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転章
転章 第五部 第六節
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「男になりませんようにって言ってみたはいいものの、男ってなんだ?」
うららかな午後。よくあるように、シゾーは空を見上げて自問していた。空には雲のように解答は浮かんでいないが、奇妙奇天烈なもので、眺めるうちに頭の中にそれを浮かばせてくれることがある。それはここに来て三年目ほどには手中にしていた既知だったが、六年目には習慣化していたので、雨天の時以外は外に出て読書するようになっていた。
野外のどこに座卓を構えたところで構わないのだろうが、なにもないグラウンドの中央に座り込むのも変だし、荷揚げ縄の近くにいて揚げ荷に落ちてこられても堪ったものではない。ついでに一杯ひっかけて上機嫌となった旗司誓が通りすがりに駄賃をくれることがある―――さぼってないで働けと鉄槌を食らうこともあるが小銭の魅力には匹敵しない―――ため、シゾーは要塞の中庭の通行口わきに居着くことが多かった。運んできた元噴水のブロックを椅子代わりにしているのだが、最近は身長の伸びが勝って低さが厭わしく感じられるようになってきていた。とは言え二個目を縦に積んだところで、帯に短くタスキに長いのは分かり切っていたので、どうしようもなく石壁に背中を凭れさせながら椅子から半分膝を立てつつ、膝の皿の上に書籍を広げていた。
そこに現れたのは、ニィヤとゼンケバッハだった。いつものように酔い覚ましがてらの足延ばしか、ただ通りがかったなりの偶然か……分かりはしないが。ともあれこのふたりは、子どもが勉強することに好意的な派閥だった繋がりで友情が芽生えたらしく、よく酒の席では揃って話をねだりに来るので、シゾーからしてみればお互いに親近感を培いやすい部類の人間である―――冷やかしがてら寄ってこられても、つんけんと突っぱねる嫌悪感など湧かない程度には。
「お。どーした? ボクちゃんが悩ましげに空ぁ見てんぞ」
「なに読んでんだ? 教えてくれよ。俺ぁ字なんて、自分の名前でやっとかっとなんだ―――て」
決まり文句と一緒に本を覗き込んできたニィヤが、挿絵を見て露骨に不服そうにした。不服ついでとばかりに、そこに描かれている素裸の女の乳房をつつく。
「なんだ? また色気のねえ春画本だな。男も女も、死んだ蜥蜴みてーにグダッと並んでるだけじゃねーか。文字でどう書かれてるにしたって、絵だってもっと性根入れてハラ噛み合ってくれなきゃあ、どっちらけの総スカンってもんだぜ」
「医学書ですよ、これ。しゅんがぼんって本じゃないです。そういったのだと、蜥蜴なら腹部に噛み付くんですか?」
と。
「……あー」
「ああー」
「どうしました?」
なにやら瓜ふたつの気配で頭を抱え出した旗司誓たちに、シゾーは声を上げた。急に裏がある態度を決め込まれては、どうしたって気がかりだった。
かなりの沈黙を挟んで、だのに二人の間では頻回さながらチラリラちらりらと目配せを交わし合いつつ―――お前が言えよ―――お前こそ言えよ―――、ようやっと重い口を開く。まずは、古顔であるニィヤから。
「ボクちゃん。こういうのに興味湧くお年頃になった?」
「お年頃? 齢なら多分、十三とかそれくらいだけど」
「なんちゅーかさ。あれよ。おヒゲ―――は、まだ剃る程じゃねえっぽいけんど。おマタの方はどう? 男になった?」
おっついてきたせりふに、なおの事分からなくなる。男になった? なるも何も、性別など生まれた時から割り振られている。シゾーは男だ。だが、子どもの時からそうだったからこそ、今では分からなくなっていた。だからこそ、こうしてとっくの昔に読み古してしまっていた本まで持ち出したのだが。
この一ページだって読み解けないはずのふたりが、雁首を揃えて知ったような顔をしている。それが分かって、シゾーは引き返せなくなった。もの知らずだと軽視されたのだ。自分は。こんな文盲たちから。男になった? ―――と。
「なんだってんですか? 毛? そんなもんでいいなら、シモの方が口まわりより そこそこ生えてますけど。男になるってのが、まだほかのことだってんですか?」
その彼らと言えば、シゾーの反応を見た途端、こうだ。
「なってねーなこりゃ。顔に書いてあらぁ」
「なんちゅーか。字ぃ無理な俺らにそれが分かっちまうってのも、なんだかなぁ」
「さもありなん、だろ。こーんな砂場まで流れてくるイカレ春売り、こっちの方から願い下げだっつの」
「顔と言やあ。こーんな魔訶めんこい顔してんのに、出入りのキャラバンや何某やらから拐されんかったもんか?」
「そこんとこぁアレよ。ボクちゃんだけ、まぁだ子ども認定だからなあ……しっかも、いっつも手綱引いてくれてた兄ちゃんだけドサまわりに行かされるようになったとくりゃ、取り残されても自然だろーよ。ぽつんと煮炊きに針仕事、家事に掃除の家内役ときた。家の内から出てみたところで―――このとおり、中庭どまりの本の虫だぜ?」
「坊ちゃんも、ボクちゃんのこたぁ、基本うっちゃらかしにしてるしなあ……そもそも論、フラゾアイン混じりの鬼っ子が養い親ってんじゃあ、頼れたもんかい。連中が真面にオスメスやってんのかなんぞ、知りたくもねえが。おっとろしい」
「くわばらクワバラ。にしても……瓢箪から駒なんざ出て来るもんなんだなあ。俺ぁてっきり兄ちゃんが、そこらへんも肩で風切っての大風吹かしてるとばかり」
「いやいや。あいつぁ色ボケも箱庭もマンザラ嫌ってっから。ありゃあ、見られる顔してるせいで、あっちゃこっちゃでなんやかんやと絡まれっぱなしになってきてるツケだろ。満更でもないんなら、これ幸いとちょくちょく調子に乗る尻軽さがありゃ楽しめるものを、そこはマンザラだからなあ」
「しゃーねーわな。あっちはあっちで、あのとおりシザジアフの親御が生真面目一徹だ。浮いた噂に限った話、鳴かず飛ばずのハトぽっぽ。まあ、手堅いなりに巧いことやってんのさ。そこんとこぁ親子だ」
「じゃ、決定だな。水も滴りそうな面構え同士、外仕事に回されるようになった途端に、ボクちゃんまで兄ちゃんの二の舞になっちゃあ気の毒だ」
「おう。五十歩百歩になる前に。五十歩目からの踏み出し方を教えとかにゃあ、兄弟分が揃いも揃って見当違いになっちまわぁな。いけねぇいけねぇ」
長ったらしい作麼生・説破の落とし前を両者にて勝手につけた挙句、ゼンケバッハがこちらへ片手を出してきた。人差し指と親指で輪を作り、残りの指を伸ばしてひらつかせる。何度か折って生兵法で接いだ小指が特に歪んでいたが、彼はその不格好さには拘らなかった。そのまま、提案してくる。
「ボクちゃん。有り金どんだけある?」
「金? まあ貸してもいいですけど、ひとりにつき一回ぽっきりで、十日で一割の利息つけますよ」
「すわナチュラルに高利貸し。じゃなくって、ボクちゃんの知らねえ金の使い道を教えてやるよ。今度、俺たちが箱庭まで連れてってやる。でもって、それだけじゃない勉強させてやる。それは、そんな手に収まっちまうインク染みた紙束なんかより、ずば抜けて最高の代物だ」
「最高って―――そもそも、それが最高かどうか、おじさんたちに勉強の質なんてものが分かるんですか? 碌に字も読めないのに」
「分かる」
言い切られた。言葉の文面そのものよりも、語尾が履いた強さに、やや息を呑む。
その隙に、割って入って来たニィヤに、場を仲裁された。分かりやすく両手をかざして中立を示しながら、生来ちんくしゃな顔どころか声色まで へらへらさせている。
「まあまあ。頭でっかちは、これだからいけねえ。とにかく、行ってみようや。な? 百聞は一見に如かずってんだろ? こういうの」
「そうですよ。それで合ってます。僕が教えたとおりに使ってくれて、どーもありがとうございました」
そして後日。この甲論乙駁は、ふたりに同伴した四日間に渡る買春行脚にてシゾーが なし崩しに童貞を破られるというかたちで終結した。破られた。それはもう、追剥ぎにしたって、しこたま懇切丁寧に―――可愛いものを可愛がる嬲り込みの執拗さと無残さにかけて女と猫の右に出るものはない―――尻の毛まで抜かれて鼻血も出なくなるほど追われて剥がれて引ん剥かれて身ぐるみ剥がされた。自分が幼虫だったことは知っていたが、蛹になっていた自覚もなかったのに、おせっかいな蝶々連中があれよあれよと脱皮を手伝ったとも言える。成虫になるのはいいことだ、空を自由に舞いながら花の蜜を吸いに行けると、葉っぱの上で日向ぼっこしながら暢気に尺を取っていた尺取り虫の夢に すやすやお寝んねしていた蛹の背中を、無遠慮に突き破やぶった。致命傷である。命まで到らなかっただけの深手だ。そこから生きながらえてしまった。要は、運があった。幸運なのか、不運なのか、悪運なのか……まあ一枚看板を引っ繰り返しての言葉遊びはさて置くにして、シゾーとて唆かされるまま なし崩しにしたなりのことなので疑問は無い。納得に呑まれて声もなくした。あまりに唐突過ぎたものだから、ちょちょ切れる涙さえなくしていた。それでも、なくしてしまったことに、泣いていたことは覚えている。
どうして覚えているのかと言えば、帰宅した夜に、家族に泣かされたからだ。
それは、<彼に凝立する聖杯>の旗司誓となってから、六年と二日目。実はちょうど、――― 十三歳の、誕生日。我知らず迎えた、それでも誕生日。
夜だ。夜だった。ちょっとした小旅行から帰った三人の手土産を肴に、大食堂にて酒宴が続いている。雑多な会話と食器がかち合う音に、混み合う喧噪と酒の芳香、蒸した汗のくさみ。ジンジルデッデの後継者としてシザジアフが頭領となり、旗司誓稼業は軌道に乗り始め、人員も増えていた。思い返してみれば、武装強盗旅団―――食い漁っては村から村へ渡る蝗の群れのような賊党であるが、戒域綱領成立後ここまでの大規模勢力は姿を消した―――の中でも名だたるビーブ・ビーンブ・ビーブルグ一家を、神不知の崖ごと破った頃である。快進撃を確立した余韻に加え、その祝杯で使い切れていなかった酒もあったのだろう。ごったがえする宴会は、これ以上なく盛況だった。普段はきっちりと上下関係を守っているシザジアフとザーニーイが、肩を並べて弓を抱き、一弦詩吟を披露するまでに。
「 ―――ひとめで はじまり
―――ふたりは こいした
―――みよ くび めでなん
―――しし いずこ
―――ふれなずみて いつ
―――ろく まなこ
―――ななどの わかれば
―――やつ こえん
―――ここのせ ともに いきる ため
―――と お の し さ え も い と う ま い―――
――― ――― 」
それは知っている。アーギルシャイアの恋歌。なのに、違う歌のように感じる。違うことを歌っているように聞こえたし、まだ聞き終わっていない気がしていた。それはおかしい。どう考えても狂っている。心から、そう思う。ひとり、こんな みじめな気分になるくらいなら、もっと自分も酔っておくんだった―――
「あーあ。シッズァのちびすけ、こりゃぐでんぐでんに呑まれてんぞ」
「俺たちが歌ってた間に、喇叭飲みでもしたのか。聞こえるか? オイ、立てっか?」
「……なあザーニーイ。じっちゃんたちと出掛けて帰ってきてから、こいつ様子がおかしくないか?」
「変な具合に ぼーっとするなと感じてはいたんですけど。また気に掛けます。おいシゾー、おい! あんま心配させんなっての。お前だって、こういうの嫌いだろ。おい! ちび! タレ目! クソガキ! じゃりんこ! 泣き虫! 泣いてる虫けら!」
「泣き虫よりカドが立つだろ。最後の」
深酒のせいで痛みは感じなかったが、がんがん肩口に叩きつけてくる手に揺さぶられることは不快だった。机上に突っ伏して横に向けていた顔から片目だけ開けて見やると、溶け出た油脂のように濃淡を残して混沌めく世界で、やはり半分溶解したシザジアフとザーニーイが、銜え煙草でため息をついている。その半開きの口の中を知っていた。赤黒い―――あの日の空……
「駄目だな、こりゃあ」
「すみませんシザジアフさん。変だなって勘付いていたのに、目を離した俺が悪いんです。責任もって寝床まで運んで、介抱します」
「そうだな。頼めるか」
「もちろんです。こいつの仕事は俺がしますから、明日丸一日、寝かしてやってください」
「ああ。無理させるな」
「ありがとうございます。そんじゃ、連れてくんで。背に二十重ある祝福を」
「よろしくな。背に二十重ある祝福を」
途端だった。すげ替わる世界を見たのは。
まずは視界。ぐにゃりと撓んで回り、床を見た。そして体感。卓上から垂れていた腕が上げられ、下げられた頃には、のしかかっていた胸のテーブルと尻に敷いていた椅子の感触がない。ただし入れ違いに、温かな しなやかな硬さと―――やわらかさ。顎の下から股の下まで、前面に。
しゃがみ込んでいた石畳から、シゾーをおんぶして立ち上がりつつ、ザーニーイが憎まれ口をくれてくる。まだ不慣れな紙巻き煙草を口の端にしているため、もごもごと。
「うあ。重てえ。いつの間にだ? この野郎」
「肉付きが悪い代わりに、骨が太いんだろう。折ったこともないし。手足のサイズだってでかいから、これからきっと伸びるだろうなあ。こいつ」
「シゾー。聞いてたか? てめえ。むかつくから、俺よりでかくなるんじゃねーぞ。約束したからな。返事は?」
そこで ゆさ、と軽くジャンプして揺すられるが、シゾーはザーニーイの襟元に涎を垂らすので精一杯の始末だった。不始末なれど、ザーニーイはそれを怒らない―――それが意趣返しではないと知っている。しかも、ザーニーイは叱らない―――ひよっこに酒の手ほどきをしていなかったのは自分だ。内心で、今度からこういった場も勉強させてやらなければと、居丈高さながらの叱咤を、不甲斐ない己にくれている。
えっちらおっちら退席する途中から、囃し立てるでもないわめき声が、縦飛び横飛びにやってきた。
「兄ちゃん気取るなら、むかつくってだけで有望株のアタマ押さえんじゃねーよ。リーチあるだけ優位だろーが」
「ちげーねえや。がははは!」
「なあおい誰か、俺の靴下知らね?」
「靴下の前に探すモンあるだろ。お前」
と。
「るっせーやい、じっちゃんども。そっちこそ野次飛ばすくらいなら、歌でも歌ってやがれ。そのダミ声なら、お月さんだって落っこちっぞ。あとテニグモ、おめーの靴下は下穿きもろともリプツェッカの座布団にされてるかんな! すっぽんぽんで腹イタ起こしたくなけりゃあ寝る前に取り返せ―――便所でも裸踊りに きりきり舞いさせられたかねぇだろ! シモから大小どころか大腸小腸もらすぞコラ!」
ザーニーイの声だけは、間際からなのでよく聞こえた。そして更に、縦横無尽の沙汰中から、やりとりが聞こえてくる……
「ちげーねえや。おーい、代わりに、坊ちゃん歌えー。次いけー」
「坊ちゃんのボクちゃんが潰れたせいで兄ちゃんまで抜けちまう責任だー。国向こうの都々逸なり民謡なり浪曲なり歌えー」
「不如意なりて御勘弁を頂戴つかまつりたく候」
ぴしゃりと拒否したつもりなのだろうが。その物言いに、言ってきたふたり以外の旗司誓たちまでもが大爆笑する。
「ぎゃーははははははは!」
「ふにょい! フニョイて!!」
「ふにょーいフニョイふーにょーうぃー!」
「だははははは! 顎と腹が痛い痛い痛い!! 労災!! 労災認定せぇや上司ぃやぁはははははははは!!」
予期せぬ火種として祭り上げられた本人―――この時はゼラ・イェスカザ副頭領―――だけが、背筋を突っ張らせながら苛々と苦虫を噛み潰していた。それを、隣席に戻ったシザジアフが、呆れ果てた顔をして見守っている。
「まったく。訛りきった辺境に狎れて、ろくにものを知らない連中ときたら、これだから。清く正しく喋っている僕が、どうして笑われる方なんですか? しかも、あの半人前と十把一絡げにされてまで」
「腹立てるくらいなら、お前が一人称変えろよ。お前が自分のことを僕ボクですマス言ってるから、息子まで僕ボクですマス言って、坊ちゃんだの僕ちゃんだのって纏められるんだろ」
「なぜですか? 『僕』は、差し引いた一人称として妥当な言い回しでしょう。間違っているのは あちらです。ならば訂正されるべきなのも あちらだ」
「……お前そう言えば、前にも『あなた』って敬称のつもりで『貴様』って呼び掛けて喧嘩売ってたよな」
「売っていません。勝手に買い上げにかかってこられやがったのが、あっちでしただけです」
「由緒正しい嫡流祖語句を根っこに置き換えて話してんだから、由緒だきゃ正しいんだろうけどなー。明晰だから高飛車なのはしょうがないにせよ、折り合うことくらい覚えろよ。出来ないってんなら、ガキと どっこいどっこいだろ。あと勘違いしてるっぽいから言っとくけど、俺らが言う『お前』って、『御前』って敬称じゃねえぞ」
「マジでか」
「マジでだ。あ。それの使い方は覚えたのな」
「いつから?」
「とうの昔から。『貴様』と同じで、使い古され切って、けなし言葉だ」
「しからば、僕ではなく、わたしにします。今からわたし」
「好きにせー」
そこで、自分たちは廊下に出たらしい。壁に遮られて、物音が格段に遠ざかる。
目蓋の薄皮から透けていた灯火輪の刺激もなくして、残されたのはシゾーを背負ったザーニーイと、ザーニーイに背負われたシゾーだけ。ゆさ、ゆさ、と一歩ずつ進む廊下。二歩目を踏み、三歩目を蹴り離す頃には、ザーニーイの背面とシゾーの腹面は温まっていた。心地よい温もり。それを知っているのはザーニーイもシゾーも同じだが、ザーニーイはシゾーの世界が すげ替わってしまっていたことを知らずにいた。
だから、常ながらの野卑た言い方で、嘆声を遂げてしまう。それをシゾーは聞いてしまった。
「あーあ。あの豆粒じゃりんこだったお前が、ついに酒盛り仲間かよ。デデ爺に、サシ呑みさせてやりたかったな。まあでも、あの世でイェンラズハと乳繰り合ってちゃ、こっちにゃ見向きもしねえか」
乳を繰る。
その意味があどけないものではないことを、シゾーはもう知っている。ザーニーイは、それを知らずにいた。だから、邪気なく残りの分まで、無邪気にもせりふを抜かしてくれる。
「むしろそこらへんから、ほくそ笑んで見てたりしてな。デデ爺だし」
シゾーはもう知っていた。ザーニーイが女であることを覗き穴から見ていた。どうでもよかったように思えていた違いが、意味を持ち、役に立ち、意味も知らず役立てることを仕込まれた身体の芯から―――白熱する快と悦を、快と悦だけが先走る罪悪感ごと覚えていた。のに。
ザーニーイに触れて、人肌ではなく、女の体温だと感じる。
ザーニーイを嗅いで、男臭さでなく、女の匂いを味わう。
ザーニーイの声を聴いて、生の歌声ではなく、生々しい嬌声を思い出す。
甘噛みし合って満足していた頃には戻れない。知恵の果実に噛みついてしまったのと同じように、中毒になることを知ってしまったのだから、いつかは噛み殺してしまうかも知れないけれど今は甘噛みには戻れない。噛みつきたい。シゾーは自分が噛みつけることを知っている。
ザーニーイが女であることを知っている。ザーニーイを置いてきぼりに、シゾーは大人になり、もう男になってしまった。
「―――うぁ……」
身を捩る。身に覚えのある前兆から逃げ出そうとした。やけ酒のせいで堰が切れていたのもあるが、なにより不慣れだったのだからしょうがない―――我慢の仕方も、やり過ごすコツすら、一切身に着いていなかった。そもそも悔踏区域外輪で慢性的な栄養不良に侵されていた手前、それまで精通らしい精通どころか夢精すら満足にしたことがなかったのだ。だからこそ……忍耐は利かない。
しかも身動きして逃げ出せるどころか、ひねった弾みにこすりつけてしまった刺激から、なお誘惑が強まる。愕然と、シゾーは打ち震えた。心の底からおびえて、もう治ったはずの失禁すら催しそうになりながら、今となっては尿意を上回る生理的なスパークが訪れる恐怖に堪らなくなった。はったりもきかせられない。ザーニーイの背の上で、実際がくがくと震え出しながら、歯の根の合わぬ悲鳴を引き攣らせる。
「嘘だろ……こんなの。今になって。今。なんで―――?」
「シゾー? どうした? 吐くのか?」
「降ろして……降ろせよ―――気色わりぃ……!」
「きしょ?」
「もうやめろよ……降ろせっつってんだろ! 気色わりぃんだよ、お前! べたべたと俺にばっかり―――!」
「は?」
とまあ斯く斯様にも、いつもの事ながら、兄貴分は大上段に構えっぱなしだった。間が悪いのか間が良いのか、丁度この頃から、ザーニーイは剣帯を替えていた。紙巻き煙草に手を出せるほど小遣いに余裕が出たので、剣を新調するついでにいずれ鉛鋲や手斧もと誂えたばかりの、肉厚の新品だった。だったので、腰回りの多少の違和感に慣れ切っていた。それが明らかに奇妙だったところで、今はシゾーの容態に気を取られていたし、おぶっている以上はへんてこな感触を覚えたところで相手の武装のひとつとでも判断しただろう。
だから追い詰められたシゾーが、当人としては死に物狂いで暴れ出したところで、ザーニーイは気にも留めなかった。ただただ泥酔した舎弟に心を砕いて、引っ掻かれてもいなし、仰け反られてもバランスを取り、泣きだしても慰めの声を絶やさなかった。
「そりゃお前に俺が よそよそしくすっこたぁねーだろ。ここんとこ貶し合いすら ろくすっぽしてねぇのに。落ち着け。どーしたよ? 俺なら大丈夫だ。ここにいるぞ」
「くそ! 嫌だ……やだぁ、こんな―――!」
そして、理解する瞬間が訪れる。自分はこのまま間もなく惨敗する。不可抗力というものだ。導火線があり、火が点くことも知ったけれど、点けてから揉み消す仕方なんて知らない。そのことを知っていた。だから……やめられないし、とめられない。絶望する。声もまた、―――すげ替わる。
「ごめん―――なさい」
「へ?」
「ごめんなさい―――ごめんなさい、ごめんなさいゴメンナサイごめんなさい! 謝るから、ザーニーイ、俺、もうしないから……お願いだから、もう―――ゆるして」
刹那。
「がはっ! うえ―――あ、……」
シゾーは吐いた。ひとまずは、口から。
もうその頃には、要塞の中庭の出入り口わきに出ていた。椅子に使っていた頃を知っているのに、あの頃には戻れなくなったシゾーは、ただただブロックのわきの地面に降ろされた。そのまま地べたに丸まって、必死に後ろ暗さと余熱の火照りを耐え忍ぼうとしたのに、またしてもザーニーイがシゾーに触れてくる。ザーニーイは、酔っ払いの介護には慣れていた。だから弟分にも、それをした。彼を地面から腰抱きにして抱え、四つん這いの姿勢を取らせると、その上に覆い被さる。
犬が交尾する姿勢だ。人も交尾する姿勢だ。最低の連想だった。だとしてもシゾーは、それをもう知ってしまっていた。
知らないザーニーイだけが、いつも通りだった。ここにいる幼馴染みが、幼馴染みから すげ替わっているなんて、気付いてすらいない。
「ひと口っきりか。音ばっかり派手でブツが出ねえな。おい。ちゃんと胃袋でんぐり返りしてっか? ああ……まずもって、酒の吐き方が分からねえか」
「あ……あ……」
「指入れるぞ。噛むなよ。泣いていいから……なんでもかんでも、あとからキレイに出来っから。とにかく今は、辛いんだから、思いっ切り―――出しとけ」
なまあたたかく質量がある吐瀉物に胸から腕からまみれるうちに、遺精したことも分からなくなっていく。
汚れていく。きっとこれからだって汚れていく。知っている―――知っているんだ。拭けるし、洗えるし、流せるとしても、汚なく穢れて汚れていく。もともと子どもなんて大人の排泄物なのに。そうだと知っている……のに。
星は流れない。ジンジルデッデは死んだ。シゾーの祈りは届かなかった。ザーニーイはシゾーのことばかり、なにも知らずにいる。
うららかな午後。よくあるように、シゾーは空を見上げて自問していた。空には雲のように解答は浮かんでいないが、奇妙奇天烈なもので、眺めるうちに頭の中にそれを浮かばせてくれることがある。それはここに来て三年目ほどには手中にしていた既知だったが、六年目には習慣化していたので、雨天の時以外は外に出て読書するようになっていた。
野外のどこに座卓を構えたところで構わないのだろうが、なにもないグラウンドの中央に座り込むのも変だし、荷揚げ縄の近くにいて揚げ荷に落ちてこられても堪ったものではない。ついでに一杯ひっかけて上機嫌となった旗司誓が通りすがりに駄賃をくれることがある―――さぼってないで働けと鉄槌を食らうこともあるが小銭の魅力には匹敵しない―――ため、シゾーは要塞の中庭の通行口わきに居着くことが多かった。運んできた元噴水のブロックを椅子代わりにしているのだが、最近は身長の伸びが勝って低さが厭わしく感じられるようになってきていた。とは言え二個目を縦に積んだところで、帯に短くタスキに長いのは分かり切っていたので、どうしようもなく石壁に背中を凭れさせながら椅子から半分膝を立てつつ、膝の皿の上に書籍を広げていた。
そこに現れたのは、ニィヤとゼンケバッハだった。いつものように酔い覚ましがてらの足延ばしか、ただ通りがかったなりの偶然か……分かりはしないが。ともあれこのふたりは、子どもが勉強することに好意的な派閥だった繋がりで友情が芽生えたらしく、よく酒の席では揃って話をねだりに来るので、シゾーからしてみればお互いに親近感を培いやすい部類の人間である―――冷やかしがてら寄ってこられても、つんけんと突っぱねる嫌悪感など湧かない程度には。
「お。どーした? ボクちゃんが悩ましげに空ぁ見てんぞ」
「なに読んでんだ? 教えてくれよ。俺ぁ字なんて、自分の名前でやっとかっとなんだ―――て」
決まり文句と一緒に本を覗き込んできたニィヤが、挿絵を見て露骨に不服そうにした。不服ついでとばかりに、そこに描かれている素裸の女の乳房をつつく。
「なんだ? また色気のねえ春画本だな。男も女も、死んだ蜥蜴みてーにグダッと並んでるだけじゃねーか。文字でどう書かれてるにしたって、絵だってもっと性根入れてハラ噛み合ってくれなきゃあ、どっちらけの総スカンってもんだぜ」
「医学書ですよ、これ。しゅんがぼんって本じゃないです。そういったのだと、蜥蜴なら腹部に噛み付くんですか?」
と。
「……あー」
「ああー」
「どうしました?」
なにやら瓜ふたつの気配で頭を抱え出した旗司誓たちに、シゾーは声を上げた。急に裏がある態度を決め込まれては、どうしたって気がかりだった。
かなりの沈黙を挟んで、だのに二人の間では頻回さながらチラリラちらりらと目配せを交わし合いつつ―――お前が言えよ―――お前こそ言えよ―――、ようやっと重い口を開く。まずは、古顔であるニィヤから。
「ボクちゃん。こういうのに興味湧くお年頃になった?」
「お年頃? 齢なら多分、十三とかそれくらいだけど」
「なんちゅーかさ。あれよ。おヒゲ―――は、まだ剃る程じゃねえっぽいけんど。おマタの方はどう? 男になった?」
おっついてきたせりふに、なおの事分からなくなる。男になった? なるも何も、性別など生まれた時から割り振られている。シゾーは男だ。だが、子どもの時からそうだったからこそ、今では分からなくなっていた。だからこそ、こうしてとっくの昔に読み古してしまっていた本まで持ち出したのだが。
この一ページだって読み解けないはずのふたりが、雁首を揃えて知ったような顔をしている。それが分かって、シゾーは引き返せなくなった。もの知らずだと軽視されたのだ。自分は。こんな文盲たちから。男になった? ―――と。
「なんだってんですか? 毛? そんなもんでいいなら、シモの方が口まわりより そこそこ生えてますけど。男になるってのが、まだほかのことだってんですか?」
その彼らと言えば、シゾーの反応を見た途端、こうだ。
「なってねーなこりゃ。顔に書いてあらぁ」
「なんちゅーか。字ぃ無理な俺らにそれが分かっちまうってのも、なんだかなぁ」
「さもありなん、だろ。こーんな砂場まで流れてくるイカレ春売り、こっちの方から願い下げだっつの」
「顔と言やあ。こーんな魔訶めんこい顔してんのに、出入りのキャラバンや何某やらから拐されんかったもんか?」
「そこんとこぁアレよ。ボクちゃんだけ、まぁだ子ども認定だからなあ……しっかも、いっつも手綱引いてくれてた兄ちゃんだけドサまわりに行かされるようになったとくりゃ、取り残されても自然だろーよ。ぽつんと煮炊きに針仕事、家事に掃除の家内役ときた。家の内から出てみたところで―――このとおり、中庭どまりの本の虫だぜ?」
「坊ちゃんも、ボクちゃんのこたぁ、基本うっちゃらかしにしてるしなあ……そもそも論、フラゾアイン混じりの鬼っ子が養い親ってんじゃあ、頼れたもんかい。連中が真面にオスメスやってんのかなんぞ、知りたくもねえが。おっとろしい」
「くわばらクワバラ。にしても……瓢箪から駒なんざ出て来るもんなんだなあ。俺ぁてっきり兄ちゃんが、そこらへんも肩で風切っての大風吹かしてるとばかり」
「いやいや。あいつぁ色ボケも箱庭もマンザラ嫌ってっから。ありゃあ、見られる顔してるせいで、あっちゃこっちゃでなんやかんやと絡まれっぱなしになってきてるツケだろ。満更でもないんなら、これ幸いとちょくちょく調子に乗る尻軽さがありゃ楽しめるものを、そこはマンザラだからなあ」
「しゃーねーわな。あっちはあっちで、あのとおりシザジアフの親御が生真面目一徹だ。浮いた噂に限った話、鳴かず飛ばずのハトぽっぽ。まあ、手堅いなりに巧いことやってんのさ。そこんとこぁ親子だ」
「じゃ、決定だな。水も滴りそうな面構え同士、外仕事に回されるようになった途端に、ボクちゃんまで兄ちゃんの二の舞になっちゃあ気の毒だ」
「おう。五十歩百歩になる前に。五十歩目からの踏み出し方を教えとかにゃあ、兄弟分が揃いも揃って見当違いになっちまわぁな。いけねぇいけねぇ」
長ったらしい作麼生・説破の落とし前を両者にて勝手につけた挙句、ゼンケバッハがこちらへ片手を出してきた。人差し指と親指で輪を作り、残りの指を伸ばしてひらつかせる。何度か折って生兵法で接いだ小指が特に歪んでいたが、彼はその不格好さには拘らなかった。そのまま、提案してくる。
「ボクちゃん。有り金どんだけある?」
「金? まあ貸してもいいですけど、ひとりにつき一回ぽっきりで、十日で一割の利息つけますよ」
「すわナチュラルに高利貸し。じゃなくって、ボクちゃんの知らねえ金の使い道を教えてやるよ。今度、俺たちが箱庭まで連れてってやる。でもって、それだけじゃない勉強させてやる。それは、そんな手に収まっちまうインク染みた紙束なんかより、ずば抜けて最高の代物だ」
「最高って―――そもそも、それが最高かどうか、おじさんたちに勉強の質なんてものが分かるんですか? 碌に字も読めないのに」
「分かる」
言い切られた。言葉の文面そのものよりも、語尾が履いた強さに、やや息を呑む。
その隙に、割って入って来たニィヤに、場を仲裁された。分かりやすく両手をかざして中立を示しながら、生来ちんくしゃな顔どころか声色まで へらへらさせている。
「まあまあ。頭でっかちは、これだからいけねえ。とにかく、行ってみようや。な? 百聞は一見に如かずってんだろ? こういうの」
「そうですよ。それで合ってます。僕が教えたとおりに使ってくれて、どーもありがとうございました」
そして後日。この甲論乙駁は、ふたりに同伴した四日間に渡る買春行脚にてシゾーが なし崩しに童貞を破られるというかたちで終結した。破られた。それはもう、追剥ぎにしたって、しこたま懇切丁寧に―――可愛いものを可愛がる嬲り込みの執拗さと無残さにかけて女と猫の右に出るものはない―――尻の毛まで抜かれて鼻血も出なくなるほど追われて剥がれて引ん剥かれて身ぐるみ剥がされた。自分が幼虫だったことは知っていたが、蛹になっていた自覚もなかったのに、おせっかいな蝶々連中があれよあれよと脱皮を手伝ったとも言える。成虫になるのはいいことだ、空を自由に舞いながら花の蜜を吸いに行けると、葉っぱの上で日向ぼっこしながら暢気に尺を取っていた尺取り虫の夢に すやすやお寝んねしていた蛹の背中を、無遠慮に突き破やぶった。致命傷である。命まで到らなかっただけの深手だ。そこから生きながらえてしまった。要は、運があった。幸運なのか、不運なのか、悪運なのか……まあ一枚看板を引っ繰り返しての言葉遊びはさて置くにして、シゾーとて唆かされるまま なし崩しにしたなりのことなので疑問は無い。納得に呑まれて声もなくした。あまりに唐突過ぎたものだから、ちょちょ切れる涙さえなくしていた。それでも、なくしてしまったことに、泣いていたことは覚えている。
どうして覚えているのかと言えば、帰宅した夜に、家族に泣かされたからだ。
それは、<彼に凝立する聖杯>の旗司誓となってから、六年と二日目。実はちょうど、――― 十三歳の、誕生日。我知らず迎えた、それでも誕生日。
夜だ。夜だった。ちょっとした小旅行から帰った三人の手土産を肴に、大食堂にて酒宴が続いている。雑多な会話と食器がかち合う音に、混み合う喧噪と酒の芳香、蒸した汗のくさみ。ジンジルデッデの後継者としてシザジアフが頭領となり、旗司誓稼業は軌道に乗り始め、人員も増えていた。思い返してみれば、武装強盗旅団―――食い漁っては村から村へ渡る蝗の群れのような賊党であるが、戒域綱領成立後ここまでの大規模勢力は姿を消した―――の中でも名だたるビーブ・ビーンブ・ビーブルグ一家を、神不知の崖ごと破った頃である。快進撃を確立した余韻に加え、その祝杯で使い切れていなかった酒もあったのだろう。ごったがえする宴会は、これ以上なく盛況だった。普段はきっちりと上下関係を守っているシザジアフとザーニーイが、肩を並べて弓を抱き、一弦詩吟を披露するまでに。
「 ―――ひとめで はじまり
―――ふたりは こいした
―――みよ くび めでなん
―――しし いずこ
―――ふれなずみて いつ
―――ろく まなこ
―――ななどの わかれば
―――やつ こえん
―――ここのせ ともに いきる ため
―――と お の し さ え も い と う ま い―――
――― ――― 」
それは知っている。アーギルシャイアの恋歌。なのに、違う歌のように感じる。違うことを歌っているように聞こえたし、まだ聞き終わっていない気がしていた。それはおかしい。どう考えても狂っている。心から、そう思う。ひとり、こんな みじめな気分になるくらいなら、もっと自分も酔っておくんだった―――
「あーあ。シッズァのちびすけ、こりゃぐでんぐでんに呑まれてんぞ」
「俺たちが歌ってた間に、喇叭飲みでもしたのか。聞こえるか? オイ、立てっか?」
「……なあザーニーイ。じっちゃんたちと出掛けて帰ってきてから、こいつ様子がおかしくないか?」
「変な具合に ぼーっとするなと感じてはいたんですけど。また気に掛けます。おいシゾー、おい! あんま心配させんなっての。お前だって、こういうの嫌いだろ。おい! ちび! タレ目! クソガキ! じゃりんこ! 泣き虫! 泣いてる虫けら!」
「泣き虫よりカドが立つだろ。最後の」
深酒のせいで痛みは感じなかったが、がんがん肩口に叩きつけてくる手に揺さぶられることは不快だった。机上に突っ伏して横に向けていた顔から片目だけ開けて見やると、溶け出た油脂のように濃淡を残して混沌めく世界で、やはり半分溶解したシザジアフとザーニーイが、銜え煙草でため息をついている。その半開きの口の中を知っていた。赤黒い―――あの日の空……
「駄目だな、こりゃあ」
「すみませんシザジアフさん。変だなって勘付いていたのに、目を離した俺が悪いんです。責任もって寝床まで運んで、介抱します」
「そうだな。頼めるか」
「もちろんです。こいつの仕事は俺がしますから、明日丸一日、寝かしてやってください」
「ああ。無理させるな」
「ありがとうございます。そんじゃ、連れてくんで。背に二十重ある祝福を」
「よろしくな。背に二十重ある祝福を」
途端だった。すげ替わる世界を見たのは。
まずは視界。ぐにゃりと撓んで回り、床を見た。そして体感。卓上から垂れていた腕が上げられ、下げられた頃には、のしかかっていた胸のテーブルと尻に敷いていた椅子の感触がない。ただし入れ違いに、温かな しなやかな硬さと―――やわらかさ。顎の下から股の下まで、前面に。
しゃがみ込んでいた石畳から、シゾーをおんぶして立ち上がりつつ、ザーニーイが憎まれ口をくれてくる。まだ不慣れな紙巻き煙草を口の端にしているため、もごもごと。
「うあ。重てえ。いつの間にだ? この野郎」
「肉付きが悪い代わりに、骨が太いんだろう。折ったこともないし。手足のサイズだってでかいから、これからきっと伸びるだろうなあ。こいつ」
「シゾー。聞いてたか? てめえ。むかつくから、俺よりでかくなるんじゃねーぞ。約束したからな。返事は?」
そこで ゆさ、と軽くジャンプして揺すられるが、シゾーはザーニーイの襟元に涎を垂らすので精一杯の始末だった。不始末なれど、ザーニーイはそれを怒らない―――それが意趣返しではないと知っている。しかも、ザーニーイは叱らない―――ひよっこに酒の手ほどきをしていなかったのは自分だ。内心で、今度からこういった場も勉強させてやらなければと、居丈高さながらの叱咤を、不甲斐ない己にくれている。
えっちらおっちら退席する途中から、囃し立てるでもないわめき声が、縦飛び横飛びにやってきた。
「兄ちゃん気取るなら、むかつくってだけで有望株のアタマ押さえんじゃねーよ。リーチあるだけ優位だろーが」
「ちげーねえや。がははは!」
「なあおい誰か、俺の靴下知らね?」
「靴下の前に探すモンあるだろ。お前」
と。
「るっせーやい、じっちゃんども。そっちこそ野次飛ばすくらいなら、歌でも歌ってやがれ。そのダミ声なら、お月さんだって落っこちっぞ。あとテニグモ、おめーの靴下は下穿きもろともリプツェッカの座布団にされてるかんな! すっぽんぽんで腹イタ起こしたくなけりゃあ寝る前に取り返せ―――便所でも裸踊りに きりきり舞いさせられたかねぇだろ! シモから大小どころか大腸小腸もらすぞコラ!」
ザーニーイの声だけは、間際からなのでよく聞こえた。そして更に、縦横無尽の沙汰中から、やりとりが聞こえてくる……
「ちげーねえや。おーい、代わりに、坊ちゃん歌えー。次いけー」
「坊ちゃんのボクちゃんが潰れたせいで兄ちゃんまで抜けちまう責任だー。国向こうの都々逸なり民謡なり浪曲なり歌えー」
「不如意なりて御勘弁を頂戴つかまつりたく候」
ぴしゃりと拒否したつもりなのだろうが。その物言いに、言ってきたふたり以外の旗司誓たちまでもが大爆笑する。
「ぎゃーははははははは!」
「ふにょい! フニョイて!!」
「ふにょーいフニョイふーにょーうぃー!」
「だははははは! 顎と腹が痛い痛い痛い!! 労災!! 労災認定せぇや上司ぃやぁはははははははは!!」
予期せぬ火種として祭り上げられた本人―――この時はゼラ・イェスカザ副頭領―――だけが、背筋を突っ張らせながら苛々と苦虫を噛み潰していた。それを、隣席に戻ったシザジアフが、呆れ果てた顔をして見守っている。
「まったく。訛りきった辺境に狎れて、ろくにものを知らない連中ときたら、これだから。清く正しく喋っている僕が、どうして笑われる方なんですか? しかも、あの半人前と十把一絡げにされてまで」
「腹立てるくらいなら、お前が一人称変えろよ。お前が自分のことを僕ボクですマス言ってるから、息子まで僕ボクですマス言って、坊ちゃんだの僕ちゃんだのって纏められるんだろ」
「なぜですか? 『僕』は、差し引いた一人称として妥当な言い回しでしょう。間違っているのは あちらです。ならば訂正されるべきなのも あちらだ」
「……お前そう言えば、前にも『あなた』って敬称のつもりで『貴様』って呼び掛けて喧嘩売ってたよな」
「売っていません。勝手に買い上げにかかってこられやがったのが、あっちでしただけです」
「由緒正しい嫡流祖語句を根っこに置き換えて話してんだから、由緒だきゃ正しいんだろうけどなー。明晰だから高飛車なのはしょうがないにせよ、折り合うことくらい覚えろよ。出来ないってんなら、ガキと どっこいどっこいだろ。あと勘違いしてるっぽいから言っとくけど、俺らが言う『お前』って、『御前』って敬称じゃねえぞ」
「マジでか」
「マジでだ。あ。それの使い方は覚えたのな」
「いつから?」
「とうの昔から。『貴様』と同じで、使い古され切って、けなし言葉だ」
「しからば、僕ではなく、わたしにします。今からわたし」
「好きにせー」
そこで、自分たちは廊下に出たらしい。壁に遮られて、物音が格段に遠ざかる。
目蓋の薄皮から透けていた灯火輪の刺激もなくして、残されたのはシゾーを背負ったザーニーイと、ザーニーイに背負われたシゾーだけ。ゆさ、ゆさ、と一歩ずつ進む廊下。二歩目を踏み、三歩目を蹴り離す頃には、ザーニーイの背面とシゾーの腹面は温まっていた。心地よい温もり。それを知っているのはザーニーイもシゾーも同じだが、ザーニーイはシゾーの世界が すげ替わってしまっていたことを知らずにいた。
だから、常ながらの野卑た言い方で、嘆声を遂げてしまう。それをシゾーは聞いてしまった。
「あーあ。あの豆粒じゃりんこだったお前が、ついに酒盛り仲間かよ。デデ爺に、サシ呑みさせてやりたかったな。まあでも、あの世でイェンラズハと乳繰り合ってちゃ、こっちにゃ見向きもしねえか」
乳を繰る。
その意味があどけないものではないことを、シゾーはもう知っている。ザーニーイは、それを知らずにいた。だから、邪気なく残りの分まで、無邪気にもせりふを抜かしてくれる。
「むしろそこらへんから、ほくそ笑んで見てたりしてな。デデ爺だし」
シゾーはもう知っていた。ザーニーイが女であることを覗き穴から見ていた。どうでもよかったように思えていた違いが、意味を持ち、役に立ち、意味も知らず役立てることを仕込まれた身体の芯から―――白熱する快と悦を、快と悦だけが先走る罪悪感ごと覚えていた。のに。
ザーニーイに触れて、人肌ではなく、女の体温だと感じる。
ザーニーイを嗅いで、男臭さでなく、女の匂いを味わう。
ザーニーイの声を聴いて、生の歌声ではなく、生々しい嬌声を思い出す。
甘噛みし合って満足していた頃には戻れない。知恵の果実に噛みついてしまったのと同じように、中毒になることを知ってしまったのだから、いつかは噛み殺してしまうかも知れないけれど今は甘噛みには戻れない。噛みつきたい。シゾーは自分が噛みつけることを知っている。
ザーニーイが女であることを知っている。ザーニーイを置いてきぼりに、シゾーは大人になり、もう男になってしまった。
「―――うぁ……」
身を捩る。身に覚えのある前兆から逃げ出そうとした。やけ酒のせいで堰が切れていたのもあるが、なにより不慣れだったのだからしょうがない―――我慢の仕方も、やり過ごすコツすら、一切身に着いていなかった。そもそも悔踏区域外輪で慢性的な栄養不良に侵されていた手前、それまで精通らしい精通どころか夢精すら満足にしたことがなかったのだ。だからこそ……忍耐は利かない。
しかも身動きして逃げ出せるどころか、ひねった弾みにこすりつけてしまった刺激から、なお誘惑が強まる。愕然と、シゾーは打ち震えた。心の底からおびえて、もう治ったはずの失禁すら催しそうになりながら、今となっては尿意を上回る生理的なスパークが訪れる恐怖に堪らなくなった。はったりもきかせられない。ザーニーイの背の上で、実際がくがくと震え出しながら、歯の根の合わぬ悲鳴を引き攣らせる。
「嘘だろ……こんなの。今になって。今。なんで―――?」
「シゾー? どうした? 吐くのか?」
「降ろして……降ろせよ―――気色わりぃ……!」
「きしょ?」
「もうやめろよ……降ろせっつってんだろ! 気色わりぃんだよ、お前! べたべたと俺にばっかり―――!」
「は?」
とまあ斯く斯様にも、いつもの事ながら、兄貴分は大上段に構えっぱなしだった。間が悪いのか間が良いのか、丁度この頃から、ザーニーイは剣帯を替えていた。紙巻き煙草に手を出せるほど小遣いに余裕が出たので、剣を新調するついでにいずれ鉛鋲や手斧もと誂えたばかりの、肉厚の新品だった。だったので、腰回りの多少の違和感に慣れ切っていた。それが明らかに奇妙だったところで、今はシゾーの容態に気を取られていたし、おぶっている以上はへんてこな感触を覚えたところで相手の武装のひとつとでも判断しただろう。
だから追い詰められたシゾーが、当人としては死に物狂いで暴れ出したところで、ザーニーイは気にも留めなかった。ただただ泥酔した舎弟に心を砕いて、引っ掻かれてもいなし、仰け反られてもバランスを取り、泣きだしても慰めの声を絶やさなかった。
「そりゃお前に俺が よそよそしくすっこたぁねーだろ。ここんとこ貶し合いすら ろくすっぽしてねぇのに。落ち着け。どーしたよ? 俺なら大丈夫だ。ここにいるぞ」
「くそ! 嫌だ……やだぁ、こんな―――!」
そして、理解する瞬間が訪れる。自分はこのまま間もなく惨敗する。不可抗力というものだ。導火線があり、火が点くことも知ったけれど、点けてから揉み消す仕方なんて知らない。そのことを知っていた。だから……やめられないし、とめられない。絶望する。声もまた、―――すげ替わる。
「ごめん―――なさい」
「へ?」
「ごめんなさい―――ごめんなさい、ごめんなさいゴメンナサイごめんなさい! 謝るから、ザーニーイ、俺、もうしないから……お願いだから、もう―――ゆるして」
刹那。
「がはっ! うえ―――あ、……」
シゾーは吐いた。ひとまずは、口から。
もうその頃には、要塞の中庭の出入り口わきに出ていた。椅子に使っていた頃を知っているのに、あの頃には戻れなくなったシゾーは、ただただブロックのわきの地面に降ろされた。そのまま地べたに丸まって、必死に後ろ暗さと余熱の火照りを耐え忍ぼうとしたのに、またしてもザーニーイがシゾーに触れてくる。ザーニーイは、酔っ払いの介護には慣れていた。だから弟分にも、それをした。彼を地面から腰抱きにして抱え、四つん這いの姿勢を取らせると、その上に覆い被さる。
犬が交尾する姿勢だ。人も交尾する姿勢だ。最低の連想だった。だとしてもシゾーは、それをもう知ってしまっていた。
知らないザーニーイだけが、いつも通りだった。ここにいる幼馴染みが、幼馴染みから すげ替わっているなんて、気付いてすらいない。
「ひと口っきりか。音ばっかり派手でブツが出ねえな。おい。ちゃんと胃袋でんぐり返りしてっか? ああ……まずもって、酒の吐き方が分からねえか」
「あ……あ……」
「指入れるぞ。噛むなよ。泣いていいから……なんでもかんでも、あとからキレイに出来っから。とにかく今は、辛いんだから、思いっ切り―――出しとけ」
なまあたたかく質量がある吐瀉物に胸から腕からまみれるうちに、遺精したことも分からなくなっていく。
汚れていく。きっとこれからだって汚れていく。知っている―――知っているんだ。拭けるし、洗えるし、流せるとしても、汚なく穢れて汚れていく。もともと子どもなんて大人の排泄物なのに。そうだと知っている……のに。
星は流れない。ジンジルデッデは死んだ。シゾーの祈りは届かなかった。ザーニーイはシゾーのことばかり、なにも知らずにいる。
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