆生であったとしても。自分だから、こうして成すすべなく……彼らによって、物語られるしかない。
「貴様がいたなあ、デュアセラズロ―――ゼラ・デュアセラズロ・アーギルシャイア・イェスカザ・アブフ・ヒルビリ。今となっては、呼称はこれですべてか? こうなると、もはや死に神ですらない。何者だ、魔王め。もとより化け物の分際で、いつからどこから神にすら化け損ねた?」
「教えてくれるかい? 僕も―――それを知りたいあまり、ここまでやって来た気がしてるんだ」
独白に答えはなく、ジルザキアもまた応えてきはしない。応酬が堪えたという素振りとてない。ただ―――相手は、こちらを差し示していた腕を、頓着もせず下ろした。効果の指向性を高める目印となるため、特に大陸連盟に系譜を連ねる練成魔士は、対象めがけて腕や指先を示す動作を魔術の発動に伴わせる傾向にあるのだが……‘公爵’級には、それこそ不要の小手先と言うことか。ツェラシェルイシィ・アムアイニもまた、その手を下へ退かして中空に佇立しているだけだ。
ジルザキアは悔恨するでもなく、どこか品評するような口ぶりの断言を並べていく。
「どうでもいいと思えていた―――兄者以外は、どうでもよかった。今にしてみると、それもまた軽率だったな。悔踏区域外輪にありふれた混血の野良の群れに紛れ、潜み……貴様が、いた。公開処刑されるべきテロ行為を、まさかの―――<彼に凝立する聖杯>全員が全員を無傷で、勲章まで与えて、送り返してくれたなあ。ゼラ・イェスカザを名乗って。ひとっこひとりを除いて。まさかの」
「……―――」
「先ほど、司左翼に<彼に凝立する聖杯>を殲滅するよう密命を授けた。特に最近は【血肉の約定】にクア・ガロ・ジェジャルの確保と、前例のない特派が立て続いている……後継階梯附任権の失効が撤回されるまでの事態を吹聴されたところで、彼らには法螺と疑うべくもない」
遠く―――割れ目から吹き込む風のような音色で、警笛が聞こえてくる。それが、こちらに殺到しようとしてのものか……判断できないが、願わくばそうでないことを祈るしかない。いかな天災をも凌駕する人災の余波がどこまで波及するかなど知れたものではないし、まさか神蛇の腹を食い破る程度の供物で、この天誅―――だろう? 彼にとっては―――が収まるはずも無かろう。実際彼は、証言したではないか……司左翼を<彼に凝立する聖杯>へ差し向けた、と。
「従うぞ―――愚かしくも賢くも、軍人がゆえに、従うぞ。鴉の青い羽を血染めにし、藍より青し血の気失い死骸を雹砂に討ち捨ててくれよう。そこからあぶれた、ひとっこひとりは―――後継第一階梯だろうが、殺す」
なおも、そうしてまたひとつ―――嘲笑と念押しを、くれてくる。その、歪みゆく顔皮の軋轢音のような……呪詛を、遂げた。
それを聞き終えてからひとまず自分がしたのは、身構え直すことだった。右半身を前に左足を引き、重心の位置は据え置いたまま力を込める筋をずらして、来るべき時に必要とされる瞬発力を出せるよう調整する―――その際に立ってしまう僅かな靴底の雑音をすり潰すべく、それを問うた。
「そうして、なにを成す?」
「楽園を取り戻す」
「げろんちょ。陰湿な仇討ちにしたって大掛かりねー。要は、ネチネチしてられるだけ暇なんでしょ。することないんなら鼻歌でも歌ってれば? 気分にじゅうまるくなってくれる予感するわよ。にじゅーまるく」
同じく体勢維持を誤魔化すだけにしては いけずうずうしい物腰のブーイングで、ティエゲが後方から合いの手など入れて来るが。
あけすけに、お邪魔虫―――つまりは虫けらでも見咎めるように―――の部外者を初めて視認した眼差しで、ジルザキアが毒つく。
「貴様にしては軽はずみな者を連れているな」
「お。悪趣味なロン毛の奥にゃあ見る目あるじゃん。分っかるー? そーなのーこの弟ほんっとに手ぇ焼くのー」
「きっと逆」
一応は、小声で背後に歯向かっておくにせよ。
ティエゲは常ながらの自前目線なりに、すげない上に、にべもなかった。しぶしぶといった様子で食い下がりつつも、不平を唸らせる。
「なぁんでよ? 陰湿な仇討ちにしたって大掛かりでしょー? 社会の裏っ側でもチカラモチなら、いの一番に対人殺傷能力傭員のひとりやふたり<彼に凝立する聖杯>に寄越しときゃ済んだじゃないの。井戸に毒ポイで構成員の八割がてらオダブツにして残党狩りってのが、いっちばん手っ取り早くない? おあつらえむきに旗司誓って武闘派組織してくれてんだから、テキトーな武装犯罪者に濡れ衣ぺちょんってさせちゃってさ。皆殺しで片付く話なら」
「そうじゃない……んだ。きっと」
「へ?」
「仇を討ってるんじゃないから―――単に殺せば済むなんて話じゃないんだ。これは。そうだろう? ……ジルザキア」
憶測ではあったが、確信していた。ジルザキアの表情が、それを裏付ける―――相槌を打つように俯かせた輪郭が、笑殺以外の情念にぎりっと締め上げられて、歯列をこじ開けさせた。はあ、と吐いた大息に連れ出されるように……告白までも、まろび出る。
「わたしは、おそれていた! 彼を、変え―――命さえ擲たせた、その未知の怪物を恐怖していた!」
冴え冴えとした薄墨色の闇を、赤黒い火の手がないまぜにする、斑の混沌。それを大きく逆巻かせるように、蹂躙の狭間から―――ジルザキアが、絶叫した。
「それを殲滅しさえすれば、この恐怖も……虚無も、消える!!」
そして……数秒。
そこで沈黙していたことに深い意味はないし、浅慮なりに場の流れに任せていたわけでもない。ただただ、思い返すでもなく、思い出すことがあっただけだ。出来心にも―――それだけだ。
ちら、とティエゲへ横目を振って―――振り終えて、ため息をつく。悪気はないし、悪ふざけでもありはしない……だとしても、こうなっては、そうするしかないのだ。いつだって。
「……言えないなあ。やっぱり。僕じゃ。わたしでも」
と、かぶりを振る。
それを終えると、口火を切った。
「―――現れてしまったんだな。ジルザキア。ジルザキア・ヴァシャージャー・アーギルシャイア。それが、お前の巨躯か。星か。掴めてしまった絶望か。失楽園を失う……正逆の楽園か」
相手は、なにを言うでもない―――首肯どころか、反駁や、弁難すらも。深まっては浅くなる【わら】いの浮沈に苦しむかのように胸郭を揺さぶりながら、召喚した魔神を真横に従僕させたままだ。そこここで、急激に熱された挙句に夜宵の冷気を当てられた石の建材が、ぱしぱしと音を立てては自壊し弾けていく……その破片に打たれるなら、普段ならおどけるような素振りを見せるだろうジュサプブロスも、今ばかりは術者の小脇で片膝をついて控えていた。のっぺりとした真顔で、言葉なく―――いや、まるで、こちらから迸る言葉の散り際を見送るように、頤を上げている。おそらくは肩後ろのティエゲも、そうなのではないかと……そう思えた。
告げる。ここが滅亡の坩堝だとしても―――絶望せずにいるなら、告げる言葉がある。
「ジルザキア。旗司誓を焼き払い、屍を踏み越えて後継第一階梯に手を掛けたところで、お前のその空白は埋まりはしない。楽園は失われた。隙間成す空隙は、だからこそ万物へ等しく訪れる可能性だ―――閉ざされることのない、開かれた無限だ! 引き金おそろしくとも……千転万化をゆるされた、未来への解放だ!」
ついなにかを噛み千切るように食いしばりそうになる奥歯をこじ開けて、せりふが胸奥からあふれ出るまま言い捨てていく。涙の粒であれば流れ落ちるだけ内なる蒙昧もろとも消えてくれるのだろうが、不可視不可触の言葉となると、尽きるまで吐瀉し続けるしか……打つ手がないではないか。
右手に拳を固めて、肩を怒らせる。戦闘態勢ではなく、純然たる怒気だった。
「あの子が……未知の怪物だって? 赤ん坊は赤ん坊だ―――ただ非力に、大人の小指を握ることしか出来なかった赤ん坊だ! 大きく育っても育っても、ただの人間にしかなれない赤ん坊だ!」
―――つと。
己の声色が震える予感を、胸倉に覚えた。作っていた拳をそこへ押し当てて、いったん声を途切れさせる。泣いて、しゃくりあげるような語尾になってしまわないように。怒っていたからだ。それだけは、勘違いさせてはならなかった。
「同じように、シザジアフも超人じゃなかっただけだ! 握られた小指を振り払えなかった、握り返したいと願ってしまった、ただそれだけの人間! ゆびきりをした―――どうして、それだけのことを……ゆるされないのか!」
その叫びは、届かなかった―――少なくとも、ここに臨場した者たちには、誰ひとりにも届かなかった。それは三年前も届かなかった指先のように無様に冷えて、三年より前から届かずにいる祈りのように感傷を膿ませる。またひとつ増した桎梏に、喉仏で詰まらせてしまった吸気を、今度こそ攻撃のために胸中で練り上げて……呼気に化かす時、あえて宣告を乗せた。
胸に当てていた片手を目の前へと差しのばして、拳を握り締め直す。ぎゃっと、擦り合わされた二重の手袋が、掌の中から悲鳴を上げた。それを轢き潰して―――宣告する。
「いいだろう。ゼラ・デュアセラズロ・アーギルシャイア・イェスカザ・アブフ・ヒルビリは、その呼び声に魔王として【こた】える。ここで終わらせる。須く以て―――決着を。ジルザキア・ヴァシャージャー・アーギルシャイア!」
対する、報いは―――
「こんなところで終わりになど、とうに……出来るものかアアアァァあア!」
そして殺し合いが再開され、鉄槌もまた【世】【界】へと振り下ろされる。
「語りて騙る蟒蛇の、口喰む木霊‘伯爵’ザクラプフェムノ!」
呪文がティエゲのそれと重合し、次元の結び目を綻ばせて、限局的な異次元を現世に許容させる。
それは魔神。日が差せば、影もまた物陰に差すように―――声の音響とすげ替わるように現出した年若い男は、屈めた背で長髪をゆらめかせては、いつだって面白がるような瞳をしている。それを見るまでも無い。指紋のひと巻きまで熟知し尽くしている。そのように手塩にかけ、練磨し、修練を重ねた研鑽の果て、人型にまで昇華させた……傍らに在る、ジュサプブロス。
その余裕を砕いて余りある―――詠唱を、あっという間に、相手は完了させた。
「ツェラシェルイシィ・アムアイニ!!」
それによる招聘は、更なる瞬時。
招き入れられた破滅の容貌は、完璧なまでに美しかった。人にそっくりで―――なのに、双眸、鼻梁、脊梁、脚線、睫毛の一本に至るまで、人では成し得ない美しさの造形を成立させている。肌の質感では成立しない白磁色に長い髪だけを纏った未成熟な裸体から発散される神々しさは、威光のように人心を魅了するだろう……練成魔士でなければ、それを神と呼ぶかもしれない。性差も無く、齢を刻むことも無く、慈悲も無い。
直後。その魔神を触媒に、相手の魔力が積算を浸透し―――否、侵犯し、貫通し、世界の折り目を折り直した。それが分かる。だから悟る。
(―――死んだっ!)
即座だった。
「数えにて!」
背後から、ティエゲが叫ぶ。こちらを追い越すようにして、魔術を放つべく―――その術式に被せるように、彼もまた同じ術式を編み上げた。示し合わせるまでもなく、最硬度を叩き出す障壁を構成する組み合わせである。開いた両手を前方に突きつけるようにして重ねて、先手を打った彼女を追い上げるように……声を、唱和させる。
「一二三五指十指、十四指!」
「君は御手―――腕へ招く、抱く蛇腹児!」
ふたりの魔術が重なり合って、純白の光を二重に展開した。つま先の前から、鞭のように撓る光の鉄鎖の連なりが膨れ上がり、そのまま自分たちを内側に閉ざすように中空で輪を描くまま、頭上で円周を縮め連結する。光線の弧に遮られて、卓上に伏せたジョッキグラスの中にいるような歪つさの視界が、目一杯に広がった―――
その刹那に、世界は壊落した。楽園のように。
「厭くる 天空へ お前は美しい!!」
ぞワっ―――としか表現できない、ただただ生命を圧搾される予感に身の毛がよだつ、と同時か……それすら遅かったか。魔術の……純白の破壊力が熱を帯びて、襲い来る。直前に読み取れた折り目から逆算するに、光熱波だ―――と考えていたのだが。
(違う―――これはッ……冗談じゃ、ない!)
光熱波は攻撃系の魔術の中でも、容易に折り成すことが出来る部類だ。低爵位の魔神でも扱いやすい、いわゆる初手である。拳打で言うところの手刀のようなもので、致命打に昇華させるよりは手数として使うことが多い―――という一般論が通用するような、一撃ではなかった。これは、一撃なんぞで済まされるような火力ではない。さながら、真白の津波だ。ありとあらゆる外力を拒絶する光の円の中に居ながら、戦慄するまま身構えてしまうまでに……圧倒される。
ティエゲもまた、ひるむことすら忘れて腰だめを固め、必死に魔術を制御していた―――と見えたが、駄目だ。もう焼き切られる。じゃ! と、まるで揚げ油を飛び散らせたような断末魔を上げて、一輪目の光の網が張り裂かれた。十秒と保たなかった。ならば二十秒後には死んでいるのか……ぞっとしない思い付きが凍える爪で背髄を掻いてくる頃には、光と熱の奔流も収束を見せ―――そして、思いついた妄想で終わってくれるうちに、己の生み出した光の連鎖も解け出した。上から下へと、光る粒子が雪崩落ち……すげ替わった眼界を、見るしかない。
それ ありうるなら<楽園崩落>。
あたかもそれは<楽園崩壊>。
「―――Memento mori」
呻く。
両サイドにあった壁が、無い―――どころか、上階すら無い。あまりの威力に、こちらを狙ってやや上向かせていた発射角度が、大きく跳ね上がったらしかった。床から、上……それ以外に表現しようがない辺り一面が、一掃されている。この三階層を支点に、四階層目もろとも天井まで斜めにぶち抜かれ、捲れ上がり、吹き飛ばされた。あまりの力圧に瓦礫の一抹まで粉砕されたものか、頭上から落石ひとつ落ちてこない。直撃を受けて、これだ……熱波が掠めた程度であろう周囲の石畳さえ、ぱきぱきと余熱で爆ぜては縦横無尽に罅を入れている。あちこちでぶすぶすと火の手を上げ始めたのは、書棚や書類といった生活物品なのだろうが―――これもまた、あらかた木っ端微塵にされているようで、蛇の舌のようにちろちろと延焼しているだけの無力なものだ。
まるで、銀杏型の野外劇場の舞台にいるが如く……ぽっかりと月光が差し込み出した大穴の根元で、ふたりして守り抜いた我が身同士を、ちっぽけな円陣のように焼け残った石床の上に寄せ合いながら。十数メートル先―――ちょうど銀杏の葉の根元の位置にいる相手と対峙して、それを認めるしかない。
激甚である。
「呼名召喚可能な―――魔神!?」
掲げていた両手を下げつつ、愕然と独りごちる。
これもまた、あまりのことに現実味を失くしてか―――ティエゲは、能天気なほどにいつもの調子で、追従してきた。ただし……その舌の根に蟠った声音の震えに、軽く噎せてから。
「すわ国宝級。んな公爵クラス、授業でしか拝んだことないわー。二重防御がチリ紙ときた。マジモンで‘公爵’? ‘大公’ディエースゥアーの直下でない?」
「ツェラシェルイシィ・アムアイニ―――世界樹より溶け出づる雫……」
と。視線を横ずらせて、ティエゲを注視の中に捉える。自分の左肩の、裏あたり……半歩ほど左半身を引いて腰を落とした彼女の肩口に、バケツ一杯の水銀を水飴にした風貌の魔神が張り付いていた。飴細工のように―――棍棒ほどもある棘を出したかと思えばその棘が猿の中指に変わり、それで輪を作った途端にくるんとまるまって昆虫の幼虫になる。鳴き声はしない。無音のまま増殖と減少を繰り返しては、捏ねられるパン生地のように変形している。
「それ。ザクラプフェムノ?」
「そ。ステルスや移動なんかの護身方面に特性アリの、中の下クラスの伯爵」
「腕前は?」
「あんたってばンっとにゲェだねー。この銀色うねりんこ見といて訊くかー? 厭味で済むうちに察しとき」
「ちょっとは上達していない?」
「してたらもーちょい給金と待遇イイ出世してたっちゅーの。家計簿見る? ハートの」
それこそ厭味で済ませられる土壇場ではないのだが、ティエゲは皮肉で口を閉ざすと、前方―――波浪のごとく、あたりかまわずもぎ取っていった元凶を見やった。一片たりと残らず、防壁の光塵が消え失せたのが……謂わば、そのタイミングだったのだが。
自分もまた、そちらを見据え直す。十メートルほど奥、こちら側の建築を破砕したのと引き換えに、より陰を籠らせた暗がりへと沈み込んだ―――立ち尽くす、その姿を。その肩に肩を並べた、魔神を。
(実力差をひっくり返しての竜闘虎闘にしたって、目クソ鼻クソに無謀だな。何分間、爪楊枝で軍艦と渡り合える? 何分で、素人ひとりが軍艦を操縦しきれず転覆させて自滅する?)
それが、甘い見積もりなのは分かっていた。その素人具合とて、ずぶなのかどうか知れたものではない。自分が彼に魔神と魔術の手解きをしたのは、二十年以上も前だ―――練達の進捗状況など知るべくもないし、あれからモグリの練成魔士にでも教鞭を取らせていた可能性も否定できない。分析する材料は限られ、そうするのに使える時間はなお限られている……
それでも―――見て分かることは、あった。
星と月による蒼褪めた帳を底から煮上げるように足元を這いずる熾から焙り出された男の姿態は、状況に比べればあまりに平凡だったろう。背丈の割に痩せぎすと思われていた背格好は、二十余年の年月を過ぎて、成長を終え、老成を始めていた。その、立ち居と顔立ち―――更には、陰気。かつては見慣れていた長い黒髪と、その漆黒よりくすんだ色合いの黒瞳。そして初めて見る、三条の古傷……左頬と唇のきわで、まるで生き物のように、壮絶な狂い笑みに押し上げられては蠢く白い傷痕。緋色の軍服に施された意匠と徽章は見るだに特別で、司左翼において無二のものだと知れた―――練成魔士としての実力か魔神の能力か、魔術の制御も完璧だったようで、その袖口には焦げも解れもない。鬼火を宿した宝石も含めて、目に見える武装はしていなかった……なんの安心要素にもならないが。この国の軍人は佩剣の義務を負う。
(そんな―――話か……これが!)
総括し、刮眼し、―――怒号するしかなくなって、彼は吼え声を上げた。
「すべて、仕組んだな……ジルザキア! ヴァシャージャー唯任左総騎士となってまで! お前は!」
「看破してくれるのは、いつだって貴様だな。デュアセラズロお……意図せず、もろとも壊していく。なにもかもを―――かつてと同じように!」
咆哮し返されたのは、意外だった―――そしてその文言が、こちらを殺戮する呪文でなかったことも。表向きそうであるだけか、いつでもそう出来るという裏返しか……分かったものではないが。この男のリミッターの外れ具合は尋常でないし、リミッターとして機能してくれる存在は既に失われた。おそらくは殺した。この手で。三年前に。約束と引き換えに残りの生涯を支払って、その男は大きくなった赤ん坊を楽園からもう一度取り返した。のこされた自分には……たったの、それだけ。
―――頼む。
(シザジアフ……!)
その名が、心臓より深みからこみ上げ、肺腑を痺れさせる。
現状を打破するための策を練らなければならないのは承知していたが、なによりも衝動が理性を押し拉いだ。舌頭まで唾を茹でこぼすような熱の勢いに呑まれ、口早に口数を増やしてしまう。
「アーギルシャイアの臍帯もお前だな。旗司誓を……<彼に凝立する聖杯>を、煽動したのか! いつから―――仕組んでいた? 僕もシザジアフも、蒸発した時からか」
「それが叶っていたなら、今とはまた違っていただろうがな」
「なに?」
「わたしだけでも残れば構わん―――練成魔士すら生死不明にした現場は王家の息が繋った上、母子の拉致も失敗したのだから、これ以上かかずらう益は無いと……組織は見捨てていたが。兄者が消え失せた時、わたしが思ったのは―――あの人が帰ってくる場所を残しておかないと。ただ、それだけだった。だからそのまま、わたしは組織に居続けた。彼がいた日々を、彼がいたように、使い込んだ……あの人には考えがあり、だからこそいなくなったのだと信じていた。彼の計画に障るような愚かな行いは、わたしだけはするまいと……心に決めていた。組織と縁を保ちながら後援へ回り、表向きは医者として、ヴァシャージャーの居住まいを構えた」
予想外の切り返しに、黙り込むまま、聞き入る―――少なくとも、そういう振りをして、切り札を手探りした。相手の呼吸の貯め方、手足の動線、眼球の振り幅、魔術が振るわれる兆しの有無。第六感までも振り絞って……この場を制する糸口を、探す。さっきのような一方的な最後通牒が自分たちの終止符となる結末を回避するためには、強弱、有利不利、有能無能といった度量衡から抜きん出る手を打つしかない。
(出来るか……?)
当の彼―――ジルザキアは、こちらの警戒をまるで意に介さずその場に佇んで、だらりと下げた両腕を力ませることすらなく、訥々と打ち明け話を続けている。
「彼が―――錆びた雲色の髪の男が<彼に凝立する聖杯>にいることも、後世には知っていた。旗司誓は、おおよそ軍閥だ。なれば、国家組織に縁者がいた方が、有事に役立てる。そう思い、わたしは八年前の戦争で立てた武勲を礎に、こちらへ移り住んだ。移り住んでからも……日常を、浪費した。浪費だと、気付いていなかった」
矢先。その顔面が痙攣した。【わら】いを上塗りしたのか。そう思えなくもない。
「ふざけている。なんだと? 彼が死んだ? 三年前だ。たった―――ひとっこひとりを、たすけようとした為に。死んだだと? あの……デュアセラズロの再来とまで世に言わしめた、彼が! 愚かしい特攻の末に。彼が、だ!!」
地団駄でも踏むように、がりっと長靴の踵で床板の欠片を抉りながら吐き捨てると、怒罵に見切りはついたようだ。まばたきで目の色から情動を掃くと、またしても呂律を静まり返らせてくる。
「その後、最小規模まで委縮した<彼に凝立する聖杯>に残らざるを得なかった旗司誓の誰かが、そのひとっこだということは分かった。それ以上は分からなかった。ならば全員殺すまで。それだけだ」
「組織に女を融通してもらって、座敷牢ででも犯行に及んだな。鎖と点滴に繋いで、アーギルシャイアの臍帯に……作り替えた。拐される程度の未熟者では、司左翼だか司右翼だか、軍服の見分けなど付くまい。身近だったから―――ただそれだけで、制服から警官だと思い込んだ。地下で暗ければ、緋色だか橙色だか、その色味の見分けすら付くまいよ」
「<彼に凝立する聖杯>の調査結果か。健闘したな」
「ああそれとも、本当に警官服でも仕立てたか? アーギルシャイアの臍帯を輸出するための踏許証の発行や隣国との手筈は、筐底に委ねたか……職権乱用か。中庸か。用が済むなら、どれでもいいか」
「戦争が勃起した当時から幅を利かせていた風聞どおりの証拠をくれてやったまでのこと。ここ数年で急激に隆盛してきた青い鴉なら、その上昇気流まかせにひと騒動起こしてくれようと―――それに巻き込まれて犠牲や被害が出たならば、死刑台へ送る足がかりとなる。一足飛びにそのような大義名分まで行かずとも、騒動を取り調べる過程で例のひとっこを探し出し、その者だけでもと……思っていたのに。貴様だ」
と―――
すうっ―――と片手をこちらに振り上げて、手首を指揮棒でも繰る仕草でくるりと回し、二本指の尖端を差し向けてきたのは、捨てぜりふの主と……彼の、魔神と。まるで鏡写しにしたかのように左右対称な動作なのに、殺意を剥き出しにした睥睨を突き刺してくるジルザキアよりも、ツェラシェルイシィ・アムアイニのどこを向くでもない瞳の虚にこそ怖気が走る。不可侵の領域に在る、未知へと―――神罰を信じる信徒のように震撼する。神の実存を疑う、愚かしい衆生であったとしても。自分だから、こうして成すすべなく……彼らによって、物語られるしかない。
「貴様がいたなあ、デュアセラズロ―――ゼラ・デュアセラズロ・アーギルシャイア・イェスカザ・アブフ・ヒルビリ。今となっては、呼称はこれですべてか? こうなると、もはや死に神ですらない。何者だ、魔王め。もとより化け物の分際で、いつからどこから神にすら化け損ねた?」
「教えてくれるかい? 僕も―――それを知りたいあまり、ここまでやって来た気がしてるんだ」
独白に答えはなく、ジルザキアもまた応えてきはしない。応酬が堪えたという素振りとてない。ただ―――相手は、こちらを差し示していた腕を、頓着もせず下ろした。効果の指向性を高める目印となるため、特に大陸連盟に系譜を連ねる練成魔士は、対象めがけて腕や指先を示す動作を魔術の発動に伴わせる傾向にあるのだが……‘公爵’級には、それこそ不要の小手先と言うことか。ツェラシェルイシィ・アムアイニもまた、その手を下へ退かして中空に佇立しているだけだ。
ジルザキアは悔恨するでもなく、どこか品評するような口ぶりの断言を並べていく。
「どうでもいいと思えていた―――兄者以外は、どうでもよかった。今にしてみると、それもまた軽率だったな。悔踏区域外輪にありふれた混血の野良の群れに紛れ、潜み……貴様が、いた。公開処刑されるべきテロ行為を、まさかの―――<彼に凝立する聖杯>全員が全員を無傷で、勲章まで与えて、送り返してくれたなあ。ゼラ・イェスカザを名乗って。ひとっこひとりを除いて。まさかの」
「……―――」
「先ほど、司左翼に<彼に凝立する聖杯>を殲滅するよう密命を授けた。特に最近は【血肉の約定】にクア・ガロ・ジェジャルの確保と、前例のない特派が立て続いている……後継階梯附任権の失効が撤回されるまでの事態を吹聴されたところで、彼らには法螺と疑うべくもない」
遠く―――割れ目から吹き込む風のような音色で、警笛が聞こえてくる。それが、こちらに殺到しようとしてのものか……判断できないが、願わくばそうでないことを祈るしかない。いかな天災をも凌駕する人災の余波がどこまで波及するかなど知れたものではないし、まさか神蛇の腹を食い破る程度の供物で、この天誅―――だろう? 彼にとっては―――が収まるはずも無かろう。実際彼は、証言したではないか……司左翼を<彼に凝立する聖杯>へ差し向けた、と。
「従うぞ―――愚かしくも賢くも、軍人がゆえに、従うぞ。鴉の青い羽を血染めにし、藍より青し血の気失い死骸を雹砂に討ち捨ててくれよう。そこからあぶれた、ひとっこひとりは―――後継第一階梯だろうが、殺す」
なおも、そうしてまたひとつ―――嘲笑と念押しを、くれてくる。その、歪みゆく顔皮の軋轢音のような……呪詛を、遂げた。
それを聞き終えてからひとまず自分がしたのは、身構え直すことだった。右半身を前に左足を引き、重心の位置は据え置いたまま力を込める筋をずらして、来るべき時に必要とされる瞬発力を出せるよう調整する―――その際に立ってしまう僅かな靴底の雑音をすり潰すべく、それを問うた。
「そうして、なにを成す?」
「楽園を取り戻す」
「げろんちょ。陰湿な仇討ちにしたって大掛かりねー。要は、ネチネチしてられるだけ暇なんでしょ。することないんなら鼻歌でも歌ってれば? 気分にじゅうまるくなってくれる予感するわよ。にじゅーまるく」
同じく体勢維持を誤魔化すだけにしては いけずうずうしい物腰のブーイングで、ティエゲが後方から合いの手など入れて来るが。
あけすけに、お邪魔虫―――つまりは虫けらでも見咎めるように―――の部外者を初めて視認した眼差しで、ジルザキアが毒つく。
「貴様にしては軽はずみな者を連れているな」
「お。悪趣味なロン毛の奥にゃあ見る目あるじゃん。分っかるー? そーなのーこの弟ほんっとに手ぇ焼くのー」
「きっと逆」
一応は、小声で背後に歯向かっておくにせよ。
ティエゲは常ながらの自前目線なりに、すげない上に、にべもなかった。しぶしぶといった様子で食い下がりつつも、不平を唸らせる。
「なぁんでよ? 陰湿な仇討ちにしたって大掛かりでしょー? 社会の裏っ側でもチカラモチなら、いの一番に対人殺傷能力傭員のひとりやふたり<彼に凝立する聖杯>に寄越しときゃ済んだじゃないの。井戸に毒ポイで構成員の八割がてらオダブツにして残党狩りってのが、いっちばん手っ取り早くない? おあつらえむきに旗司誓って武闘派組織してくれてんだから、テキトーな武装犯罪者に濡れ衣ぺちょんってさせちゃってさ。皆殺しで片付く話なら」
「そうじゃない……んだ。きっと」
「へ?」
「仇を討ってるんじゃないから―――単に殺せば済むなんて話じゃないんだ。これは。そうだろう? ……ジルザキア」
憶測ではあったが、確信していた。ジルザキアの表情が、それを裏付ける―――相槌を打つように俯かせた輪郭が、笑殺以外の情念にぎりっと締め上げられて、歯列をこじ開けさせた。はあ、と吐いた大息に連れ出されるように……告白までも、まろび出る。
「わたしは、おそれていた! 彼を、変え―――命さえ擲たせた、その未知の怪物を恐怖していた!」
冴え冴えとした薄墨色の闇を、赤黒い火の手がないまぜにする、斑の混沌。それを大きく逆巻かせるように、蹂躙の狭間から―――ジルザキアが、絶叫した。
「それを殲滅しさえすれば、この恐怖も……虚無も、消える!!」
そして……数秒。
そこで沈黙していたことに深い意味はないし、浅慮なりに場の流れに任せていたわけでもない。ただただ、思い返すでもなく、思い出すことがあっただけだ。出来心にも―――それだけだ。
ちら、とティエゲへ横目を振って―――振り終えて、ため息をつく。悪気はないし、悪ふざけでもありはしない……だとしても、こうなっては、そうするしかないのだ。いつだって。
「……言えないなあ。やっぱり。僕じゃ。わたしでも」
と、かぶりを振る。
それを終えると、口火を切った。
「―――現れてしまったんだな。ジルザキア。ジルザキア・ヴァシャージャー・アーギルシャイア。それが、お前の巨躯か。星か。掴めてしまった絶望か。失楽園を失う……正逆の楽園か」
相手は、なにを言うでもない―――首肯どころか、反駁や、弁難すらも。深まっては浅くなる【わら】いの浮沈に苦しむかのように胸郭を揺さぶりながら、召喚した魔神を真横に従僕させたままだ。そこここで、急激に熱された挙句に夜宵の冷気を当てられた石の建材が、ぱしぱしと音を立てては自壊し弾けていく……その破片に打たれるなら、普段ならおどけるような素振りを見せるだろうジュサプブロスも、今ばかりは術者の小脇で片膝をついて控えていた。のっぺりとした真顔で、言葉なく―――いや、まるで、こちらから迸る言葉の散り際を見送るように、頤を上げている。おそらくは肩後ろのティエゲも、そうなのではないかと……そう思えた。
告げる。ここが滅亡の坩堝だとしても―――絶望せずにいるなら、告げる言葉がある。
「ジルザキア。旗司誓を焼き払い、屍を踏み越えて後継第一階梯に手を掛けたところで、お前のその空白は埋まりはしない。楽園は失われた。隙間成す空隙は、だからこそ万物へ等しく訪れる可能性だ―――閉ざされることのない、開かれた無限だ! 引き金おそろしくとも……千転万化をゆるされた、未来への解放だ!」
ついなにかを噛み千切るように食いしばりそうになる奥歯をこじ開けて、せりふが胸奥からあふれ出るまま言い捨てていく。涙の粒であれば流れ落ちるだけ内なる蒙昧もろとも消えてくれるのだろうが、不可視不可触の言葉となると、尽きるまで吐瀉し続けるしか……打つ手がないではないか。
右手に拳を固めて、肩を怒らせる。戦闘態勢ではなく、純然たる怒気だった。
「あの子が……未知の怪物だって? 赤ん坊は赤ん坊だ―――ただ非力に、大人の小指を握ることしか出来なかった赤ん坊だ! 大きく育っても育っても、ただの人間にしかなれない赤ん坊だ!」
―――つと。
己の声色が震える予感を、胸倉に覚えた。作っていた拳をそこへ押し当てて、いったん声を途切れさせる。泣いて、しゃくりあげるような語尾になってしまわないように。怒っていたからだ。それだけは、勘違いさせてはならなかった。
「同じように、シザジアフも超人じゃなかっただけだ! 握られた小指を振り払えなかった、握り返したいと願ってしまった、ただそれだけの人間! ゆびきりをした―――どうして、それだけのことを……ゆるされないのか!」
その叫びは、届かなかった―――少なくとも、ここに臨場した者たちには、誰ひとりにも届かなかった。それは三年前も届かなかった指先のように無様に冷えて、三年より前から届かずにいる祈りのように感傷を膿ませる。またひとつ増した桎梏に、喉仏で詰まらせてしまった吸気を、今度こそ攻撃のために胸中で練り上げて……呼気に化かす時、あえて宣告を乗せた。
胸に当てていた片手を目の前へと差しのばして、拳を握り締め直す。ぎゃっと、擦り合わされた二重の手袋が、掌の中から悲鳴を上げた。それを轢き潰して―――宣告する。
「いいだろう。ゼラ・デュアセラズロ・アーギルシャイア・イェスカザ・アブフ・ヒルビリは、その呼び声に魔王として【こた】える。ここで終わらせる。須く以て―――決着を。ジルザキア・ヴァシャージャー・アーギルシャイア!」
対する、報いは―――
「こんなところで終わりになど、とうに……出来るものかアアアァァあア!」
そして殺し合いが再開され、鉄槌もまた【世】【界】へと振り下ろされる。
0
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